表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/92

震えてました

「あー…たっだいまー…」

「うわ!おかえりなさい!」

「あら、死ななかったのね」

「城の主に向かってそれはなんだよ…」


気まずくギアナ様と数日を過ごしてちょっと存在になれてきた頃、やっと魔王様は帰ってきた。いや帰ってきたも何もないか、身体はずっと魔王様の部屋のベッドに置かれてたしね。なんかアレ完全に死体安置所って感じだったんだよな、人の部屋に用ないから出入りはしなかったけどお見送りするとき完全に死体を見てる気分だったよ。


そんなわけで部屋から出てきた魔王様はいつもより輪をかけてダルそうだった、低血圧の人みたい。幽体離脱した後の人が元気一杯でも困るけど、顔色はあんまりよろしくないのでちょっと見てて心配になっちゃう。せっかくなのでホットミルクとか作って渡してみたけど元気になるかどうかは微妙だなぁ、こんなことしなくてもほっとけば治るんだろうし。まぁ自己満足だからいっか、いつも通りソファに座って私は魔王様に言いたかったことをぶつける。


「魔王様、頼む相手どうかと思いますよ」

「いいじゃん、ギアナ疲れないんだし」

「私が疲れるんです!どうしたらいいかわからないでしょ!話も分かりにくいのに!」


ぼんやりとは分かるけどサリィさんの翻訳がないと理解できないことは結構多かった。システム的な存在って言うんだからアレがそれらしいんだろうけど気遣うんだよね、話通じてるか分からないと怖いじゃん、ヒトとか魔性にかかわらず。不満をぶつけてみると魔王様は軽く首を傾げて、納得したように小さく頷いた。


「んぁ?あー、ギアナは普通に話せるぞ、あれはわざとやってんの」

「えっ!?」

「なんで驚くんだよ、いくら機構だっていってもあんなこってこてな話し方するわけないだろ。ゴーレムだって人間並みに話せるんだから」

「えぇっ?!」


わざとあんなに分かりにくい話し方を…えぇー私の苦労は一体。


あ、ゴーレムっていうのはロボみたいなものなんだって。掃除とか片付けとか簡単な仕事を頼めば自動でやってくれるやつね。で、人の好みによるけどちゃんと受け答え出来るものとか、もっと進化させて話し相手になってくれるものとかもいるみたい。精密な入力をすれば使う相手の喜怒哀楽まで理解してくれるらしくて、寂しい魔導師ではゴーレムを恋人にする人もいるんだとか。

なんかそれ…あれ…あの……そういう感じのあるよね、日本にも。虚しいっていうか、夢がなくない?なんか涙出そうなんだけども。ロボットと人との恋愛って感動的だけど現実をお出ししろなんて言ってないです。


「お前さぁ、ギアナが普通に喋ったら、話が通じる相手だと思うだろ?」

「そりゃそうです。それでいいじゃないですか、親しみやすいし」

「えぇ、だからこそよ。強大な力を持つ存在が話の通じる相手だと思わせてはいけないの」

「あ、そういう…?」


俺に触れると火傷するぞ的な、いや大分違うわ、落ち着いて私。ギアナ様って優しいかどうかは分からないけど結構ちゃんとしたお方だし、そんな人が強かったら取り込んだろうとか思う人も出るってことなのかな。


「ガルムは話通じるけど、あいつは地殻変動普通に起こすし」

「ふふ、あなたは言うに及ばずって感じよね?」

「あれ以来はー!仕事でしかやってないしー!お・と・な・しいしー!」


うん、三大始祖の他の面子考えたら話通じてるかわからない方がいいのかもね。戯れる2人を遠い目で見守ったりなどする。もっともこの怖い人達のこと知ってる人が世界中にいるとは思えないけど、念には念を入れてってことなんだろうな。私の視線に気が付いた魔王様は少し恥ずかしそうに咳払いしたけど全く取り繕えてないって教えたほうがいいのかなぁ。


