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まさかのニキビ問題が再発生で豚剣が駄目なら犬牙で潰せば良いじゃ無いの?


71日目 夜明け 7番迷宮前 



 失敗した。私達はみんなから信頼されて全てを任されて一任される程の栄誉を賜った、辺境を裏切り裏切りの街のために働いていた私達シノ一族がオムイ様からも辺境の目にして宝とまで言って頂き、更には王女様からも「頼む」とお願いされてしまった。


 一族の悲願を果たし有り余る栄誉に身を戦慄かせながらみんな一生懸命に働いた、恩返しだってまだまだ済んでなんていない。


 なのに私達は失敗してしまった。


 みんなが信じて任せてくれたのに、その為に遥さんは安全の為にって高価な魔石手榴弾を有りっ丈私達に渡してくれたのに。絶対に失敗しちゃいけなかったのに、失敗してしまった。


 監視は残してあった、定時連絡も問題はなかった、なのに氾濫を起こしている。


 5つ目に注意が行き過ぎてたんだろうか、もう無いって油断してたんだろうか、何が失敗だったんだろう? でもそんな事はどうでも良い、狼煙を上げて知らせる。手遅れでも知らせないと大変な事になる、そしてこの氾濫は味方の逃げ道を塞ぐ。裏切り者の私達に許しを与え重用して下さったオムイ様達が、身分すら無い私達に声をかけて下さりお褒めの言葉も頂いた王女様たちが、いつも私に優しくしてくれる遥さんの仲間のお姉さん達が、逃げ場を失って挟み撃ちにされてしまう、そして我が一族の救い主で私の命の恩人の遥さんは今もたった1人で戦っているのに完全に孤立したまま氾濫スタンピードに襲われてしまう、それだけは絶対に駄目だ。


 「狼煙上がりました。…………赤と黒を2本、上がりました」


 2か所も見逃した、致命的だ。これは私達の失策で私達の責任だ、私達に「辺境の目」と言ってくださったオムイ様、「情報こそが武器なんだよ? 武力なんて他の脳筋にでも任せれば良いんだよ、まあ危ないからこれ装備と武器? あと新製品魔力手榴弾も付けるから委員長達には大人買い黙っててね?」って武器も装備も身を守る為に過剰なまでの支度をしてくれた遥さん、その信頼を裏切った。裏切り者のシノ一族はみんなが命を預けてくれた信頼まで裏切ってしまった、だから私達の責任だ。


 「皆に装備させている魔石閃光爆音粘着状態異常付き爆発手榴弾を集めて下さい。……氾濫スタンピードを足止めします、その間に一番近いアンジェリカ様に女子会組に合流して辺境へ引くように伝えて下さい。これは命令です、お願いします。」


 「「「「お嬢様!」」」」


 「きっと向こうを頭首である父が止めていてくれるはずです、オムイ様と王女様も撤退してきます。時間が在りません、早く!」


 「「「「……はい」」」」


 そして迷宮が震えている、迷宮の入り口が戦慄くように震えている。もうじきここから魔物達が溢れ出し氾濫スタンピードが始まる、私にできる事は腕が捥げるまで遥さんが私達の安全の為に作ってくれた魔石手榴弾を投げ込み続ける事だけだ。


 遥さんが私達を信じて持たせてくれた、だから最後の一個まで投げ込んで氾濫スタンピードを遅らせる……腕捥げそう? 一体遥さんはどれだけの敵から私達を守る気だったんだろう、こっちの部隊の魔石手榴弾をかき集めただけで私の後ろに小山が出来ている。これを全部投げ込むと私の腕が捥げるか魔物さんが全滅するんじゃ無いだろうか?


 そして気配が動くと同時に投げ込む、魔石閃光爆音粘着状態異常付き爆発手榴弾は遥さん御手製の超心配性過剰護身兵器だ。投げ込むと閃光と爆音で戦闘不能になった魔物が粘着で接着されて状態異常にもなって倒れている所を後続の魔物達に踏み潰された所で爆発して更に粘着で接着されてるところに閃光と爆音で麻痺してまた爆発に巻き込まれる……って言う護身兵器なんだそうだ?


 迷宮の氾濫スタンピードを殲滅できる護身用兵器って護り過ぎにも程が有るけれど、これでみんなが助かる、辺境が助かる。きっと看板娘ちゃんも助かってくれるはず。





 爆音と閃光で耳が聴こえなくなり目も霞んで来た、もう腕が重くって爪も剥げて疲れちゃった。


 でも最後の一個まで投げるんだ、だってこれは遥さんから貰ったもの。


 遥さんからは沢山沢山一杯のものを貰ったんだ、この超心配性な過剰護身兵器だって身に付けている高価な装備だって、一族がオムイ様のために働けるのだって、裏切り者の一族がみんなから信用して貰って優しくして貰えるのだって、一杯食べた美味しいご飯も甘美味しいお菓子もしょっぱ美味しいおやつだって、私が今も笑っていられるのだって私の命だって何もかもが遥さんに貰ったものだ、私の宝物だ! だから絶対に無駄になんてしない、遥さんが私達を護ろうって作ったこの武器で最後までみんなを守る。失敗しちゃった私達はきっと許される、でも私達は許せない、だってこんなに幸せになって幸せにして貰ってみんなの幸せを守れない何て許せないの。




 前もこんな気分で遥さんに頭撫でて貰った事を思い出していたな~。


 魔石手榴弾はあと少しだけど入口は粘着液でベトベトで魔物の屍も溜まってバリケードになっている、中で騒ぎが感じられるから状態異常効果で錯乱した魔物が中で暴れて邪魔してくれている。もうみんな逃げられたかな? もう大丈夫なのかな? 疲れちゃった、目も見えなくなってきたし? でも未だ魔石手榴弾が残ってる、まだ魔物は尽きていない。




