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【なろう歴史月間77位!/日間18位】雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記― 【完結済/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
第五章「雷、還る」

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最終話 雷は消えず

柳川の春が——来た。

花宗川が——光っている。

春の日差しが、水面を白く染めていた。

葦の新芽が——岸に、顔を出している。

柳の枝が——緑になっていた。

宗茂は、縁側に——座っていた。

島原から——帰ってきた。

戦は——終わった。

最後の戦が——終わった。

体が、重かった。

島原の陣で——無理をした。

七十を過ぎた体で——

戦場に立ち続けた。

膝が——言うことを聞かなくなっていた。

腰が——常に、痛んだ。

しかし——

縁側から、川は——見えた。

それで、十分だった。

「……流れているな」

小さく、言う。

毎朝——こう言う。

「今日も、流れているな」

十時が——茶を持ってくる。

「殿——」

「ああ」

「今日は——顔色が」

「大事ない」

「しかし——」

「大事ないと——言っている」

十時は——

しばらく、宗茂を見ていた。

「……そうですか」

静かに、言う。

その目が——何かを、知っていた。

茶を、受け取る。

温かかった。

両手で——椀を包む。

「……温かいな」

「はい」

「誾千代も——こうして、白湯を持っていた」

「はい」

「肥後で——」

「はい」

「こうして——椀を包んでいた」

「……はい」

「水は、待っています、と——書いた日に」

川が——流れる。

春風が——吹く。

鎮幸が——庭に来る。

その足が——さらに、遅くなっていた。

「殿」

「鎮幸」

「今日も——川を見ていますか」

「ああ」

「……変わりませんね」

「ああ」

「俺たちも——変わりませんね」

「そうだな」

鎮幸が——縁側に、腰を下ろす。

老いた二人が——川を見る。

「鎮幸」

「はい」

「お前は——立花に仕えて、何年になる」

鎮幸が——少し考える。

「……道雪殿の頃から数えれば」

「ああ」

「五十年——を超えます」

「そうか」

「はい」

「長かったな」

「長かった——ですね」

一拍。

「しかし——」

「ああ」

「短かった——気もします」

「そうだな」

「あっという間に——」

「ああ」

「ここまで、来てしまいました」

川が——流れる。

二人は——黙っていた。

その沈黙が——

温かかった。

「鎮幸」

「はい」

「一つ——聞く」

「なんですか」

「後悔は——あるか」

鎮幸は——

川を、見る。

しばらく——黙っていた。

「……ありません」

静かに、言う。

「本当か」

「はい」

「関ヶ原で——負けた」

「はい」

「柳川を——失った」

「はい」

「浪人に——なった」

「はい」

「それでも——」

「ありません」

一拍。

「殿と——共に来た」

「ああ」

「それだけで——十分です」

宗茂は——

川を、見る。

「……俺も——後悔はない」

「はい」

「義のために——動いた」

「はい」

「全部——義のために」

「はい」

「それだけだ」

春風が——吹く。

川面が——さざ波立つ。

その夜。

宗茂は——床に就いた。

体が——重かった。

目を、閉じる。

眠れなかった。

しかし——

苦しくは、なかった。

ただ——

色々なことが、浮かんでくる。

道雪の顔が——浮かぶ。

輿に乗ったまま、戦場を駆けた男。

落雷で足を失っても——槍を手放さなかった男。

「宗茂よ。強さとは、守ることだ」

紹運の顔が——浮かぶ。

七百で三万を相手に、微笑んで死んでいった男。

岩屋城の炎の中で——宗茂に向かって言った言葉。

「お前は、生きよ」

誾千代の顔が——浮かぶ。

泣かない目。

揺れない姿勢。

几帳面な文字。

「水は、待っています」

三人が——

宗茂を、見ていた。

「……生きました」

宗茂は、言う。

目を閉じたまま。

「道雪殿」

「雷は——消えませんでした」

「紹運殿」

「言われた通りに——生きました」

「誾千代」

「帰ってきました——約束した通りに」

三人が——

微笑んでいる気がした。

「……もうすぐ——そちらへ行きます」

小さく、言う。

「待っていてくれますか」

答えは——返らない。

しかし——

胸の中が、満ちていた。

夜明け前。

十時が——部屋に来る。

「殿——」

答えが——ない。

「殿」

もう一度、呼ぶ。

宗茂は——

目を閉じたまま、横たわっていた。

その顔が——

穏やかだった。

眠っているような顔。

しかし——

その息が、止まっていた。

慶長元年——ではない。

寛永二十年。

立花宗茂——七十三歳。

柳川の地で——最期を迎えた。

十時は——

しばらく、宗茂の顔を——見ていた。

「……殿」

小さく、呼ぶ。

答えは——ない。

「……お疲れ様でした」

やがて——

鎮幸が、来る。

部屋に入る。

宗茂の顔を——見る。

しばらく——

黙っていた。

「……逝ったか」

低く、言う。

「はい」

「……そうか」

「はい」

「……眠るような顔だな」

「はい」

「穏やかな——」

「はい」

「立花らしい——最期だ」

鎮幸は——

宗茂の前に、座る。

頭を——下げる。

「……道雪殿のところへ——行ったか」

小さく、言う。

「紹運殿のところへも——」

「誾千代様のところへも——」

一拍。

「よかった」

縁側から——

春の風が、入ってくる。

花宗川の——水音が、聞こえる。

川が——流れている。

変わらず。

十時が、縁側を——見る。

「……水は」

小さく、言う。

「流れていますね」

「ああ」

鎮幸が、答える。

「変わらず——」

「ああ」

「誾千代様が——待っていた水が」

「ああ」

「殿が——帰ってきた水が」

「ああ」

「今も——流れている」

二人は——

しばらく、川を見ていた。

「鎮幸」

十時が、言う。

「なんだ」

「立花は——続きますね」

「ああ」

「殿が——逝っても」

「ああ」

「続きます」

「ああ」

「雷は——消えない」

「……ああ」

「道雪殿の雷が——」

「ああ」

「宗茂殿の中に——あった」

「ああ」

「そして——立花が続く限り」

「ああ」

「雷は——消えない」

春風が——吹く。

花宗川が——揺れる。

柳の枝が——大きく、揺れる。

まるで——

雷神が、答えているように。

立花の旗が——

春の空の下に、立っていた。

この物語を——結ぶ。

雷神と恐れられた男、立花道雪に拾われた少年は。

二人の父の義を受け継ぎ。

乱世を駆け抜け。

敗れても。

失っても。

前を向き続けた。

西軍大名で——唯一、旧領へ帰った男。

戦国最後の——名将と呼ばれた男。

その男が——柳川で眠る。

花宗川のほとりで。

水の音を——聞きながら。

水は——流れている。

雷は——消えていない。

立花宗茂——

その名は、残る。

雷は——

消えず。

——了——

宗茂の物語を最後まで見届けていただき、心より感謝いたします。

本作のような『逆境からの再起』がお好きな方へ、現在、異世界戦記**『魔剣の王女』**を毎日更新中です。

第50話にて衝撃の覚醒シーン(挿絵あり)を公開したばかりです。宗茂とはまた違う、魂を削る戦記をぜひ覗いてみてください!

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【2日で500PV突破!】西国無双・立花宗茂、その圧倒的武勇と義理を貫いた生涯を描く本格戦記。雷神・道雪に拾われた少年が、乱世を駆け抜ける!
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