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ズルでした

「いい暇つぶしないかなぁ」

「そうねぇ、奇行に走られるとこっちも嫌だもの」

「奇行は言い過ぎだろ」

「いや天井を歩き回るのはどう見ても奇行ですよ」


きょうのわんこならぬ今日の魔王、最早今日も頑張ってるなぁとしか思わなくなった奇行です。こっちに来た頃はあんまり酷くなかったんだけど、もしかして私に遠慮してたのかな、ずっと遠慮しててほしかった。コウモリよろしく天井からぶら下がる魔王様をサリィさんと一緒に眺めてみる。別に害はないんだけど上から声かけられると一瞬びっくりするんだよね。

魔王様は無欲で無職、あと無関心。悪口にしか聞こえないけど本当の事だ。仕事するにしてもカンストしてるから目立たずにってのは難しいし、欲しいものも特にはない、あと外の世界への関心もほとんどない、魔法でなんでもできちゃうから。だからどうしたって暇になってぐーたらしたり奇行に走ったりする。食べなくてもいい体っていうのも手伝って凄い歪な生活をしていると思う。


「時間が潰せたらいいんだよな、この際」

「じゃあ土をオーガの身長くらい掘って埋めるのを繰り返すとかしたらいいんじゃないかしら」

「ちょ…サリィさん」


そのエンドレスループ、何かの拷問とかじゃなかったっけな。オーガ族っていうのが巨人に近いってことは習ったことがあるけど何メートルくらいなんだろ。慌てる私を尻目に「それもいいな」だとか言って魔王様は天井から降りてきた、この人なら精神をすり減らすことなく三時間は掘ってるだろうな。


「そ、そうだ!旅行でもしたらどうですか!」

「旅行?」

「ガルム様の温泉は日帰りだったじゃないですか、もっと滞在するとかして異文化に触れたり…」

「あぁ、そういうこと。それは無理」

「無理?」


出掛けるのがめんどくさいとかじゃなくて無理とは、別の大陸にだってワープできる魔王様に無理ってことはないだろうに。怪訝な顔の私に魔王様は面倒そうに口を開いた。


「俺は私情で城から1日以上離れることは出来ない」

「…呪いとか、ですか?」

「これを呪えたら凄いわよ」

「そうですね」

「制約だよ、制約。破ったからってどうなるわけじゃないけどアルカディアとのアレでな」


アルカディアっていうと初代勇者の国だったよね、魔王様がぶった切られたという…当時200レベルだったっていう魔王様もヤバイけどそれを倒せるポッと出の勇者は何者なんだろう。確か負けたあと城にこもるってことを条件に許されたみたいな話になってたよね。それがしっかり国との制約って形で締結されてるのかな。

ずっと疑問だったこと、なぜ魔王様は魔獣も放任主義で国を作ったりしてないのか。魔王様が鬱々としてなくて適当に日々を過ごしてたから気にしてなかったけど城からロクに動かないってほとんど軟禁なのでは。始祖の仕事以外でどっか行くことほとんどないし、あったとしてもガルム様に誘われて行ったみたいなもんだしカロン村に下りてきたときだってもうちょっと滞在していけばいいものをさっさと帰っていった。まぁ私は単純にケーキ食べたかったんだろうなとか思ってたけど、あんまり世界に関わらないでくださいねみたいな約束をしてたんなら納得できる。


「魔王様ってなんか…ちゃんと脅威なんですね」

「お前は日増しに遠慮がなくなっていくよな」

「形骸化してるとはいえ魔王は魔王よ」


レイテ王国の制圧…鎮圧は各国の上層部には通達されているらしい、勿論アルカディアにも。だけどマリエラ国の王女様との文通は箝口令が敷かれていて誰も知らない。本当は暇だし普通に会ったりしたいらしいけど、そんなことをすると国内外で混乱が起こってしまうそうだ。


「だから暇なんだよ」

「堂々巡りですねぇ、趣味はないんですか」

「ない」

「なんて澄んだ目を…」


キリッとした顔で開き直る魔王様、私も無趣味ってことにこれくらい胸張れたらいいんだけどな。でもなんでも出来る人って趣味あるんだろうか、私には分からないけどもっと上手くなろうっていうにも天井ってあるかもしれないし。甘いものは好きそうだけど、ずっとそれ食べてるわけにもいかないよね、何より肥える魔王様は見たくないです。いや半神ならデブになったりはしないのか?こう、不思議なパワーで全部エネルギーになったりするのでは。あ、ダメだ、思考がズレてる。おずおずと熱中できることを尋ねてみれば魔王様は悲しそうに首を振った。


「そこは血のせいでな」

「血?神様の血ですか?」

「遺伝の方。創造神が父親じゃなきゃ変わってたんだろうが子は親を選べないからな」

「そんなこというとまた夢枕に立たれるわよ」

「あっヤベ」


サリィさんに窘められて慌てて口を抑える魔王様だったけど私はなんとなく手遅れなんじゃないかなと思ってしまう。魔王様の親バカが可愛く見えるレベルの親バカだろうし今頃泣いてるんじゃないかな、知らないけど。面倒な扱いをするくらいなら存在ごと忘れた方が有情な気がする。魔王様は軽く咳払いして話を続けた。


「創造神にできないことなんてあっちゃ困る。さて劣化品とはいえその子供はどうだろうな?」

「…才能は子供に必ずしも継がれないと思いますけど」

「まぁね、でも相手は神だから。俺は作るって行為に自然とボーナスが入るらしい」


神の血、創造神の血。規格外の魔力が満ちているのは当然で、魔獣も生み出せる、いや、作り出せる血。新しく命を作り出せる血を持ってる人がちょっとの工作が下手なわけないわけで、思い当たらなかった自分が恥ずかしいけど言われてみれば当然の事だった。魔王はラスボスだからなんでもできるって思っていたけどちゃんとした理由があったんだね。まぁ、神様の子供だからなんでもできる、の方向にシフトされた感じはなくもないけど。ただ一つだけ言っておきたいことがあるのだ。


「料理上手いのズルだったんですか!?」

「ズル!?」


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