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星を見ました

なんでも一年の終わりに近づいているらしい、つまり冬。気候が秋のままなんだよなぁ、あったかいとは聞いてたけど霜すら降らないとは。いや助かりますけどね、お城はあったかいけど冬って気分的に布団から出たくなくなるじゃん。

で、冬っていうと空気が澄み切ってるから星がよく見えるんだよね、こっちの世界、星がやたらと多く見えてどれも中々輝いてらっしゃる。あれかな。都会の空に慣れてたからそう思うのかもね。それでもって、その中でもとりわけ眩しい星があるから、なんとなくぼーっと見てた。


「あれ北極星かな」

「違うぞ」


魔王様の冷静な突っ込みが飛来してきた、いや分かってますよ、多分この星だって地球って名前じゃないんでしょ。あ、でも太陽と月はそのままなんだよね…まぁ、とにかく物の例えと言うやつで。窓から身を乗り出して夜空を見上げている私に、読んでいた本を置いて魔王様が近づいてきた。そして私の見ていた真っ白に輝く星を指差して面倒そうな顔のまま喋り出す。


「あれはラディウス、眩しいし覚えやすいだろ」

「ふーん。デネブ、アルタイル、ベガみたいなのはないんですか?」

「なんだそれ…?」

「星座ですよ、夏の大三角」

「今は冬よ、ハナコ」

「そもそも星座って何だ?」


ソファに座ったままのサリィさんも横の魔王様も不思議そうに首を傾げた、なんと、星座がこの世界にない。驚きそうになったけど、私もそんな詳しくないしな。一発でわかるのも覚えているのもオリオン座くらい、なんていうかプラネタリウムには何回かいったことあるけど、星座の形ってなんかこじつけだよね、絵さえ付けちゃえばどうとでもできるじゃんあんなの。夏の大三角だって、覚えやすいだから覚えてるだけで見つけろって言われたら無理だもん。そもそも星座って何のために作ったんだろうな、なんて考えてみたり。


星と星を繋げて動物やら何やらに見立てたりするんですよ、とかぼんやりした説明をしてみると2人は中々見ることのないドン引き顔を披露してくれた。え、そんなに変なこと言ったかな、私。もしかして理由も上手く説明できないダメな子だと思われてる、とか?それはだいぶキツイんですけども。背中に薄っすら冷や汗の感覚が生まれた。


「な…なんつーか、怖いもんなしだな…」

「…ゾッとはするけど、世界的な話ではなくて?」

「ん?えぇ?」


どうやら私に対して引いていたわけじゃなさそう、ちょっと安心したけど2人の顔は相変わらず引きつっている。この2人にも怖いものってあるのか、なにそれ、世界の終わり的な?首を傾げたままの私を見て魔王様は夜空を指さした。


「…あの赤いのがハリシオン、で、そっから離れたところの青いのがイグラジェラスだ。はちゃめちゃに仲が悪い」

「仲…?」

「星は神々がお休みになられる宮なのよ」


星って神様が光らせるものなの?

いや、なんか神様が星になったとか神話でよくあるよね、急に現実としてお出しされると反応に困るけども。しかもお家とか、そりゃ仲悪い星を繋げて××座!とかやったらその後が恐ろしいけど、ドン引きするほどか。あ、信者の死後はその神様のお星様に飛ばされてそこで眠るらしいよ。わー凄い、私もこっちで死んだらお星様かー。


…うん、色々突っ込みどころ満載なんだけど、まずどのレベルのファンタジーなのかは確かめておこう。この世界、変に科学的な考えもあるから混乱するんだよな。


「…あの、星って核融合で光るものじゃないんですか…?」

「お、よく知ってるな。でもそれは太陽だけだ。星は神の威光で光るぞ」

「どんだけ眩しいの?!」

「神が空さえ照らせないなんてあってはならないでしょ?」

「そ、そういうものなんですか…?」


太陽の神とかいそうなものだけどなあ、釈然としない気持ちで聞いてみれば「信仰で天候揺らいだら堪んねえだろ」というわりと現実的な回答。ごもっともですけど、この世界雨乞いとか晴れ乞いしないんだ…そういう仕事の人結構いそうなのにな。働かない神様は信じてもらえない、とか、ちまちましたところシビアだよね。


