表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

シナリオ1 02船上にて:a

遅くなりまして失礼いたしました。

今回から俯瞰した見方になります。

楽しんでいけたら幸いです。

さて、申し訳ない事だが物語りは少し飛ぶ。

"彼"――いや、"コウガ・サブロウ"が故郷を離れ旅に出てから凡そ二週間ほどたった。


彼は今―――海に居る。


とは言え泳いでいる訳でも、ましてやいかだ等で海を渡ろうとしている訳ではない。

・・・・・・まぁ、当初はそんな馬鹿げた事を考えていたようだが"なんやかんや"が有り大人しく船で大陸に向かう事に下らしい。

まぁ、その"なんやかんや"はいずれ語る機会があるだろう。


とりあえずこの二週間は嵐にも会わず、海賊にも合わず、『海魔かいま』にも合わないで順調な航海を続けていた。

彼の乗り込んだ船は『皇国』発、『都市連合』における東最大の海洋都市『シーリス』着の交易船。

二十日ほどの航海予定だったんだが順調に行き過ぎてあと一日二日で目的地に付く事になった。


天気は快晴。海鳥が五月蝿いほどに鳴き、甲板では水夫たちがそれぞれの作業をこなしている。

そんな中に彼の姿はあった。


『う~んっ!・・・・・・・・・はぁ。体がバキバキ鳴っておる。

ここ数日あまり体を動かせてはおらんからの。』


照りつける様な日差しの中大きく伸びをする。

体からはバキバキと間接の鳴る音が聞こえてきた。

何日も船の上で満足に動かす事も出来なかったんだ、軽い運動不足に成っていても仕方の無い事だろう。


『気晴らしといえばこの広大な海を眺める事ぐらいじゃからの。

いや、初めての海だし初めは見てても飽きんかったが・・・・・・こう何日も続くとのぅ。』


『甲板では自由にして良いと言われたが流石に思いっきり体を動かす訳にはいかんからの。

まぁ、せめて体と間接をを解して動きを悪くさせないようにしなければ。

・・・・・・いっそ何か仕事を任せてくれると良い運動にも成るんじゃがのぅ。』


まぁ、甲板に出れるといってもそこには水夫たちが作業をしている為満足な広さも無い。

当然ながら満足に体を動かす事もできなかったのだろう。

そのせいか、どうやら体を動かせない事に不満が溜まっているんだろう。


とはいえ、戦士として体を鈍らせるわけには行かないと思っているのか

邪魔に成らない所で体操などやある程度の型をを行い勘を鈍らせないようにしている。

一通り済んだのか、今度は甲板に座り瞑想を開始したようだ。

そんなコウガに影が差した。


「よう、坊主元気してるか!?」


そんな声が掛けられ、コウガは目を開け声の人物を確認する。

その人物はかなりの大柄で2m程は有りそうだ。体も良く鍛えられていて小麦色に焼けた健康的な肌をしている。

そんな体を提督服で包み、頭にはキャプテンハットを被っている。


「オぉ!船長殿、オ早うゴザイます。

・・・・・・体ヲ動かセナイのは不満デスが、十分元気デス。」


どうも大陸の言葉は彼にしてみると難しいのか、いささかイントネーションが狂っている。

まぁ、話し慣れていないだけかも知れないから会話を続けていけば違和感は取れるんじゃないかな?


