作りました
魔王様に約束していたすごろくを作るにあたって問題が発生した、まぁ、駒は正直何使ってもいいから問題ないし、サイコロもちゃんとある。これはカロン村の酒場でおじさん達が遊んでたから高価ってわけじゃなさそう、それにしてもチンチロリンって言うのかな、この世界にもあるっていうのはちょっと驚き。数字って文字よりは覚えやすいし、必要なのは偶数奇数の概念だから識字率が低かろうと問題ないのかな。さて、そんなわけで足りないものは無さそうなんだけど一番大切なところで躓いてしまったのでした。
「紙が高い……!」
「なんだ、紙欲しいのか?」
「必要なんです、ゲーム作りに」
忘れてたよね、紙は高い。使わない生活してたからすっかり頭から抜け落ちてた、日本じゃコピー用紙とかいくら使っても財布に影響なんてなかったけどこっちじゃ違う。一枚がサイコロより高い。おまけに欲しいのはテーブルに広げられるくらい大きい紙だし、よりわがままを言うんだったら丈夫な画用紙がいい。
魔王様はどうして私が崩れ落ちているのかピンときてなさそうな顔をしていたので、作ろうとしているすごろくについて説明してみると軽く頷いた。反応を見るに印象は悪くなさそう、一安心。
「なるほど、大体わかった。運要素で遊ぶものなんだな」
「そういうことです、でも描く紙がないんじゃ…」
「どうしても紙じゃなきゃダメかしら?」
「え?いや、そういうわけじゃないですよ。ただそれ以外に代替が思い浮かばないだけで…」
「よかった。じゃあお願い」
「りょーかい、適当なの見繕ってくる」
サリィさんのお願いを受けて魔王様は一瞬で視界から消えた、いつもの転移魔法ですね。最初こそ驚くけど同行者がいない場合魔王様の移動ってアレがデフォだからなぁ、慣れるね。それにしても紙の代わりってあるのかな、ちゃんと書けるもので丈夫だったらいいんだけどタブレットみたいなマジックアイテムのデカイ版だったらどうしよう。アプリやってるんだと思えばいいかな、片付けるの大変そう。そんなことを考えている間に魔王様は代わりを見つけたようで談話室に帰ってきた。その手に持っているものは限りなく私が求めていた紙に近いんだけど、絶対違うんだろうな。戸惑う私の方にちょっと微笑んでその紙らしきものをテーブルに広げると地図が浮かび上がってきた、それだけでも凄いんだけど魔王様が続けて指を鳴らすとその地図が立体的に浮かび上がる、その再現っぷりは前見せてもらった城の模型みたい。
「どーよ、これに情報入力して操作すればすごろく?ってのも楽々だぞ」
「代わりがハイスペックすぎます!!それに私が作るって言ったのに結局魔王様に頼っちゃうじゃないですか」
「別にいいじゃない?縛りは設けていないもの」
「そうそう、それに中身はハナコが作るんだろ?なら俺は土台用意しただけで丸投げ、共同制作とは言わないな」
そうかなぁ。たしかにすごろくって中身が一番だけどこんなに凄い投資されるなんて思ってなかったし、これで内容しょぼかったら辛くないかな。そろりと2人の顔を見ても全く気にしていないようで、寧ろ楽しそうですらあり、うーん、これやっぱやめますとか弱気になれないやつですね。
「…じゃあ、アイデア練るので話聞いてくれますか?」
「いいよ」
「勿論」
折衷案、気になるからいっそみんなで作っちゃおう作戦。逃げとも言う。すごろくのベースは私が作るんだしまぁ平気なはず、多分。
「そもそもこっちの世界ではこういうボードゲームとか、遊べるものはあるんですか?」
「賭場とかでしか見ないがカードはあるぞ」
「あら、最近だと貴族にも流れてきていてよ。やることは同じだけどね」
「えっと…もしかしてお金が絡まないゲームって存在しないんですか?」
「えぇ。だって娯楽だもの」
「不健全では!?」
ソファに座った2人に少し気になっていたことを聞いてみたら驚きの回答が帰ってきた、こっちのゲームって親睦を深めるためのものじゃないみたい。いや、長期休みに卓を囲んで遊ぶ方が珍しいのかな。あ、そもそもの話として文字が普及してないならボードゲーム系は栄えないか、勿体ない。やたら豪華なお膳立てされたから頑張って人生を歩むゲームばりのすごろくを作ろうと思ったけどやめよう、この人達に限ってお金に汚いってことないと思うけどなんか私が嫌だ。そうと決めたらスタートからゴールまでを決めていかないとね、2人にも親しめる内容にしないと。
