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ご本人でした

「ヒトは愚かだな…」

「魔王様………あの、ラスボスっぽいことケーキ食べながらいうのやめてもらえます?」

「今口の中モノ入ってないけど」

「マナー的な話ではなく」


魔王様が珍しく憂いを帯びた眼差しで魔王っぽいことを言いだす、手元にモンブランなければ中々絵になるんだけどなぁ。気が抜けるわ。食べ切ってからにしろって意味じゃなかったんだけど、魔王様は残りを片付けてそれからフォークでモンブランの乗っていたお皿を突いた。あ、ちなみにモンブランって名前じゃなくてこっちではスフェンド・ル・マーロって言うんだって。スフェンド山っていうのがあってそれに見立ててるらしいよ、マーロは栗ね。


「ヒトが開発して人気出る食べモノって身体に悪いの多くないか?」

「もう、それはしょうがないんです、美味しいものは大概身体に毒なんです」

「…アレか?自殺願望的なものが…?」

「ないですよ!」


マリエラでの食べ歩きとそして毎月のスイーツで確信したらしい、まぁ甘いものもしょっぱいものも美味しいけど好き放題食べてたら健康に悪いけどそんなもんだよね。美味しいものは身体に悪いのだ、私野菜最高サラダ大好きって人種じゃないし、罪だなーって思いながらポテチ食べたりケーキ買ったりしてたよ。サラダは罪悪感をごまかす為のものです、いや野菜も美味しいのは美味しいけどね。


それにしても食にあんまり興味ない魔王様が苦言を呈すレベルって…そんなにかなぁ、はたまた栄養考えなくていいから逆に気になるとかそういう感じなのか。


「あの、魔王様ってなんでご飯食べなくても平気なんですか?サリィさんだってその…ご飯は食べる、わけじゃないですか」

「えぇ、毎日ではないけど」

「えっ!?」

「気分じゃなかったら食べないわ。充分生命力が蓄えられていたらがっつく理由はないもの」

「へー…」


なんとなく毎夜お食事をしてる印象があったけど、夢の世界を歩いて回ってることの方が多いんだって。フィーにいた頃は…たくさん食べてたらしいし、その反動なのかもね。気に入ったヒトしか食べないってことかな。


「俺は栄養を魔力で賄えるからな、大地の魔力が枯渇することがなければ平気なんだよ」

「枯渇したら死んじゃったり…?」

「死ぬか、そん時は飯食うわ」

「枯れるなんてことはないものね、それにその時はギアナ様が先に消滅してしまうでしょうから」

「だな」


自然にしていても、魔王様の身体は大地の魔力を身体に取り込んでしまうらしい。それは神の血を支える為なんだそうだけど、魔王様はその量を少し多く操作して自分のエネルギーにしちゃってるんだって。いや、普通はちゃんとご飯食べて栄養取るとこを魔力取り込んでそのまま栄養に変えちゃってるって話だよね、横着では、ていうか横領じゃない?無駄遣いして怒られたりしないの?


そしてまた出たギアナ様。たしか魔力の塊みたいな人なんだよね、あ、人じゃないっか。始祖で最強かと思ってたけど元を絶たれたら生きていけないよね、そういえば魔力ってずっとあるものなんだろうか。石油みたいに枯れたりしないのかな、ちょっと首を傾げていると気が付いた魔王様も同じように傾いている。


「どうした?あ、ギアナに会いたかったり?」

「聞く感じ怖そうなのでいいです。あの、魔法って無くなったりしないんですか?」

「あぁ、資源が有限とかそういう話?これは推測の域を出ないけど、この世界から魔法がなくなることはないぞ」

「あら、どうして?」


サリィさんは魔王様の言葉にちょっと意外そうに片眉をあげた。そういえば2人みたいな魔性は魔力なくなるとどうなっちゃうんだろう、ギアナ様が幻体ってことを考えたらサリィさんも消えちゃうのかな。魔王様は一応人間の血が半分入ってるから案外変わらなそうだけど、やっぱり色々できなくなっちゃうよね。気軽に言っておいてなんだけど2人のことを考えたら急に不安になってきた、想像でもNoが嬉しい。

魔王様は言葉を探す様に唇を何度か動かしながら視線を上の方へと持っていった。


「俺達とハナコの世界がいい例だけど別の理を持った世界はちゃんとあるわけ。で、そもそもそうやってお互い交わらないとはいえ世界が多くあるのはどうしてなのかって考えたら、実験なんじゃないかなって」

「実験、ですか?」

「魔法があったら、なかったら、神がいたら、いなかったら…まぁ、色々想像した方が楽しいだろ」

「それは誰が?」

「さぁ?言ったろ、推測だって」


サリィさんに突っ込まれて魔王様は当たり前みたいに肩を竦めつつ首を振った。そこまでは考えていない、というか考えるだけ無駄って感じ。まぁ推測っていうか想像だよね、どっちかというと。答えはないけど魔王様なりに考えたのがそういう話なんだろうな、かなり雑な答えにサリィさんは呆れた様に笑っている。想像の数だけ世界がある、かぁ。わかるようなわからないような。


