第三十二話 ロイの式神。
「我が奇魂の声に従い、彼方から此方へ!我が無霊に応え、生生世世の契りを!」
ロイは賀詞を発した。頭上には彼らが作った大方陣よりも大きい白渦が口を開けていた。ハクの時と同じく遠く彼方から何かが近づいて現れる。それは大方陣の外に落下した。三つ落ちた。一つはクウの家の屋根を貫いて落ちたので、クウは悲鳴を上げた。ロイは慌てて落下した式神の元に走り込む。ロイは式神を見て固まった。言葉も出ない。ハクも式神を見て固まった。
「何これ?あんまり可愛く無いね、ロイの式神。」
遅れてクウが覗き込む。クウも一瞬固まったが直ぐに状況を理解した。
「凄いじゃん!これ魂力核だよ!しかもこんなに大きいの見たこと無い!」
モルフ達は様々な術を使いこなして生活している。舞闘向きの術もあれば日常生活向けの術もある。舞闘者は舞闘術を覚え、一般人は常術を覚える。術は魂気と呼ばれる不思議な力を取り出し消費して効果を発揮する。術には向き不向きがあり、ほぼ使えないヒトもいる。そういったヒトでも術を行使したときと同じような効果を得る為の機械……魔動機……が存在していた。ヒトや物を遠くまで沢山運ぶ為の魔動車やクリーチャーを倒す時に使用される魂銃等、様々な魔動機があった。これら魔動機を動かす為のエネルギー源が魂力核だった。魂力核は筒状で胴体部がガラスのような物で出来ており、内部の様子が確認出来るようになっている。通常、大型の魔動車であっても高さ十センチメートル、直径二センチメートル程の魂力核があれば充分に動かす事が出来た。今、式神としてあらわれた魂力核は太い竹程の大きさがある。しかも三つ。これほどの魂力核があれば、何が出来るだろうか?何を動かせるだろうか?城が浮かぶのでは無いだろうか?街は飛ばせるだろうか?クウの技術者としての血が騒ぐ。
「本当!すっごいよ、これ!ねぇロイ?これ僕に預けてくれない?凄い魔動機作ったげるよ。」
勿論、ロイは了解した。今の外郭をここまで仕上げたのもクウなのだ。クウが見てくれるのであればとても心強い。よーし、じゃあ早速、設計図を作んなくっちゃと家に引っ込んで行こうとするクウをハクが止める。
「いやいや。次はクウの番なんだから!」




