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趣味じゃありませんでした


「魔王様の服って自分で作ってるんですか?」

「は?」

「あ、えと、その、そういうのが好みなのかなって」


ここに来て身につけたわかんないときは取り敢えず聞いとけ精神。人の好みに首突っ込むのは良くないってわかってるけど、なんか気になるんだよね。てっきりはいかいいえが返ってくると思っていたんだけど、魔王様は質問の意図がわからないという顔だった。考えてみれば服作ってるかどうかって人に聞くもんじゃないよね、取ってつけた理由を添えてはみたけどこれじゃ似合ってないっていってるも同然では、ヤバい。思わず後退りしかけると力強く肩を掴まれてしまう。


「違います」

「あ、はい」

「俺の、趣味では、ない」

「はい」


念押された。私が真顔で頷くと安心したように手の力が抜けて肩から外れる。嫌そうに刺繍の入ったベストを撫でると魔王様はうんざりという様子で溜息をついた。


「誰が好き好んでこんなの着てるか、俺は元は平民も平民なんだぞ」

「当時身分制度が無かっただけだろう」

「…畑だって耕してたんだからな」

「なにムキになってるんですか」


サリバンさんに突っ込まれて不機嫌そうに腕を組む。畑かぁ、却下された日が懐かしい。農業経験があるんだったら少しは寛大な心を見せてほしかった。中庭の薬草園にこっそりプチトマトとか紛れ込ませちゃだめかな、もう種も買えるくらいの余裕はあるんだぞ。あ、いや家庭菜園してる魔王城ってアウトか。


「しょうがないだろ、なんか気が付いたら周りが魔王魔王って言ってんだもん、雰囲気ある城まで用意されちゃったし、これで普通の服着てるガキだったらなんかアレだろ」

「…さっきまでブリッジで城内一周してた人が言うセリフとは思えませんね」

「あんま楽しくなかった」


なんと魔王様のコスプレ問題、体裁由来だった。暇すぎて奇行に走ったりダラけまくってる人がそういうの気にするっていうのは…そういえば畑の時もそんな感じのこと言ってなかったっけ。この人、気の使い方おかしくない?そもそも魔王って呼び方は間違いじゃないけど名誉ある渾名ってわけでもないし、世間が持ってるワルのイメージに寄せることもないだろうに。


「尤も少し前まで黒いローブを被っているだけだったが」

「えっ!?いつからこんなV系に!」

「V系が何か分からないが、今の衣装を縫ったのはエルフだ」

「イかれたエルフな」


苦々しげに吐き捨てる魔王様はスルー、でもここまで誰かに対して露骨に嫌な顔するの初めて見るかも。よほど変わった人、いやエルフなんだろう。

カロン村に住んでいるのは全員人間だけど、行商にやってくる人とか冒険者で獣人を見かける。ノル教の教祖様も獣人だしね。でもエルフっていうのはまだ見たことない。なんとなく狩りとかが得意な種族をイメージしてたんだけど、聞くところによると老若男女問わず美意識とプライドが高い種族で魔法が得意なわりに魔導師になることもあまりなく冒険者として旅立つ人も少ない変わった人達なんだそう。魔法はアンチエイジングとか美容品作りに活用しているとか。そんなに美意識高い必要あるかな。服を作ったって話からそこも美に対する姿勢なんだろうけど、イメージから大分外れている。


それにしても美かぁ、サリィさんとかサリバンさんに比べたらどっちの方が上なんだろ。これ以上の美形とかいたら本気で目が潰れちゃいそうだな、チラッと横目でサリバンさんを見る。今日はエキゾチックというかアラビアンな雰囲気で、タイトなインナーの上に柄のボレロを羽織り、サルエルパンツに装飾の付いたサンダルを履いている。褐色肌と相まってかなりの色気を醸し出していた、ふむ、サリィさんの白ワンピに対してこう来るのか。


「そういえばサリィさんもですけど、サリバンさんお洒落ですよね。買ってるんですか?」

「魔力で編んでいる」

「えっ。そんなことできるんですか」

「夢魔の身体は現実にないからな」


現実にない?幽霊みたいに身体が透けてるわけでもないのにどういうことだろう。混乱する私を見て2人は顔を見合わせていた、そのそういえば言ってなかったみたいな顔何度か見たなぁ。

夢魔は名前の通り夢に生きる魔性で、普通はずっと夢の世界に閉じこもってその…食事をするそうだ。現実世界に出てくるのことはない、そもそも外に出る為の身体がないから。でも長い年月を生きて多くの………その、夢を食べた夢魔はヒトでいう心臓、魔核が発達して莫大な魔力を持つ事ができる。その有り余る魔力を使って現実世界に干渉して幻体と呼ばれる身体を作り出すことで外を歩きまわれるようになるとか。サリバンさんはそうやって夢の世界を脱出することでフィーの仕事を放り投げたらしい。


「つまり触れる生き霊…?」

「そんなものだ。夢にも潜れるが現実でも幻体さえ作れたら食事は出来る」

「夢魔って凄いなぁ…」

「そも夢魔は欲を食らう者だ。似合わない服など着ない」

「おい、当てつけか?」

「ふっ」


たしかにどんな美形でも似合わない服着てたら冷めるね。魔王様の悪役衣装もこの人なら着こなせそうだしなぁ、そんなことを考えながらサリバンさんを見上げてみると一瞬考えたような顔をして早着替えをしてくれた。そんな分かりやすい顔してたのかな、でも似合う。ミステリアスな雰囲気が漂ってて魔王様とはハマり方が違うね、真似された魔王様はなんだか微妙な顔してるけど。


「でも魔王様に似合う服って…失礼ですけど、粗末なんですよね」

「そうなんだよなー!分かってんじゃん!俺全ッ然麻のシャツとかでいいね!」

「舌の根も乾かぬうちによく言う」

「だ、だってこういう服着始めて100年になるけどまだ恥ずかしい…」

「100年経って慣れないの!?」

「慣れてたまるか!普通じゃねーだろこんなの!」


長生き特有の理論だなぁ、縫ってもらったものを渋々着てるってことだろうけど100年も続けてたらそれはもはや自発的だよ。でも確かに魔王様って着飾らなくていいよっていったら完全な私服になりそうだし…そうなるとこの面子で一番豪華な服を着てるのがサリバンさん達みたいなことになっちゃうんだよね。やっぱこのまま気を遣って似合わない服を着てもらおうか、言い出した手前何様って感じだけど、私は目を逸らしながら言ってみた。


「その…着崩すとかで頑張ってください」

「そこは着なくてもいいくらい言えよなぁ…」


イメージとしてはシーフ系のキャラが魔王の服を着てるって感じです

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