「この世界はハナコのいうファンタジーな世界ってやつだから魔法が失われることはないと思うんだよ」

「適当ね、そうであれということではないの?」

「いや、魔法なんてない方がいいだろ」

「えっ!?」

「あぁ、違う違う。魔法が嫌いなわけじゃなくて、選ばれた者しか使えないってものはないほうがいいってこと。争いの種だからな」


びっくりした、魔法じかけのお城に住む神様の子が言うセリフじゃなかったよね、今。

でもそれってどうなんだろう、一握りの人しか出来ないことって無くせないものじゃないかな、微妙な顔をしてしまう。


「ヒトって平和が好きなんだろ?まぁ今みたいに個体に自我が備わってる時点で無理な話なんだけど、もし平和に近い状態にしておきたいなら技術と価値観の普遍化が必要なわけでさ。だから魔法とかない方がいいよ」

「…魔王様って真面目なところあるんですね」

「今のは遠回しに貶されたのか?」


ヒト寄りに考えてくれた結果さっきの言葉が出たのか、正直言ってちょっと暴論だと思わなくもないけど言いたいことは分からなくもない。人の戦争の歴史って奪い合いだもんな、平等じゃなきゃ世界平和なんて無理な話で、魔法が使える使えないは確かに争いの種になるのかもだ。浸透しないならなくせ、は思い切りすぎてるけど、格差には繋がっちゃうよね。


さて、そんないつもより少しだけ真面目な魔王様にサリィさんはというと訝しげな表情をしている。


「…で、実際あなたはどう思ってるの?」

「平和に興味ないし、なくなるとなくなるで面倒だから現状維持で頼みたいかな」

「ほらー!すぐそういうこと言う!」

「だって出掛けるのに歩かなきゃいけなくなるだろ」

「それでいいでしょ!」


私のブーイングに「個人の意見だ」とか言ってあっけらかんとしてる魔王様、うん、サリィさんには分かってたんですね。私もなんかちょっと怪しいなとは思ってました、だってこのものぐささんが魔法無くていいって本気で思うわけないもん。っていうか徒歩ですら面倒くさがるってなんなの、一回家事ちゃんとやらせてみたいんですけど。だらだらと姿勢を崩しはじめた魔王様は私を片手でどうどう、と抑えて取ってつけるように口を開いた。


「普遍化するべきだってのは本気で思ってるぞ。マジックアイテムはもうちょい普及していいと思うんだよなぁ」

「そうね、でも経済はどうしようもないじゃない」

「ま、そこは国の領分だからな」

「前々から思ってましたけど、魔王様って内政興味ないんですか?」

「うへぇ、めんどい、絶対やだ。そもそも向いてないって」

「そうよ、ハナコ。この気に入らない奴はとりあえず殺してきた男に王が務まると思うの?」

「息するように俺を煽るなぁお前は!」


今度は魔王様が騒いでサリィさんが涼しい顔だ、うーん、ぐうの音も出ない正論。というか内政って聞いた途端にあんなに嫌な顔されるとは思わなかったな、強い人って必ずしも上に立つ素質があるわけじゃないんだよね。なんとなくだけど魔王様がちゃんとした王様になったら仕事はしっかりするんだろうけど、他に回すのがめんどくさいとかいってワンマン経営になる気がするなぁ。そして過労死へ…あ、過労は状態異常だから無効化出来るかも。


それにしてもよくお世話になってるマジックアイテム、確かにこれは都会だろうと田舎だろうと普及してほしいね。私が一番助かってる転移具は悪用の恐れがあるから難しいと思うけど、電卓とか嘘発見器とかさ、そういうのが行き渡れば結構な人幸せになれる気がするんだよね。どんどん楽になるべきだよ、世の中ってやつは。買うお金の事もあるけど、作る技術の方も問題なんじゃないだろうか。誰にでも作れるようになったら安価になって広まるはずなんだけどな。


「マジックアイテムって最初は誰が作ったんですか?」

「あ、それは俺」

「え?」

「いや、だから、俺」


灯台下暗し、いや暗過ぎない?


なんでも昔に初期型を作って、その時にいたお友達のドワーフさんに設計書なんかを色々と渡したから今は手を離れているらしい。魔王様がいう昔、相当昔じゃないかな、で、それで広まってない。目を片手でおさえて長ーく息を吐いた。


「…普及しないの魔王様のせいじゃないですか?」

「あっ…いやっ!簡易化させてあるからな!?血なくても作れるように設計したから!!」

「ハナコ。天才のいうこと、信じちゃあダメよ?」

「ですよねー」

「本当だって!」



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