作ってありました
「あ、おかえり」
「わっ」
バイトから帰って、談話室に立ち寄ったらちゃんと両目揃ってる魔王様に出会った。左目の色は右目と同じなんだけど宝石を素材にしてるからか瞳孔とかなくてちょっと変な感じ。でも魔王様の自前の目もなんか特殊だし、そんな変ってわけじゃないのかもね。完全に元通りってわけじゃないけど、取り敢えず包帯がなくなってホッとした。
「上手くできたんですか?」
「おー、完全再現はできなかったけどな」
「それでも相当だと思うわ」
「ま、魔眼なんて片方あれば十分だし。逆に新機能が追加されました、ふふん」
なんでも一つくらいしか入れられなかったから一番便利な遠見をセットして完成にしたらしい。まぁね、他の魔眼の機能って滅多に使わなそうなものばっかりだし、一つあればいいのかも。それにしたって前聞いた説明的に世界どこでも見られちゃう、んだよね。それをちゃんと再現できてるだけでも相当凄いなぁ。
そして新機能とかいうのも付いてるらしい、得意げな表情で左目にピースなんて被せたりして笑ってるけどこういう時って大抵気が抜ける時な気が。
「ビームが出る」
「今すぐ消して」
「なんッ、でだよ!」
予想通りだった。サリィさんに秒で却下されて魔王様は信じられないって顔で突っ込んでるけど、当然の反応なんじゃないかなぁ。得意げになる理由が分からないもん、そんな私の視線を感じ取った魔王様は若干しょんぼりなんてしている。よほど自信があったんだろうな、どの部分に関してか分からないけど。
「折角いいカスタム出来ないか考えたのに…」
「どこがどういいんですか…」
「何してんの…?」
「あ、ライムも帰りか」
控えめな声に振り向くと胡乱な眼差しで室内を覗いている九条くんと目が合う。かくかくしかじかで魔王様の残念な発明について教えると完全に呆れ返った顔になってしまった。
「何?実はバカ?」
「そうだよ」
「そうよ」
「俺に返事させろ!バカじゃねえ!」
どの口が言うんだろうか、この場はもう3:1で完全に魔王様の負けなんだよなぁ。なんていうか魔王様って頭はいいはずなんだけど、常識的な観点が欠けてるっていうか。あれかな、何と天才は紙一重みたいな、そういう感じの。1人だけ納得いかないみたいな顔で腕を組むと、魔王様は左目を瞑って口を尖らせた。あ、これは来るぞ、駄々っ子タイム。なお私が今名付けました。
「折角自分の体弄るんだぞ、機能くらい拡張したいだろ」
「目からビーム出す必要あんの?魔法で一発のくせに」
「えっ、かっこよくない?目からビーム」
「小学生かな?」
「変なところでセンスが最悪なのよねぇ」
そう、わざわざビーム出せるようにする必要なんてどこにもないんだよねこの人。出そうと思えば手からでも出せるだろうし、そもそもビーム使う機会があんまりないような。前のダンジョンみたいなことだってそう頻繁にあるわけじゃないだろうし、基本的に常にだらけてるのが魔王様なわけで。
「魔王様に必要なものなんて粗方備わってるじゃないですか、使わないだけで」
「だから悩んだのに…なんで不評なんだ…」
「普通にしておきなさいな」
「ちぇー」
かなり渋々って感じで魔王様は左目をいじっている、直接触ってるわけじゃないんだけどなんか怖いのでそっと目を逸らした。逸らした先では九条くんがちょっと考える顔をしてたので、ちょっと驚く。どうでもいいって感じのタイプじゃないんだ。
「…地雷女メーターとかにしたら」
「何それ」
「九条くんは何があったの…?」
言い出した単語のふざけた感じとは裏腹に表情はかなり真剣だった。そんなこと考えるくらいに踏んだの?地雷、まだ若いよね。
なんでも九条くんは一年前にここを出て冒険者になることにしたそうだけど、カンストしてるから当然のように加入試験は満点合格で、レベルを測るマジックアイテムは計測エラーを吐いて壊れてしまったとか。で、見た目は子供だし結構その、口とかも、子供というか生意気だから、アイテム側の故障だろうってことで先輩冒険者達にかなり喧嘩売られたりしてたんだって。もちろん結果なんていうまでもないけどね、そんな感じで魔王様とのリベンジを果たすために売られた喧嘩も売られてない喧嘩も買って、超難関任務なんかも進んで引き受けてたらすぐ噂が広まった。
