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雷に打たれた軍神に拾われた少年、やがて西国無双になる ―立花宗茂戦記― 【完結済/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
第四章「義の人」

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第44話 西軍へ

第44話の位置づけ


43話で「勝敗に拘らず」の覚悟を固めました。44話は——伊勢方面での戦いと、大津城へ向かう転換点。


宗茂が伊勢で動き、やがて大津城攻めへ転じる。関ヶ原本戦が近づいている空気を漂わせながら、宗茂が「間に合わないかもしれない」という予感を感じ始める話。


第44話「西軍へ」


九月。


伊勢の風は——冷たかった。


立花の旗が、進む。


前を行くのは——宗茂。


後ろに——二千五百の兵。



「殿」


十時が、地図を広げる。


「安濃津城です」


「守将は」


「富田信高」


「兵数は」


「およそ二千」


宗茂は、地図を見る。


城の位置。川の流れ。道の幅。


「……囲める」


「はい」


「毛利勢と——合流してから動く」


「承知」



毛利元康の旗が、見えてくる。


宗義智。筑紫広門。


西軍の将たちが、集まっている。


宗茂は、その顔を——一人ずつ見る。


覚悟の色が——それぞれ、違う。


「……様々だな」


小さく、呟く。



安濃津城。


攻城、始まる。


立花勢が、城壁へ向かう。


「怯むな!」


宗茂が、先頭に立つ。


銃声。矢。


だが——


城方の抵抗は、激しかった。


「……手強い」


十時が、隣で言う。


「ああ」


「力押しでは——」


「分かっている」



引く。


陣に戻る。


地図を、広げる。


「水攻めができるか」


十時が、川を見る。


「……できます」


「やれ」


「兵糧は——どのくらい持ちますか」


「長くはかけられない」


一拍。


「関ヶ原が——近い」



十時が、宗茂を見る。


「……本戦に、間に合いますか」


宗茂は、答えない。


地図を、見たまま。


「今は——目の前の城だ」



水攻めの準備。


川の流れを変える。


水が、城下へ向かう。


城方が——動揺する。



やがて。


使者が、城から出てくる。


「……降伏します」


安濃津城、陥落。



だが——


その夜。


報せが来た。


「大津城の京極高次——東軍に寝返り、籠城」



宗茂は、報せを聞く。


地図を、見る。


大津。


琵琶湖のほとり。


京への——要衝。


「……ここを抑えなければ」


十時が、言う。


「西軍の背後が——」


「危うくなる」


「はい」


「関ヶ原への道も——」


「塞がれます」



宗茂は、立ち上がる。


「動く」


「大津へ、ですか」


「ああ」


十時が、地図を見る。


「関ヶ原本戦は——」


「分かっている」


「間に合わないかもしれません」


「……分かっている」



一拍。


「だが——」


宗茂は、地図を閉じる。


「目の前の義を——果たす」


「それだけですか」


「それだけだ」



夜。


野営地。


焚き火の前。


宗茂は、備前長光を——手入れする。


「……父上」


小さく、呟く。


「関ヶ原に——間に合わないかもしれない」


風が、吹く。


「だが——」


一拍。


「やるべきことを、やる」


「それだけだ」



十時が、隣に来る。


「殿」


「なんだ」


「……柳川から、書状が来ました」


「誾千代から、か」


「はい」



開く。


几帳面な文字が、並ぶ。


「増時から聞きました。勝敗に拘らず——とのこと」



それだけだった。


批判も。心配も。なかった。



宗茂は——


その文字を、長い間、見ていた。


「……分かっているんだな」


小さく、笑う。


「いつも——分かっている」



十時が、隣で言う。


「何と、書いてありましたか」


「……勝敗に拘らず、と」


「奥方が——ですか」


「ああ」


十時は、しばらく——空を見る。


「……立花の夫婦は」


「なんだ」


「似ていますね」


「そうか」


「はい」


「……そうかもしれない」



翌朝。


立花の旗が、動く。


大津へ。


伊勢の道を——北へ。



関ヶ原が——近づいていた。


だが——


宗茂は、その方角を見ない。


見るべきものは——


目の前にある。



大津城が——待っていた。



次回、第45話「大津城」——京極高次との攻防、始まる。

この話で一番書きたかったのは、誾千代の手紙です。


「勝敗に拘らず——とのこと」


批判も心配も一切ない。ただ——夫の選択を、そのまま受け取っている。この一文だけで、誾千代という人間の全てが出ていると思います。「立花の夫婦は似ていますね」という十時の言葉が、その答えです。


関ヶ原に間に合わないという運命の皮肉も、この話で仕込みました。宗茂は分かっている。分かった上で、目の前の義を選ぶ。この男の一貫性が、この物語の背骨です。


次の45話は大津城攻めです。道雪の「早込」戦術、矢文による高次の助命——宗茂の「武」だけでなく「義」が戦場に現れる回になります。



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史実の武勇を描く本作とは別に、魔剣を手に戦う王女の復讐劇も始めました。

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