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ケーキ作りしました

「うーん…」

「ど、どうしたんですか、魔王様」

「悩んでる」

「だからどうしたんですかって聞いてるんですよ」

「俺って悩みとかなさそうって思われてるのか?」

「なるほど、その程度の理解は出来るのか。収穫だな」


だって魔王様の悩みとか、今日の奇行は何にしようくらいのものしか思いつかないし。悩む前に大体のこと解決できそうだし、微妙な視線を送るとサリバンさんとのダブルパンチ効果で若干むくれている。悪いとは思ってますけど、魔王様が腕組んでずっと唸ってたら天変地異かなって思ってもいいじゃん。


「…俺さ、誕生日ってものにそんなに価値感じたことないんだけど、ヒトはそうじゃないんだよな」

「エルフならわからんが、概ねそうだろうな」

「うん、でさ、ロクサーナが来月誕生日らしいんだよ」

「それをはよ言えーー!」

「うおっびっくりした!」


あのロクサーナさんの誕生日って、いや、知らなかった私達が悪いんだけど月一スイーツをご提案いただいてる身として、あとはお世話になっている身として絶対スルーできないイベントでしょ。思わず叫んじゃったよ。

手紙でふと誕生日について聞いてみたらタイムリーだったって話らしいけど、その魔王様の思いつきがなければ2年連続スルーしてたってことになるのか、恐ろしい。まぁ少し遅れていたくらいでもプレゼントは送ってもらうけどね。


で、問題はそのプレゼント。いつもはマジックアイテムを送ってたそうだけど、そろそろ国の軍事力に関わるレベルになってきたから魔王様からのものはストップしてたみたい。残念がられないのかなって思ったけど、マリエラの王様ってかなり小心者らしくてかなり喜んでくれてたみたい。

まぁ、そうか、めっちゃくちゃ偉い人から国宝級の道具毎月貰ってたら怖すぎるよね。私なら楽でいいって思うけど、他の国に反感買われることもありそうだし、何より管理甘くすると凄い事件になりそうだし。それを考えたら正しい判断か、ってなるとただで甘いものもらってたことになるのかな…う、ちょっと申し訳ないかも。まぁ私とロクサーナさんには大した関わりはないし、お姫様に渡せるようなものも無いんだけどさ。


そんなわけで魔王様からはわりと久しぶりのプレゼントになるらしいんだけど、普通の人が喜ぶような誕生日プレゼントが思い浮かばないみたい。


「それで贈り物に悩んでいると」

「大体なんでも渡せちゃうからな…」

「ムカつくなぁ…候補ありますか?」

「ん?やっぱり女相手ならドレスとかアクセサリーとか香水とかじゃ」

「「却下」」

「な、なんでそんな息合ってるんだ…?」


魔王様にしてはまともないけんだったし、女性に贈るものとしてはかなり正解に近い。だけどこの場合それは最悪すぎるのです。何故なら!そんなことをしたら!ロクサーナさんの魔王様への好感度がまた高まってしまうから!


サリバンさんと頷きあって、戸惑い気味の魔王様に両サイドから圧をかける。ロクサーナさんには悪いけどももうちょっと平凡なプレゼントにさせていただこう。


「婚約者のいる姫に贈るものとして、どうかしているぞ、恥を知れ」

「女の人に身に付ける物はダメですよ!絶対に!好みだってあるんですから!」

「わ、わかった」


こくこくと小刻みに頷く魔王様からちょっと離れる、圧ってのはかけ続けてもしょうがないからね。少し気後れ気味に魔王様は人差し指をあわせて、目を泳がせている。まぁいきなり無難なところを全力却下されたらおろおろもするよね。でも許してほしい、1人の女の子のためなので。


「えっと、じゃあ何…?あ、花とか?」

「……まぁ、セーフなんじゃないでしょうか」

「あぁ、その程度なら特別珍しさもないだろう」

「バカ、俺がただの花渡すかっつの」


サリバンさんの言葉にちょっと萎んでいた魔王様が復活、というか得意げになる。右手を掲げるとその手には当たり前みたいにバラによく似た鼻が握られていた、こういうの魔王様がよくやる転移かなって思ってたんだけどちょっと違うみたいで、アイテムボックスっていう何も無い空間に物を保管しておける魔法らしい。なんかインチキっぽいけど魔王様の専売特許ってわけでもなくて、魔法が得意な人なら誰でも使えるみたい。もっとも容量はその人の魔力依存らしいけどアイテムボックスの中だと時間経過もないらしくてすごい便利なんだとか、いいなぁ。


