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叱られてました

「謝罪要求。故、在らば開示せよ」

「うむ!すまん!」

「すいませんでした…」


色々荒れ果てた森の前で人の姿のガルム様と魔王様が転がされている、その目の前に立つ、というか現れているのはギアナ様。三大始祖が一堂に会してしまった、近くにはぜえぜえと肩で息をする九条くんもいるからこの空間の戦闘力がヤバいというか、豪華にもほどがあるね。私これ見てていいの?


結局あの大乱戦に九条くんがヤケクソ気味に介入して2:1で止めようとしてくれた、勿論カンスト3人の戦いだから九条くんもかなり苦戦してて見てる方もハラハラだった。でも、そこにギアナ様が現れて、ガルム様と魔王様を捕獲してガッチリ固定してくれたんだ、救世主だよね。

その結果目の前に蚕みたいに光の鎖みたいなので縛られた両者がボロボロになってるけど因果応報ってやつです。ガルム様はけらけら笑って楽しそうなんだけどね。


「は、はぁ…はぁ…クソ………つ、疲れた……」

「九条くんも、疲れるんだね…」

「魔力も、体力も、枯れたら、疲れる…」

「お、お疲れ様…ごめんね…」


雑に送り出しちゃった手前申し訳ない、おでこの汗をぐっと袖で拭ってはまた深く深呼吸している。それを見かねたのかガルム様が手の様なものを伸ばして九条くんに触ると一気に呼吸が楽になったみたいだった。面食らっている九条くんを気にせずギアナ様が顔っぽい場所を魔王様とガルム様に向ける。


「質疑、汝らの交戦回数」

「え…お、覚えてない…」

「そうさなぁ、実に300年か、そこらぶりか?」

「そうだな。いやー、ライムもギアナも入ってきたから史上最高に楽しかっ…いっっ、てぇ!!ごめんなさい!!!」

「確認。記録更新。自省の念無し」


魔王様がさっきの惨事を思い出して楽しそうに笑ったら、光の鎖がぎゅうっと締め付けた。凄い、初めて魔王様が痛がるの見た。っていうかこれ本当に何回もやってるんだね、いい加減に懲りてください。サリィさんが大変でしょう。


「私、ギアナ様のこと怖いお方だと思ってたんですけど、死ぬほど頼れるお人ですね」

「でしょう?」


これはサリィさんが丁重に扱うのも分かるわ、心がないって話だけど気配りもできるしかなり良い人だよ。しかもドラゴンの身体のガルム様もあっさり倒して?くれたし本気で最強なのでは。


「もう発散した!発散したから!いいだろ、ライムここにおいててもさぁ!」

「は…?え?何、オレ?」

「許可、ただし条件を付ける」


蓑虫みたいな魔王様がジタバタしつつギアナ様を見上げると、あっさり頷かれる。これはやっぱり心がないからなのかな、私だったら溜息の一つも吐きたくなるのに。そして置いていかれてる九条くんがちょっとオロオロしてて可哀想、今思い出したけど発端はそもそも2人の事情だったね、もうそんなのどうでもいいくらいの荒れ果て様なんだけども。まさかだけどこれ月一でやるつもりじゃないよね。


「アルカディアに出向け」

「ヤダーーーーーーッ!!!」


許可された時はキラキラの笑顔だった魔王様の顔が秒で曇った、あ、はい、お仕置きで一番なものを考えてたから躊躇うそぶりが無かったのね。


「待っ、待て、待てよ!罰重い!ちょっと暴れただけだぞ!」

「異議破却。我は戻る」

「しからば儂も戻るとするかのう」

「待てぇ!なんでおっさんにお咎めなしなんだよ!!おい!ギアナ!!」


ちょっととは、森は焼けてるし地面に色々穴空いてるしお城が無事なのが不思議なくらいの光景なんですけどこれをちょっとと言うの。鎖が解けて魔王様がギアナ様に食ってかかろうとしたけど、氷が溶けるみたいに地面に沈んでいったギアナ様を捕まえられるはずもなく。ガルム様も呑気に翼を広げて飛んでいってしまって、魔王様が行き場のない手を力無く下ろす。なんていうか、魔王様よりも上っているんだって実感出来る光景。項垂れる魔王様の肩にサリィさんがいい笑顔でポンと手を置いた。


「観念なさい、和解をしろとは言われていないのだから。単に王都へ行けばいいだけよ」

「やだぁ…っていうかそんな、あの国だっていきなり俺来たら困るんじゃね?な?」

「私にあの方々の決定を覆す力はないわ」

「ぐぅ……」


あ、そっか。別に王族の人とお話しろとまでは言われてなかったね、そう考えるとなんだかんだで始祖さん達も甘いというか、優しいというか。でも魔王様はそんな優しさも存ぜぬって感じの苦い顔である。その様子にずっと戸惑いながら経過を見守っていた九条くんが目を逸らしながら、おずおず口を出してきた。


「…よく、わかんねーけど…オレが原因なら」

「あ、大丈夫だよ九条くん。魔王様が暴れたのが悪いから」

「そ、そう…」

「ハナコまでかよー。な、ライムさ…ついて来てくれたりしねぇ?」

「………どうせギルド本部にも行きたかったし、いいけど」

「やった、ありがとな!」


どうやら九条くんの所属してる冒険者ギルドっていうのはアルカディアにあるみたい、なんだろう免許更新とか?でも、ナイスフォロー。魔王様の駄々のこね方見てもアルカディアの首都に一歩入ったらはい、任務完了って具合に帰っちゃいそうだし用事に付き添う感じで行ってもらった方がいいね。

うーん、ちょっとはアルカディアへの苦手意識みたいなのがなくなればいいけど、そう上手く行ったりはしないよねえ。軽くガッツポーズする魔王様を見て、サリィさんとほぼ同時に溜息をついてみた。







「ハナコ、昨日は大変だったねぇ」

「えっ、え!?な、何のことです!?」

「何って、決まってるだろ!北の始祖龍が暴れて回ったじゃないか!」


バイトに向かっていきなり、アンナさんに振られた話題に露骨に反応しちゃって変な目で見られてしまった。


あ、あー、あっぶない。一瞬魔王城に住んでるのバレたのかと思ってめちゃくちゃ動揺しちゃったよ。そうだよね、あれが騒ぎにならないわけないや。冷や汗を垂らしたままぎこちなく笑って、無理矢理に誤魔化す。


「…あ……わ、私、一瞬で気絶しちゃって……よく知らなくて……」

「あれま、いやあの揺れじゃ仕方ないね」

「な、なんかすみません………」

「いいんだよ、あれは腰を抜かすものねぇ」

「はい…アンナさんたちも無事で良かったです」

「ありがとう」


うん、嘘は言ってない、嘘は。うぅ、後ろめたいなぁ。

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