ちなみに星は神様が生まれるたびに増えるらしくて逆に信仰を失うと流れ星になって消えるらしい、人が死ぬと流れ星が流れるとかそういう言い伝え聞いた気がしなくもないけど、こっちは神様なのか…切ないわ。見たところでお願い事する気にならないじゃん。

で、信者が多い神様の星は強く輝くんだって。ノル様はまだ100年くらいって話だから目視はできないんだろうな。さっき教えてもらった星々はなかなかの輝き、これは忘れないね。それにしてもイグラジェラスって、どっかで聞いたことがある気がする。


「…あっ!ダンジョンの時の!」

「うん、そうそう。イグラジェラスは魔法の神な、ついでにハリシオンは闘争の神だ」

「やっぱり…インテリと脳筋的な…?」

「そうじゃなくてな、どっちも自分が強いって言って引かねーの。ちょくちょく殴り合いに発展してる」

「血の気が多いなぁ…」

「神ってそういうものよ」


えーと、魔法の神様っていうと性格悪いお方だっけ。あの時の魔王様の詠唱はちょっと神様の力を借りる降神魔法ってやつだったらしい、サリィさんが生温い顔をしているので私には分かるのだ、絶対凄いやつだ。一言で詠唱済ませていいものじゃなかったやつでしょ。そもそも義理とはいえ一応信仰してるのは創造神様でしょ、他の神様の力借りたりなんてしてもいいのか。イグラジェラス様?も大分肩身狭かったんじゃない?


「あの、ラディウスって…」

「えぇ、創造神様よ」

「めっちゃ眩しいですね…」


2人の神様の説明はされたのに、一番最初のには説明がないのでさすがに察する。やたら面倒そうな顔してたし、まぁそうだろうね、あと一番眩しいもん、星の光が。ルキウスとラディウスって名前も似てるしそこに気がつかないほど鈍くはないです。っていうか本当にお父さんのこと嫌いじゃないんだよね?扱いが雑にも程があるよ。


「魔王様って神様の間だとどういう扱いなんですか?御曹司的な…?」

「しっかりばっちり問題児よ」

「あっやっぱり…」

「やっぱりって何だコラ」


キレやすくて自分ルールで生活してて、思い付きで変なことする最高神の息子が問題児にならないわけないんですよね。レベルもカンストっておまけ付きだしさ。もしかしたら神界全体で可愛がられてるのかなって思ったけど、そんなことはなさそう。かといってお説教も言いにくいよね、前に聞いた話からすると、創造神…ラディウス様以外の神様は魔王様の暴走あって生まれたわけだから、広い視点で見ると親と言えなくもないわけで。上司の息子で、自分より年上なわけでしょ、厄介すぎるよ、扱いかねるってレベルではなくない?降神魔法ってパワハラに近いのでは?


「そもそも始祖に選出されたのだって殆ど首輪みたいなものじゃない」

「は!?そ、そんなことないし!?」

「あのギアナ様が仰っていたのよ?あとはガルム様も」

「えっ嘘、ギアナが?えっ?」


あ、なるほど。仕事を与えて大人しくさせとこう作戦だったのか、スマートだなぁ。正直聞いた時はどうかと思ってたけど魔王様のめちゃくちゃな一面を知りはじめると自宅謹慎が一番な気もしてくる。適度に暴れさせて欲求不満を解消することもできるしね、なんだこの人、改めて危険人物だな。かといって何もしないと虚無になるっていうし、平和な世界で生きるの向いてないんじゃないかな。魔王様本人も少しは自覚があるのかちょっと狼狽えてるし。


「実際動くのは殆どが貴方でしょ?」

「あいつらだと小回り効かないからだよ…跡地が怪事件みたいなことになるし…」

「逆に貴方は慢心しすぎなのよね、学ばないの?」

「人選んで舐めてるから大丈夫だぞ?」

「………よくも、まぁ、澄んだ瞳で言えますね」


ガルム様みたいな巨体が暴れたらどうなるかなんとなく予想つく、ギアナ様はというと村だけが綺麗に消えたり、処刑対象が突然行方不明になったりとそっちはそっちで大変らしい。かといってこんなことを罪悪感のかけらもなく言ってしまう魔王様に任せるのもなんか嫌だ、この人、他人に対する気遣いと扱いの線引きが急過ぎるんだよね。

これでも他の始祖さん達よりもマシなのかも、という発想はあんまりしたくなかった。


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