それでアイテムボックスから出てきたバラっぽいものだけどバラと決定的に違うのはその見た目だった。


「じゃーん」

「うわっ!透明!」

「ふふん、それだけじゃないんだなァ、よく見てろよ」


そう、ガラス細工みたいに花のところだけが透明にできてる、一枚一枚は柔らかそうだからちゃんと植物だと思うんだけど不思議。私の反応に気を良くしたのか魔王様はドヤ顔をしてからそのバラにそっと息を吹きかけた、すると透明だった花びらがゆっくり白に染待っていく。それだけならまだ手品みたい、って思うんだけどまた魔王様が花びらを突くと、今度はそこから色が変わっていってみるみるうちに赤色に変化して半分が白でもう半分が赤っていうバラになった。

こういうの日本でもみたことあるけどあれって色水を吸わせて作るんじゃなかったっけ。よく知らないないけど綺麗だなぁ。


「なんと触れた魔力によって色が変わる!どうだ?面白いだろ?」

「却下に決まっている」

「何でだよ!せっかく品種改良したのに!」

「だからだ」


なんでも魔王様はロクサーナさんが受け取った途端、ロクサーナさんの色に染まるっていう演出を考えていたらしく、サリバンさんの取りつく島もない否定にそこそこショックを受けている。うーん、素敵だしもらったら嬉しいけど100年の恋も燃え上がっちゃうからなぁ、あとこの花枯れたりしないみたいなのでそれも大変困る。


「あーもー!じゃあ何にしろっていうんだよ!」

「消耗品とかですかね」

「使用期限が短いならなお良い」

「ふーん…そんなもんなのか、プレゼントって」


嘘です。いや消耗品も嬉しいんだけど好きな人から貰えるんだったら長く使えるものの方がいいと思いますね。うん、魔王様が疑い深くなくて本当に良かった、騙してることに罪悪感なくもないけど、こっちを見てきたサリバンさんが深く頷いていたので良しとするのだ。だって救われないじゃん、魔王様にうっかり告白なんてしたら心に傷が残ること請け合いだし、初恋は綺麗なまま終わってほしいもの。ミハイルさんだっていい人そうだしさ。


「あ、ならケーキでも作って贈るか。いつも送ってもらってるし」

「おお!いいですね!あ!でもあんまり凝らないでくださいよ?食べやすさと味重視で」

「わかってるって」


ま、味については大丈夫だと思う。魔王様はふらっと気が向くと厨房に入ってきて三つ星レストランのシェフかなってくらいの料理を作り上げる人だからね。ケーキならよく食べてるし、作り方がめんどくさくてもやりきっちゃうんだろうな、本当羨ましい。念の為に釘を刺しておいて談話室から消えた魔王様が戻ってくるのをサリバンさんと一緒に待つことにする。流石に作ってる時にもあれやこれやいうのは失礼すぎるもんね、結局は魔王様からのロクサーナさんへのプレゼント、だからさ。







まさか、すぐさっきの考えを公開する羽目になるとか考えもしなかったな。サリバンさんとお茶しながら待ってたら、ちょっと微妙な顔した魔王様がワゴンを引きながら入ってきた。ドームカバーが被せられているものは多分ケーキなんだろうけど、様子がおかしい。ソファから立ち上がったサリバンさんが足早に近寄って、勿体ぶったりもせずにドームを取り払った。

そのケーキは4号くらいで、まぁ頑張れば一人で食べられるかなってサイズ。まぁそこはセーフなんだけど、問題は装飾だった。


「…魔王様、どういうことです?」

「い、いや、その…」

「その頭には何が詰まっている。言ってみろ」

「ぞ、臓器…なんちゃって…」


面白くもない冗談にサリバンさんのデコピンが炸裂した、痛くはないんだろうな、むしろサリバンさんがそっと指を摩ってるからダメージはそっちにいってるんだろう。

そしてその背後のケーキ、サイズだけは慎ましいんだけど側面にリボンを演出したフリルのクリームがすごい、宝石みたいに刻んだドライフルーツとデコレーションのチョコが散りばめられていてドレスみたいになってる。

上はというとなんとロクサーナさんのミニサイズの人形が乗ってる、デフォルメならまだ許した、だけど五センチくらいの大きさでドレスから髪の毛から何やら全部再現してあるの、職人技かな?しかもその後ろにお城も作っちゃってるし、私食べやすさ重視でっていったよなぁ、おかしいなぁ。


「…どっから見ても力作じゃないですか!」

「なんかその、飴細工っていうのか?人形作れそうだなって思ったら…出来ちゃって…」

「これは没だ、いいな」

「わかっってるっての!作り直しゃいいんだろ!」


うわぁ、飴で出来てるの、これフィギュアばりの作りの良さなんだけど。創造神様の血って恐ろしいね、いくら作ることがうまいっていってもここまでは想像しないよ。途中で楽しくなって、作り終わってからやらかしたことに気がついたんだろうな。半分涙目の魔王様がワゴンを押して厨房に戻ろうとしたので今度は一緒についていくことにした。没になったケーキの処分係をしたいっていう下心もしっかりあったけどね。


夜遅くに帰ってきた九条くんに甘すぎる匂いについて呆れられたのはまぁ、そういうこともあるよねってことで。


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