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二つの塔

───......違う。

───この積み上げられた箱()も違う。

(残りは.....)


 振り返った少年の視界に映ったのは、先ほどまでの真っ直ぐな塔とは違い、不規則に積み上げられた今にも崩れそうな二つの塔。


 少年は、ここに来てから初めて迷った。

───どっちが正解だろう、と。

 そして少年は、目の前の二つの塔から目を背けて、思った。

───すごく逃げ出したい、と。


───正解を選んだ場合。

(最悪の場合倒れても、あれ(・・)が入った箱をすぐに見つけて、少しだが()って....おっと。()って逃げることが出来るの、だ、け、ど!)

───失敗を選んだ場合。

(上手く進めば、失敗の塔を倒さずに確認した後に、正解の箱から盗って──取って帰れる。でも最悪の場合は持ち出せずに終わって、挙げ句の果てには、倉庫に警戒態勢が付く。そうなると───)

───詰む。


 少年は安定しない塔に近づこうとするが、正解の塔がどちらか分からない以上、息を吹いただけで倒れそうなそれ()を、至近距離から判別するには危険過ぎた。

 ぼーっと塔を眺めて考えていた少年に、ある考えが浮かぶ。



───どちらの塔も倒してしまえば、簡単に見つかるのでは?


───....。

───ここ(倉庫)にあれが無い可能性はゼロではないけど、極めて低い。


 少年は、安定しない二つの塔を見て不適に嗤った。


(欲しい物が見つかれば、もうここ(倉庫)に用は無くなる....)

───じゃあ、監視が付いても関係なくない?


 少年にとって、住人のほとんどが眠っている深夜は好都合だった。

 忍び込むのにも適しているが、それともう一つ。

 盛大に物音を立てても、寝ている住人が起きて倉庫まで来るには少なからず時間がある為、誰にも見つからずに戻ることが可能で。

 そもそも、倉庫は住人の住む部屋から離れている為、気づかない可能性すらある。


 二つの塔の間にゆっくりと忍び寄った少年は、見上げると両手を広げて───

────押し倒した。

 

 刹那──盛大な音が倉庫内に響き渡ると同時に、少年の脳内には一つの後悔が生まれる。

───しまった、と。

───思ったよりも量が多いじゃないか、とも。


 箱の量を考えて見れば、少年が下敷きにならずに無傷なことは奇跡なのだが、今の少年にはそのことを気にする余裕などなかった。


 そーっと扉を開け(洞窟内)の様子を確認するが、人影は一つも存在していなかった。

 安心とは裏腹に少年は思った。

───呼び名の無い種族《人間》は頭でもおかしくなったのだろうか。


 再びそーっと扉を閉めた少年は、散らかった箱を一つずつ探し始める。


───....先が長くならないといいなぁ....。

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