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Sea Labyrinth Online  作者: 山外大河
二章 浸食の聖域
18/21

5 攻略会議

 久しぶりの投稿になります。

 その後、俺はアクアシープの薄皮を素材に、初期装備よりもある程度強い『冒険者の服』を作成し、装備した。他の部位の装備は店売りので賄う。結局アクアシープの角と細い骨は数が少なく、使わずに終わったのだ。

 そして店にて回復アイテムを一式揃え、俺は集合場所である街の中心部の広場へとやってきた。

 広場は、プレイヤー達が何かの集まりに使いやすいようにと、中心に立ち台。そしてそれを囲むように、三人掛けの木製椅子が大量に設置されていた。


「今回は割と人がいるんだな」


 立っている連中もいるが、座っている連中も多く見受けられる。

 今現在、広場には五百人近いプレイヤーが集まっていた。そしてこの内多くのプレイヤーが、あの時怖気づいて攻略に参戦できなかった者たちだ。


「……みんな必死なんですよ」


 背後からチカの声が聞こえ、振り返る。

 そこにはチカと、ある程度顔色が戻ってきたヨウスケが立っていた。

 そして普段あまり自分から喋ろうとしないチカは、こんな時だからか、ちゃんと自己視聴してくる。


「……私も、ヨウスケさんも……もう立ち止まれませんから。もう此処にはいられない以上、戦うしかないんですよ」


 そして最後に、少し顔を赤らめながら、小さな声で呟く様にチカは言う。


「……それに、守ってくれるって言ってくれましたし……」


「ん? チカちゃん今なんて言った?」


「……何も言ってません」


 なんだこのラノベみたいなやり取りは……見ているこっちが恥ずかしくなるぞオイ。


「で、その会議ってのは、そろそろ始まるのか?」


「そのはずだけど。ホラ、出てきたぞ」


 ユウスケが視線を向けた先に……ハリスさんがいた。


「という事は、もう始まるんじゃないかな」


 ユカの言うとおり、ハリスさんは立ち台の上に乗り、こういう会議様に道具屋で有料レンタルできる、マイクの様な効果を持つ鉱石。拡散声石を口元に当て、集まったプレイヤー達に声を掛ける。


「えー、僕が今回皆を集めさせてもらった、攻略組みのハリスです」


 ハリスさんは、まずは自己紹介を行う……攻略組みだという情報を絡めて。

 まあそれにはこういう意図があるんだと思う。まず第一に、こうした緊急事態で皆を纏める様な人間は、それ相応の経験や強さが必要となってくる。そう考えると、攻略組みである事を告げるのは、非常に効果的だ。

 俺の予想通り、その言葉に周囲がざわめき出す。彼ら……いや、俺達のとって、攻略組みは、攻略できるできないは置いておいても、非常に尊敬できる相手だ。何せ、自分達ができない事を必死にやろうとしているのだから。

 だけども、きっとハリスさんが攻略組みと名乗ったのは、それだけが理由ではないだろう。

 普通ギルドなんかに所属していれば、そのギルド名を名乗ってもいいはずだ。だけどそれはしなかった。それはどういうことか。

 聞いてはいない。だけど大体わかる。きっとハリスさんの所属していた月下のオオカミは……既に壊滅している。

 それはモンスターにやられたのか、俺達と同じように、多くの人間が攻略に参加しなかったからなのかは分からない。だけで月下のオオカミは、SLOがデスゲームと化したすぐに、状況を迅速に判断し、チカの様なプレイヤーが外に出ない様に警備するなんていう……普通のプレイヤーとは少々違った感じがする人たちだ。彼らならきっと攻略に参加していたのではないだろうか。

 思い返すと、ユカを見送るとき、ハリスさんは楽しげに攻略組みの面々と話していた。アレが……月下のオオカミの面々なのではないだろうか。


「みんなも状況は知っていると思う。僕達は迅速に攻略を進めなければ、あと一週間で命が尽きる」


 そう演説するハリスさんの表情は、不安なんかを感じさせない、誰かを引っ張るリーダーの顔だ。

 その演説をして向かおうとする場所が、かつての攻略組みがほぼ全壊した……いや、もしかするとギルドメンバーが死んでしまった西フィールドよりもさらに強い北フィールドだというのに。