「まずはストーリーなんですけど、馴染みやすいものってあります?」
「そうねぇ、勇者が魔王を打ち倒すまででいいんじゃないかしら?」
「やめろっつったろーが!」
「…今回は物騒じゃない感じで行きたいので、除く形で」
「次回も無し!」
ラスボスは魔王様っていうのが一番楽なんだけどお願いされたもんなぁ、邪悪扱い受けるの本当に嫌いみたいだし過度にいじらないであげよう、拗ねるしね。もっとも魔王様は悪じゃないですよ、とかフォローは出来ないけど。それにしてもどうしよう、考案したはいいけどすごろくって最後にやったの大昔だよ、子供の頃は友達の家に寄って遊ぶ機会もあったけど年齢が上がるにつれて買い物とかがメインになって、小さい頃の遊び道具なんて埃をかぶってたからね。ぼんやりした記憶を掘り起こしても、おばあちゃんの家に行こう!とか宝探しにいこう!とかふわっとした内容しか出てこない。これじゃすぐ終わっちゃうよね、マスの数が稼げそうな舞台設定にしないとだ、これってそもそも魔王様の楽しい暇つぶしに作っているわけなんだし。悪を倒すものでもなく、アクシデントが起こりやすくて、ゴールした時に達成感がありそうな内容って言うと。
「…脱獄とか?」
「物騒よね?」
「無実の罪ということで…」
「辺境も辺境なんだな」
反応が思ってたのと違うので聞いてみると、この世界は冤罪率がかなり低いらしい。何かしらの容疑がかけられた場合、感情視や過去視ができる査問官によって判断されるからだそう、勿論査問官は不正防止の為にかなりの高給だから賄賂っていうのも効かないし嘘の判定をした場合は片目が潰れる呪いがかかっているんだとか。怖い。ただそういう能力者は少ないからはい、いいえだけ判断するマジックアイテムもあるらしい、嘘発見器って事だね、とっても便利。そんなわけで冤罪なんて滅多に起こらないんだけどマジックアイテムが行き渡っていないド田舎ではたまにあるんだとか。うん、ならばド田舎の牢獄という設定にさせてもらおう。
協力者が得られた1マス進む、とか、壁を掘るスプーンが折れた一回休みとか、ゴールの一つ前に看守にバレたスタートに戻る、とか魔王様に入力を教わって設定していく。なんでスプーンで掘るのかと突っ込まれたけどそこはスルー。粗方マス目を埋めるのを終えると魔王様は少しがっかりしたように眉根を寄せた。
「えー?何も無いマスとかあるのかよ」
「何言ってるんですか、セーフエリアはどんなとこでも必要でしょ」
「じゃあ、1割!あともっとギミックほしいかな」
「そうね、拷問のせいで作業できない、一回休みとか」
「怖っ」
「処刑日が早まった、4マス戻る、とか?」
「なんかシビア!」
せっかく物騒じゃないのにしようとしてたのにどんどん血生臭くなっていく、いやテーマ選びの時点で私が悪いか。それに2人のアイデアは怖いけど表情は楽しそうだし却下するのもよくないよね。そんなわけで結構あった安全地帯はみるみるうちに無くなっていった、おかしいな、ここまでデンジャーな牢獄にするつもりはなかったんだけど。寧ろ忠実なのかな?
「いや〜楽しいなこれ。設定いじって仮想空間作ってもいいと思うけど、どうだ?」
「VRまで行くのはちょっと…っていうかこの内容で誰がやりますか!」
「素直に模型にしなさい、模型に」
残念がる魔王様に念押しでバツを示す。嫌だよ、拷問とかVRで体験したくないよ、それにすごろくって俯瞰するのが一番だと思う。自分の横を通り過ぎる人を見ながら一回休んだりマスを戻ったりするのだいぶ切ないと思うもん。それにしても2人の協力あって中々大作になっだと思うけど3人でやるってことを考えたら残念だな、つい小さく溜息をついてしまう。
「もっと人がいたら盛り上がるんですけどねえ」
「ん、じゃあ次は3人でも楽しめる遊びでも考えてくれ」
「結構難しいこといいますね…」
「ふふっ、とりあえず今はすごろくってものを試してみましょう?」
「あ、はい!」
最強クラスの魔王様と超絶美女のサリィさん、手の届きそうもない2人と一緒に作ったのが子供の遊びのすごろくだなんて、改めて考えるとおかしくて笑ってしまう。人数的にもすぐに終わってしまうんだろうけど、考えてる間が楽しかったからそれでもいいと思う。
…最終調整で信頼関係ががどうとかシュミレーション要素が入り出して何のゲームか分からなくなりだしたけど、まぁ、こういうこともある、よね。




