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【アニメ化】転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す  作者: 十夜


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280 王太后との話し合い 2

私は腕についていた血をハンカチで拭き取ると、傷一つなくなった腕を王太后に見せた。

「どうぞ、傷を治しました」


私の隣では、プリシラが両手で頭を抱えて、その場にうずくまる。

「あああ、フィーアったら、また詠唱を省略しちゃったのね! そのやり方は普通じゃないと教えたはずなのに、どうして省略しちゃうのかしら」


それは、呪文を詠唱したら、この場にいる全員の古傷が治ってしまうからよ。

そうしたら、さすがの私でも、全員を納得させる言い訳を考えるのは至難の業だわ。


王太后は目を見開いて私の腕を見つめたけれど、ひくりと頬を引きつらせた。

どうやら何かが気に入らなかったようだ。


けれど、次の瞬間、王太后は何事もなかったかのように顔から表情を消すと、淡々とした声を出した。

「あなたはどこの教会にも属していないはずよ。だとしたら、聖女の魔法について、どこで学んだの?」


「えっ、それは……」

前世でも私は聖女だったから、前世で学びました……と答えるわけにはいかないわよね。


うーんと頭を悩ませたけれど、近くにプリシラとローズがいたので、彼女たちに説明した話と内容を変えるわけにはいかないと気付く。

とはいえ、『王家に秘匿されていた聖女』と答えるだけでは、王太后は納得しないだろうから、少しばかり内容を足してみた。


「王太后陛下のおっしゃる通り私は騎士です。そして、騎士として働いている最中に、聖女だと発覚しました。そのため、騎士の身分はそのままに、ローレンス国王陛下とサヴィス王弟殿下の庇護の下、聖女としての訓練を積んできました」


我ながら完璧な説明だわと思ったけれど、なぜかザカリー団長とイーノック団長が顔をしかめる。

私の隣でもプリシラが首を傾げていた。

「今さらだけど、騎士として働いている最中に、聖女だと発覚するってどういう状況かしら? フィーアの説明は意味が分からないわ」


あらあら、ちっともおかしな説明じゃないわよ。

実際に私は騎士だけど、聖女でもあるのだから、誰かに能力を見抜かれたら、私の言葉通りのことが起こるのだから。


しきりに首を捻るプリシラとは異なり、王太后は別のことが気になるようで、私に質問してきた。

「なぜ聖女であることが分かったのに、騎士を続けているの?」


王太后は心底理解できないといった表情をしていたので、私は彼女が納得しそうな理由を返す。

「それは騎士の仕事が好きだからです! 聖女ももちろん素敵ですが、騎士ほどではありません!!」


実際には、魔王の右腕から身を隠しているというのが主な理由だけど、そのことを言うわけにはいかないので、騎士が好きだという理由で押し通すことにする。

すると、次の瞬間、ザカリー団長がおかしな音を出した。

「ごふっ!」


ちらりと見ると、ザカリー団長は俯いて肩を震わせていたので、泣いているか笑っているかのどちらかだろう。

そして、ザカリー団長の性格を考えるに、恐らく笑っているのだろう。

そんなザカリー団長の隣では、イーノック団長が真っ青な顔をして心臓部分を押さえていた。


2人の反応があまりに違っていたので不思議に思っていると、クェンティン団長が独り言を呟く。

「フィーア様の行動に慣れている者と、慣れていない者の差だな。イーノックもザカリーのようにフィーア様の言動を楽しめるようになれば楽になるだろうに」


一方、私の言葉は王太后のお気に召さなかったようで、彼女の額には青筋がぴきりと浮かび上がった。

「筆頭聖女になろうとしている者が、聖女よりも騎士であることを望むのですって!?」


王太后は明らかに気分を害していたけれど、今さら発言内容を取り消すわけにもいかないので短く返す。

「はい」


すると、王太后はカッと目を見開いた。

「筆頭聖女になる者には強い覚悟が必要だ! なぜなら筆頭聖女は、全ての聖女の頂点に立つ者だからだ!!」


「……はい」

発言内容はごもっともだけれど、王太后はどうしてこのタイミングで筆頭聖女の心構えを説き出したのかしらと、不思議に思いながら相槌を打つ。


王太后はそんな私に向かって、とうとうと筆頭聖女の重要性について語り始めた。

「いつだって国民から敬われ、焦がれられ、憧憬を集める存在、それが筆頭聖女だ! だから、筆頭聖女は常に完璧でなければならない!!」


王太后のぎらりとした眼差しを見て、私は悟る。

多分、イアサント王太后はサヴィス総長が、私に過去の話をしたことにうすうす気づいているんじゃないだろうか。

さすがにあれほど詳しく話をしたとは思っていないだろうけど、王太后とサヴィス総長の間に何があったのか、概要くらいは聞いていると考えているはずだ。

だから、王太后の発言はそのことを踏まえたうえでのものなのだわ。


ということは、王太后の発言には、人々から完璧な聖女と見做されるためには外見を整えることも重要で、実の息子から目を奪うことですら肯定されるということが含まれているのかもしれない。

だとしたら、私は絶対に王太后の言葉を肯定するわけにはいかないわ!


