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バジルさんが、気絶したアドニスさんを後ろから羽交い締めにして、容赦なく喝を入れました。
「せいっ!」
ボグッ!!と鈍い音が荒野に響き渡ります。
「ガハッ……!? ゲホッ、ゲホッ……!」
「あ、あのアドニスさん……だ、大丈夫ですか……?」
「だ、大丈夫だよ、モヤシちゃん。……それにしても、凄い技だったね? まさかジェットバットで締め技を使うなんて、思いつきもしなかったよ。……さすがは僕らの魔女で、最高の参謀だね!」
「むふん! そうです! 私は凄腕の魔女で参謀なのです! ふふん!」
(褒められるのは大変気持ちが良いので、もっともっと欲しいです!)
「お?『もっと褒めろ』って、顔に全力で出てるぞ?」
「え? あ? え……エスパー!?」
「ガハハ! どれだけ一緒に旅してきたと思ってるんだよ?」
ボスッとガサツですが、彼なりに最低限の力加減をして、ガストンさんの巨大な手が私の頭をわしゃわしゃと撫でてくれます。
「はっはっは! 雨降ってバルサルバ(腹圧法)極まる。ですな?」
バジルさんがあまり上手くないことわざで、綺麗に締めようとしています。
「ま、まぁ……今回は私もちょっとやりすぎました。職権乱用で軍隊まで動かしちゃって……ご、ごめんなさい! でも、泣いて絞めてすごくスッキリしたから今回は許してあげます!」
私の言葉に、ほっと安堵の息を漏らす三匹のマッスルモンスター達。
「ですが! 皆さんとの旅で少しは筋肉がついたとはいえ、私はどこからどう見ても華奢な乙女ですからね!? 今度からは、もう少しだけ私の【弱さ】というものを認識してくださいね!? じゃないと……」
「「「……じゃないと……!?」」」
「今度は筋肉の女神様に直接泣きついて、皆さんの筋肉をぜーんぶ没収してもらいますからねーーーー!!!」
「「「そ、それだけはご勘弁をーーーーーっっ!!!???」」」
三人の絶望に満ちた叫び声が、静まり返った荒野にいつまでも木霊しました。
◇
「さぁ、今度こそアドニスさんの故郷、『マッスルキングダム』へ向けて出発です! ……あ! 道端に落ちている野良プロテインとかを拾おうとしたら、即座に絞め落としますからね?」
「「「は、はいっ……!」」」
「よし、じゃあ出発です!」
私は荷車の荷物の上へひょいとよじ登り、すっかり慣れ親しんだ定位置(重し)につきます。
……まぁ、わかっているんです。
この脳筋達、基本的にハードすぎるトレーニングのせいで脳に酸素が全然回っていなくて、こんな約束なんて三歩も歩けばすぐ忘れてしまうような、どうしようもない愛すべき筋肉バカだってことを。
お父さん、お母さん。……私達の破天荒な旅は、まだまだ終わりそうにありません!