「えーとうん、まぁ、あれだ、線引き。心が無いって知ると過度に接触する奴もいるんだよなぁ、感傷的すぎるっつーの」

「…う」

「なんだ、どうした」

「いえ、心のかさぶたがはがれそうになって…なんでもないです」

「そうか?」


心を与えるなんてナンセンスって価値観はこっちの世界だと一般的なんだなぁ。完全に納得してるわけじゃないけど心を与えるのが一番だと思って疑わなかった自分の傲慢さとかが若干、というかそれなりに恥ずかしいといいますか。胸を抑えながらうなだれる私を魔王様は不思議そうに見て、サリィさんは苦笑いしている。


「そ、そういえば!神界はどうだったんですか?」

「あ、それね。いやーびっくりした!霊体って肩凝るんだな!」

「待ちなさい、何の話?」

「ま…魔王様でも緊張するんです、ね…?」

「肩凝るなんて初めての経験だったからさ…スキルないとこうなるんだって思うと、ヒトも魔性もすげえなって…」

「そこで止めて。そういうことを聞いてるんじゃないの」


強引に話題転換してみたら、初めての親子会話が聞けると思ったのに初めての肩こりについて返ってきてしまった。いや、こういう人ですよね、大体わかってるんだけど、お父さんより肩こり。っていうか状態異常無効持ってると肩こり起こさないんだ、なんて便利なスキル、いいなぁ。こういう形で他人を尊敬してほしくはなかったよ。


結構据わった目でサリィさんが魔王様の肩を掴んで止めると本人は全くわかっていない顔。創造神様の事について聞きたいんだって伝えてみると、眉を寄せて首を傾げている。うっそでしょ、そんなに思い出ない?神様が泣くぞ、洪水とか起こったりしそうなので本気でやめてほしいんだけども。


「んー大きな何かは…あ、創造神を父上って呼ぶようになったくらい?」

「そこ一大イベントですよね!?」

「呼び方変わるだけだぞ、大袈裟な」

「だ…大丈夫だったの、創造神様は?」

「若干挙動不審になってたけど特に問題はなかったかな」


その挙動不審が問題なのでは、言いかけた途端小さな揺れが襲った。震度3くらいかな、地震大国で生きてたから特に驚いたりしないけどこっちの世界に来てからは初めてだ。3人で顔を見合わせてみたけど大きな揺れじゃないしって流すことになった。でも、ストバイト大陸での地震はそこそこ珍しいらしいよ。


それにしても生まれて初めて会ったお父さんを父上呼びすることになったんだから、もうちょっと照れとか複雑な何かがあってしかるべきじゃないかな。呼び方変わるだけでも距離感って縮まるものだと思うんだけど…無理か、魔王様じゃ。少し創造神様に同情してしまうなぁ、いきなり上手くいくとは思ってなかったけど予想よりも距離遠いよこの親子。魔王様はそれよりも気になっていた事が解決したとかで機嫌良さげに話してたから、めんどくさい話はされなかったんだろうけど単に向こう様が緊張してて話せなかったって可能性も高いからなぁ。


「ま!今後俺に何か個人的な話があるならちゃんと言えって父上に言っておいたから、もうハナコに変な手紙が届くことないはずだ、ごめんな?」

「えっ?!あ、あぁ、いえ…全然…」


結構気にするなぁ、優しいというか、律儀というか、適当なわりに責任感は備わってるんだよねこの人。気を遣わせてしまってたことにお礼を言おうとした瞬間、またさっきと同じくらいの揺れが襲う。流石におかしい、ここじゃ珍しいことがそう何回も連続してなんてなんかの前触れなんじゃ…。


ん、あれ?さっきも今も魔王様が喋った直後に揺れたような。えーと確か今とさっきの共通点って、確か魔王様が…父上って言ったこと?

…いや、まさか、そんな、ははは。心の中で滝のような汗を流しつつサリィさんをちらっと伺うととても顔色が悪い、あ、これ同じ事考えてるな。目を合わせて静かに頷き合った。


この揺れ、絶対お父さんの心の揺れですね。そして鈍い本人といえばきょろきょろと辺りを見回していたりして。


「なんか今日地震多いな?ガルムに釘刺しとくか」

「…やめておいたほうがいいと思うわ」

「わ…私もそう思います」

「え?なんで?」


創造神様、落ち着いてください、私は心の中で叫んでみた。全然意味ないんだろうけど。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