私はぎゅっとこぶしを握りしめると、心の中で呟く。


―――聖女は人々を救う存在だ。

それなのに、自分のために相手を傷付けるなんて、絶対に正しい聖女の姿とは言えないわ。


私は王太后を見上げると、決して同意できないという強い意志を込めて言い返した。

「過去の聖女たちを真似したいのであれば、その行動を真似るべきで、外見を真似ても意味はありません」


多分、大事なのは外見ではないのだ。

いつの間にか、『赤髪に金の目の聖女が優れた聖女だ』という噂が広がったようで、人々は赤髪金瞳の聖女を尊く感じるらしい。


けれど、どのような色をしている聖女であっても、怪我人や病人を救ったならば、人々はその行いを尊く感じるだろう。

私はそちらの方が大事だと思うわ。


しかし、王太后は私と異なる意見を持っているようで、激しく言い返してきた。

「聖女の力で救える者などたかが知れている! そんなわずかな者に感謝されるよりも、大勢の者に崇拝の念を抱かせる方が何倍も価値がある!!」


王太后の言葉から、彼女自身が聖女を特別な存在だと考えていることに気付く。

でも、そもそもそのことが間違っているんじゃないかしら。


そう思った私は、常々思っていたことを口にする。

「騎士も、聖女も、人々を救う職業という意味では同じで、優劣はないのではないでしょうか」


しかし、私の発言はまたもや王太后の逆鱗に触れたようで、彼女はぎらりとした目で私を睨み付けてきた。

「聖女が職業? 馬鹿げたことを言うものではない! これは天から授けられた特別な力だ!! ああ、何と嘆かわしい! そのようなことすら分かっていない者に、筆頭聖女になる資格はない!!」


王太后の言う通りね。

聖女であることを隠している私が、ナンバーワン聖女になれるわけがないというのは、至極当然の話だわ。


「その通りです」

素直に頷いたというのに、王太后はさらに鋭い目で睨み付けてきた。


うーん、何と答えても睨まれるみたいね。難しいわ。


でも、王太后の発言を肯定して睨まれるのはおかしな話だから、もしかしたら私の発言内容を誤解されているのかもしれない。

そう考えた私は、説明するための言葉を重ねる。

「私には王太后陛下が言われるような資質はありませんから、筆頭聖女にはなりません。代わりに、騎士として多くの者を救いたいと思います」


「……何だと?」

王太后が聞き返してきたので、間違えようがないようきっぱりはっきり宣言する。


「サヴィス総長はとても立派な騎士団総長です! そんな総長のもとで私は騎士として頑張ります!!」


王太后がぎりりと奥歯を噛み締める姿を見て、ふと彼女が総長に言った言葉を思い出す。

『あなたは多くの功績を残したかもしれないけれど、しょせんは騎士としての功績だわ。何をしたとしても、筆頭聖女である私の功績を上回ることはできないの。残念だったわね』


あの言葉を聞いた時、私は王太后は間違っていると思ったのだ。

だから、いい機会だわと、あの時言葉にできなかったことを声に出す。


「サヴィス総長は騎士になって、まだわずか10数年です。王太后陛下と同じくらいの経験年数を積んだ時にはきっと、総長は王太后陛下より多くの者を救っているし、大きなことを成し遂げているでしょう! 私はそんな総長の下で働きたいです!!」


王太后は信じられないとばかりに頭を振った。

「……何を馬鹿げたことを言っている! まさかサヴィスを支えるために、筆頭聖女の地位を欲しないというのか!?」


「はい、その通りです!」

私は王太后に向かって、きっぱり言い切ったのだった。

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最高だよ!!!! こういうのを!こういうのをずっと待ってたよ!!! フィーアの啖呵に痺れたぁぁぁぁ(´;ω;`)✨
>「聖女の力で救える者などたかが知れている! そんなわずかな者に感謝されるよりも、大勢の者に崇拝の念を抱かせる方が何倍も価値がある!!」 「お前の前にいるのは、ひとつの民族を滅亡から救い、崇拝のあま…
元々シャーロットちゃんは違うけど最近フィーアの影響を受けた聖女達を見てると 皇太后の「聖女の力で救える者などたかが知れている! そんなわずかな者に感謝されるよりも、大勢の者に崇拝の念を抱かせる方が何…
2026/06/29 03:31 退会済み
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