 もうどのくらい時間が経ったんだろう? 魔石手榴弾はあと3つ、きっともう何百個も投げたんだ。もう手も腕も感覚が無くてとっても疲れてしまった、でも後3つ、其れで御終い。


 前回はもう駄目だ最期に遥さんに頭を撫でて欲しかったな~って思ってたら本当に撫でてもらえた。あの時は吃驚したな~。


 でももう駄目だ、魔石手榴弾はあと3つ有るけど階層主には効いていないみたい。


 きっともう一つの迷宮でもお父さんが迷宮の氾濫スタンピードを止めているだろう、みんな逃げられたかな? もう駄目でも良いのかな?


 最期の力を振り絞って魔石手榴弾を3つ共投げてみたけどやっぱり倒せなかった。でももう全部やり遂げたんだ、出来る事は全部やれたんだ。


 やっぱり最期になると遥さんにに頭を撫でて欲しくなる。最後まで頑張ったんだからご褒美が欲しくなる、


 「私最期まで頑張りました、頭撫でて欲しいな……遥さん。さような……あがっ?」


 撫でられないで叩かれました! 不当な扱いには断固とした抗議をしたいけど……したいけど?


 巨大な狼の階層主が「キャン、キャン」って鳴いて蹲っている、周りに集まっていた犬や狼の魔物達も「キャン、キャン」って鳴いてもがいている。


 倒れ身悶える狼たちの中心で遥さんが鼻を摘まんで立っている。


 ズルい。私はもう手が動かなくって超酸っぱいのに我慢してるのに自分だけちゃっかり鼻を摘まんでる!


 「おひさ~、って言うか久しぶりにおっさん以外の生き物を発見で心からお喜美申し上げようかと思ったら何でまた死にかかってるの? またニキビ出来たの? だからワンちゃんの牙で潰したら不衛生なんだよ、オークの剣も駄目だけどだからって何でワンちゃんに噛まれるの? あのワンちゃんに頭齧られたら痛いんだよ? 大きいからきっとビッチ・リーダーに齧られるよりも痛い……いや、あっちの方が狂暴そうだ! あれはキャンキャン鳴かないでギャンギャン齧るんだよ! うん、コボたちもアッチの方が怖いって言ってたよ! いや、聞いて無いけど? 多分? みたいな?」


 そう言いながら頭を撫でてくれる、また遥さんだった。いつもいつも遥さんでやっぱり遥さんだった。私はやっぱり泣いちゃって、周りはずっと鳴いちゃってた。きゃんきゃん?


 その向こうは美しい幻惑の殺戮の舞踏会。倒れ込む狼たちの大群の中で舞い踊る妖艶な踊り子が狂乱の舞を舞う、未だ迷宮から氾濫し続ける大量の魔物達が微塵切りに切り刻まれて血と肉と惨劇と悲劇に分解されて行く。死の中を舞い踊る美しい死に神の舞踏、舞い廻る度に無数の銀線が踊り魔物を穿ち刻んでいく、悶え狂う様に踊り狂喜乱舞する様に舞う度に膨大な数の魔物達が死に踊る。


 螺旋を描きながら旋回し魔物達を切り刻み切り散らす、触れる事も叶わずに魔物達は舞散る様に吹き散って逝く。


 綺麗だった。残酷な迄に壮麗で華麗な迄に地獄だった、死の舞踏。


 全身から無数の銀の鎖を振り撒き踊り手に持った双剣の三日月刀シミターで切り払う、もう迷宮の氾濫スタンピードは魔物の美しい処刑の演武に変わっている。魔物の氾濫が魔物の集団自殺になっている。強い、誰だろう?


 「あ~そこの踊り子さんって言うか踊りっ娘さん? って言うか助っ人さんは強制服従なのに報酬はお菓子で殺る気満々なもうそれって首輪も首飾りも関係無くてクレープ食べたいだけの素敵な衣装のお姉さん? なんだか超余裕な楽勝展開っぽいけどここ任せても良いかな~? 多分もう一か所お莫迦なおっさんが一人で手榴弾抱えて頑張ってるみたいなんだけどそろそろやばい、って言うかまたボンバーおっさんでおっさんは爆発だ? いや、爆破したいんだけどおっさんじゃ無くて魔物を破壊って言うか破滅って言うか排除なんだけど行って来ても良いかな~? みたいな?」


 「クレープ 追加 了承?」


 お話がまとまった様だ、お父さんを助けに行ってくれる、きっとまだ一人で戦っている。でも、迷宮から氾濫して溢れ返る魔物の大群の前で2人でクレープの交渉中だ。魔物達は面倒そうに屠られ消えて塵になって行く、遥さんはともかくあのお姉さんは強過ぎる! 遥さんとクレープの交渉をしながら面倒そうに右手だけブンブン降り回している、そこから伸びる幾千の銀の鎖が舞い荒れ魔物を斬り散らしてるけど2人とも見ても無い、クレープは5個追加でまとまりそうだけどトッピングが未だ決裂中みたいだ。


 銀色の鎖で編み込まれた扇情的な踊り子さん、脚もお腹も肩も剥き出しな妖艶な美人さん、もう美人なんて言葉では足りない壮絶な美女が艶やかな姿態を振り回してクレープ欲しさに地団駄踏んでる? 


 そして突然首根っこを掴まれたかと思うと私は空の上にいた? この残酷な世界はとっても綺麗だった。


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