再び訪れた危機
(この中からあれを見つけることは出来ないことではない)
───そう。出来ないことではない。
────....時間に制限が無ければ。
少年の潜入において一番最悪なことは探し物が見つからないことではない。
(一番最悪な事態は....)
───|見つかって倉庫を厳重警戒されることだ。
少年からすると、倉庫に入ることは容易い。
だが、たった一つしか存在しない入り口に一人の大人が立っているだけで、少年の侵入経路は絶たれることとなる。
(どう探せばいいんだ....?)
偶然か。それとも必然か。
どこの箱でも無理に引き抜けば、雪崩のように箱は崩れ落ちるように置かれており、高く積み上げられた箱が一斉に落ちれば、大きな物音がして少年は即刻捕獲される。
一刻も早く戻らなければならない少年にとっては、棚に整頓されて置かれた箱の中に探し物があると信じて探すしか選択肢は存在しない。
棚に置かれた木で出来ている全ての箱は蓋が無く、どの段にある箱も梯子を上手く使えば、簡単に探せるようになっている。
しかし、これも偶然か。それとも必然か。
棚に整頓された、僅かな箱には探し物は無く、残された選択肢は一歩間違えると即刻終了の時間がかかる、積み上げられた箱を一箱ずつ降ろして確認するという途方もない作業だった。
(現実逃避したいけど、仕方ない...!)
少年がため息をついて、一番上の箱に手をかけようとした刹那──!
先ほどの二人の男の声が静かな倉庫にいる少年の耳に響いた。
「いっけね!倉庫に忘れ物した!ちょっと取ってくる!」
「早くしろよ~」
───.....またですか。
───...少しくらい....少しくらい!
───空気を読んでくれても良いんじゃないですかね!!
物音を立てないように、ゆっくりと梯子を降りた少年は倉庫内を見渡した。
───..............隠れる場所───
───見つからない.....。
少年は棚の後ろに隠れて身を潜めていた。
───........。
男は倉庫に入ると、床を見て何かを探し始めた。
おそらく何か落としたのだろう。
───.................。
棚の影から少し覗いている少年には、全く気づかずに黙々と何かを探している。
───......。
しばらくして、男はようやく落とし物を見つけた。
少年には男の背中と倉庫内の物で、男が何を探していたのか分からなかったが、あまり気にはせずにこのまま男が去ってくれることを願った。
男は見つかったことを喜び、軽い足取りで倉庫を後にした。
.....空気が読めないにも限度ってものがあるんじゃないか?
内心愚痴をこぼしながらも、梯子に登ると頂上の箱に手をかける。
静寂が再び訪れた倉庫で、少年は独りで作業を再開した。
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