いざ、山へ
いくら薬草大好きなイルと言えども冒険者。
たまには冒険や魔物と戦って身体を動かしたくなる。
───『冒険者は冒険してはいけない』
そんな言葉を耳にするようになったのは、いつ頃からだっただろうか。
この言葉はあまり好きじゃない。
もちろん、その言葉が悪いとは思っていない。
ギルド職員として、帰還を待つ者として冒険者を心配してくれているのは良く分かる。
それに報酬だって生きていてこそ、受け取ることができる。
だが、冒険者になる人は。
冒険して宝を見つけ、強い魔物を信頼出来る仲間と倒して。
時には野宿、ある時には宿で酒を片手に語り合い、自由に生活しながら、苦楽を共にしたい。
そんな密かな夢を胸に秘めている人がほとんどではないのだろうか?
冒険者に冒険を止めろと言うのは───夢を──自由を捨てろと言っているようなものだ。
...もちろん悪いことだとは思ってないけれども。
...っと言う訳でやってきました、魔物討伐。
澄み切った青空。
太陽の光を反射させて輝く湖。
そして───山の頂上で大きなあくびをしている竜。
...ん?竜だって!?
えっ。そんなの生息してるなんて聞いてないんですけど。
まあ、記載されてなかったから当然と言えば当然なんですけどネ。
───......。
───..........。
この日のイルは薬草採取やポーション製作を休み、山の魔物を討伐するクエストをしていた。
...と言うのも、お金のために魔物を倒す訳ではない。
この周辺の山には質のいい薬草の群生地が数多く存在している。
加えて、このような群生地があることを知るのは、周辺の地域を探索し尽くしたイルくらいで。
まさに独占状態となっていた。
山の薬草が絶滅しないように質の良い薬草の中から、さらに質の良い薬草のみを選んで採取しすることで。
そのため薬草は絶滅せず、採取した薬草は質の良いためクエストの報酬額は跳ね上がる。
まさに一石二鳥だ。
もしかして僕は天才かっ!?...口に出さなくても恥ずかしい。
そんな僕にとって夢のような楽園を魔物に荒らされては、堪ったものではない。
少し前から僕が作った技術によって(実験段階のポーションを落として割った結果)繁殖して増えた薬草でも魔物に踏まれては、一瞬でその小さな命は終わりを迎える。
...と言う訳で魔物を討伐しに来たんだけど───。
改めてクエストの詳細を確認しよう。
このクエストのランクは、Fランク。
つまり一番下───最下位のクエストだ。
その割には、報酬額は弾んでいる。
それなのになんで誰も受けたがらない?
おかしい。
なにかが───....そうか。
このクエスト───。
───どんな魔物が出没するか記されてない───ッ!!
......受けなくても魔物討伐はするつもりだったから、まあいっか。
鼻歌混じりに薬草を採りながら、深くへと進むイル。
このクエストの危険性に気づくのは、もう少し先である。
「今日の夕飯は何にしようかな~♪」
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