 それでも彼は俺達を引っ張る演説をしていく。

 ハリスさんは……リーダーとしての器を持った人だった。


「一階層を攻略するには、各プレイヤーのレベルの底上げをしなくてはならない。だがしかし、東、および西フィールドでは、今現在上層階のモンスターが徘徊している。出会ってしまえば、ほぼ終わり。故にあまりにリスクが高く、加えて通常モンスターの経験値はあまり期待できない。少なくとも、僕達は北フィールドでレベルを上げようと思う」


「だ、だけど、俺達のレベルじゃ、北フィールドの敵なんか相手にできねえぞ!?」


 群集の中の誰かが、そんな声を上げた。確かにレベル2、3の俺達では、背伸びして西が限度だ。


「確かにその通りだ。だからまずは攻略組み一名を中心として、四人パーティを計七組作る。今の攻略組みのレベルなら、北フィールドの門周辺ならソロでも十分勝てる。まあレベル差があるパーティでは、レベルの低いプレイヤーが所得できる経験値は減少するけど、それでも西フィールドで戦うよりも効率はずっといい。そうしてある程度強くなったプレイヤーを中心に、さらにパーティを作る。そうしてねずみ算式に全員のレベルを底上げしていくんだ」


 まあ妥当な方法だとは思う。

 だけども……それでもきっと、あの値には到達しえない。


「ちょっと待ってくれ。それで俺達は、北フィールドで戦える安全マージンまでたどり着けるのか?」


 そう、安全マージン。

 そのフィールドで、安全にモンスターを狩る事ができるレベルの値。

 たとえばレベル2、3だと、弱き者の残骨あたりが安全に倒せる圏内。すなわち安全マージンと言えるだろう。

 デスゲームと化したこのSLOで、安全マージンが取れていない場所での戦いは、即ち一歩間違えれば死に至る状況を意味する。だけど……北フィールドを安全に戦えるほどの安全マージンは、一体どれだけなのだろうか。


「……無理だ」


 ハリスさんは言い辛そうにそう言って続ける。


「正直に言って、たった一週間のタイムリミット……いや、ある程度水かさが増えたら、通常のフィールドで戦う事もままならない事を考えると、もっと短い。その期間で安全マージンに到達することは、無理だ」


 そう……無理だろう。

 もっとも、攻略組み数名だけを届かせる事なら可能なのかもしれないが、それではおそらくボスを倒すこともできないだろうし。


「じゃ、じゃあ博打みたいな物じゃねえかよ!」


 どこかの誰かが野次を飛ばした。


「そうだよ……僕達がやろうとしていることは、博打だ。それは理解してほしい」


 というか……今の野次を飛ばした奴は、そんな事も分かっていなかったのだろうか。

 第一層を、たった一週間で、しかもこの低レベルのプレイヤー達で攻略する。そんな事を安全にできるのなら、俺達は今此処に立っていない。きっともっと上の層に居るはずだ。


「僕のこの作戦は、あくまでその博打の勝率を上げるものだ。きっと死人だって出るさ……だけど、こうでもしないと、全員が確実に死んでしまう状況なんだ。それだけは理解してくれ」


 そういうと、ハリスさんは一泊空けてから、感情をあらわにするように、俺達にこう叫ぶ。


「もう一度言う! 正直死人は出る! 確実に勝てるような博打じゃない! でも今やらないといけないんだ! だから皆に問う! 武器を取る勇気がある奴は、手を上げてくれ!」


 その言葉に……その場に居た九割超が手を上げた。中には咆哮する物だっていた。

 もちろん俺達四人も、それぞれ手を上げる。

 もうコレは、引ける様な状況ではないんだ……戦わなければいけないんだ。

 チカは言った。みんな必死だと。

 そう……俺達は必死なんだ。

 もう停滞していられない。この場に居るほぼ全員が……そうして前へと進みだす。

 今回もあまり話が進みませんでした。

 次回辺りからは、今度こそ話を大きく進めますので、またよろしくお願いします。


 ……もっとペース上げられるよう、頑張ります。

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