なんか異国風の子供がめちゃくちゃ強い、って。働きっぷりも着々と認められて勇者の再来とか言われだし、あっという間にSランクになって、そうしたら顔もまあまあカッコいいってのもあって、いつのまにかどっかで手を組んだ…ような気がする女子とか、どっかで案内を頼んだ…っぽい女子とか、どっかで助けた…ことある気がする女子とか、まぁ諸々付いて来ちゃったらしく。
あー、なんかそういう話お店で聞いたことあるな、Sランクのハーレム野郎とか噂されてたアレ九条くんのことだったんだ。へー。
「ふーん」
「なんだよその目」
「別にぃ、もげろとか思ってないですしぃ」
「ん?そこはしょうがないだろ、優秀な雄に雌が寄り付くっていうのは自然界の法則と言えなくもないわけで…」
「……」
「…あ、この表現って、ダメ?」
つくづく、魔王様は言葉選びの才能がないよね、オブラートに包むって発想がまずないし。包めっていうと包みすぎるし…この世界オブラートあるのかな、どうでもいいか。とにかく言いたいことは分かるんだけど、こう「強いならモテる」くらいの言い方でいいでしょ、生々しすぎる。
九条くんも若干呆れがちにサリィさんの方に視線をちらっと向けて態とらしく嫌な言い方をする。
「じゃあ、そっちのはお前に寄り付いたってわけ」
「サリィ?いやいや、違うって。ハナコみたいなこと言うんだな」
「…え?じゃ、じゃあ、まさか、この間の男…?」
「違う。っていうか一緒」
「………えっ、は?嘘だろ、お前ってそういうの無いのかよ」
「お前と違って人気ないの」
「「はぁ…」」
「…ため息つかれてるけど」
「なんか俺がそういう話するとこうなるんだよ、気にすんな」
ちょっとは気にしてほしいよなぁ、ラヴィニアさんはいいけどロクサーナさんについてはきっちりさせてほしい。あ、いやきっちりさせたらさせたでかなり面倒そうなのでこれ以上好感度を上げないでほしい。漫画とかにも鈍いイケメンっているけど魔王様のこれは鈍いとかそういうクラスじゃないんだよ、もうなんか無一歩手前っていうか。
「に、しても。お前そいつらとはちゃんと話つけたのか?」
「つけてない」
「うわぁ…」
「正直、どうかと思うわ」
「話通じないんだからしょうがねえだろ…」
うーん、まともそうに見えたけど九条くんも九条くんだな、好きでもない相手から好かれても迷惑とか言えちゃう人か。まぁ、話してくれてるとき相当顔が疲れてたから迷惑は被ってたんだろうけど、そういうの全く縁がないからあんまりピンとこない。あれか?会社の勘違いしたおっさんに好かれているシュミレーションすれば感覚として近いのかな、絶対違う気がするんだけど。こういうチート君の近くにいるのは美少女って相場が決まってるんだからね。
「でも、その人達って九条くんのこと絶対探してるよね」
「まぁ…デカめの仕事とかは必ず出てるからそこでばったり会う可能性が高いかな」
「なら先送りするのは尚更賢い行いではないわね、もしあなたが」
ちょっと気になって聞いてみると、九条君はふっと目を逸らして後頭部をかいた。今日は早くからささっとどっかに行ってたみたいだけど、会わなかったのはラッキーだったらしい。どうしたらいいか分からないから逃げてるってことか。そんな九条くんをサリィさんが綺麗だけどちょっと意地悪そうな笑顔で見る、そして続けようとした先を魔王様の声が遮った。
「…あ!魔法でお前の記憶消せばいいじゃん!」
「…こんな考えの人間になりたくなかったら」
「魔王様…」
「………まぁ、その……頑張る…」
「ん?あれ?なんか俺また貶された?」
うん、とりあえず九条くんには頑張ってもらいたいね、カンストチートが揃って情緒がヤバい人だと、かなりアレだから。