聞く限りその人物はこの船の船長のようだ。

船長はコウガの話しを聞いて少しばつが悪そうにして


「・・・そりゃぁすまねぇな。とは言え客人に仕事をさせる訳にも行かんのでね。

まぁ、航行も順調だしあと2、3日位の辛抱だ。悪いが我慢してくれ。」


と申し訳なく言う


「まぁ、ソうデショウね。

デはもう少シ此処で体を動カシてまス。」


半ば予想通りの事だったのか、それほど残念そうにはしないでまた屈伸などの体操を再開した。


「まぁ、仕方無ぇよな。幸い此処なら其処まで迷惑にはならんだろ。

―――いや、どうせだ少し気分転換させてやるか。

ちょっとばかし特別扱いしちまうが、まぁ良いだろう。」


船長はコウガから目を離しメインマスト、正しくはメインマストの上の見張り台に目を向ける。

そしてまたコウガに目を向けると


「坊主!体を思いっきり動かさせてやる事はできんが、ちょっとばかし気分転換をさせてやることは出来るぞ。」


『ホントですかの!?』


ついつい本国の言葉が出てしまう。


「いや、分からないからなお前の言葉。」


船長はコウガの咄嗟に出た言葉と食い付きに戸惑っているみたいだ。


「…・・・こレは失礼を。改メて、ホンとデスか。是非オ願いシたいデス。」


「お、おう。まぁ、元気に成ったんなら良いや。

―――こっちだ、付いて来な。」


船長の誘いを聞いたコウガは屈伸の途中で勢い良く顔を上げ船長を見上げる。

誘いに飛び付くように急に元気になったコウガに若干ながら引きながら船長はコウガを引き連れてメインマストの支柱の下まで歩いていく。


「おう、此処だ此処。そこにフックがあるだろう?それに片足を掛けて縄をしっかり持ってろ。」


「フック?・・・あァ、コれデスね。了解デす、足を掛けテ両手で掴ンで。

でモ、何でマタこンな事を?」


支柱の側まで来た船長は上の見張り台から垂れている縄とその先端にあるフックを指して乗るようにコウガに促した。

コウガは少し疑問に思いながらも船長に言われたように右足をフックに掛け、縄を両腕でしっかりと持った。


「良し良し持ったな。それじゃ、後は此処を踏んでっと。」


コウガの準備が整ったのを確認した船長は足元にある突起を思いっきり踏む。

すると


――――――カチッ!


と言う音が鳴り


「・・・ん?――――――おわぁ!?なんじゃぁぁぁあ!?」


コウガの体が急激に上に引っ張られる。

それはもう「バビューーン」といた擬音が見事に聞こえてきそうなほどだよ。

その際、運が悪かったのかフックに掛けていたうっかり足が外れてしまった。

更に運が悪い事に背負っていた荷物に上手い事引っかかりそのまま引き上げられてしまった。

フックが途中で外れず頂点まで引き上げられたのはある意味運が良かったのだろうか。

ただ、急に引き上げられたせいなのか僅かな時間意識を飛ばしてしまったようだ。


「・・・い!だ・・・・・・じょう・・・ぶ・・・か?しっかりしろ!」


「―――ハ!?」


掛けられた声に意識を取り戻し目に映ったものは観測手なのか望遠鏡を持った青年だった。

その男はコウガが急に上がってきた事とその格好に驚いているようでしきりに大丈夫か声を掛ける。


「お前さん、大丈夫か?急に上がってきたしその格好、まるで猫みたいだぜ。

どうだ?登って切れるか?」


観測手は心配そうに声を掛ける。

フックは観測台の足元辺りにしか来ておらずよじ登るしか手は無い。


「ご迷惑おカケしまス。少シ意識が呆けテ居たようデス。

アと、助けテクださイ。」


ばつが悪そうに苦笑いを浮かべコウガは観測手の問いに答える。

観測手の青年は同じく苦笑を浮かべながら手を差し出し、


「ハハハ、しょうがねぇな。ほらこの手につかまりな。」


「重ネ重ね申シ訳ないデス。」


コウガは観測手の手を取って何とか観測台に引き上げて貰った。

荷物の方に引っかかったフックも多少時間は掛かったが外す事が出来た。すると―――。


「おぉぉぉい!?坊主ぅ!大丈夫かぁ!?」


その様子を呆然と見ていた船長が心配そうに声を掛けてきた。


「キャプテン、大丈夫ッすよ!何とか観測台に立たせました!」


心配そうにしていた船長に観測手はコウガが無事であると報告した。

その言葉に船長はホッとした顔をし、


「おお!そいつは良かった!

どうだ坊主!?そこからの眺めは最高だろう?」


と、問いかけてきた。

聞かれたコウガはというと、その言葉を聞いているのかいないのか海をジッと見ていた。

何処までも、何処までも続いていくようなまるで果ての無い様なその光景ははじめてみたコウガには圧巻の一言だった。


「船長!どうやら海に見入っているみたいですよ!」


「そうかそうか!そりゃぁ良かった!」


そんな船長と観測手の会話も聞こえてきた気がしたがコウガはそのまま海を見ていた。



『(凄い。海とは―――いや、世界とはこんなにも広いのだな。

静かで荘厳で・・・・・・・・・?静か?)』


その時ふとコウガは気が付く。今は波の音しか聞こえないことに。

先ほどまで煩いほど鳴いていた海鳥の声が聞こえなくなっている事に。


『(あれ程までに五月蝿うるさかった海鳥たちは何処に?

・・・・・・・・・お?あそこに集まって居るな。)』


周囲を見回し船の進路上に海鳥たちが不自然に集まっているのが見える。

そして――――――海面に黒く大きな影が映っていた。


「・・・アの?少し尋ネたいのデスが。」


「あん?なんだい?何か聞きたいことでもあるのかい?

此処を降りたいんだったら―――」


自分の知識では判断が付かないと思ったのかコウガは観測手に話しかける。


「イえ違いまス。一つ尋ネたいのデスが・・・。

海鳥があンな感じに集まる事っテ良くあるのデスか?・・・後、ソの下の黒イ影に何か見覚えはあリますカ?」


「―――え?」


コウガが言うが否や観測手は望遠鏡を取り出しコウガの指した方向を見る。

先ほどの影は船に気付いていないのかどんどん近づいてくる。

すると見る見るうちに顔色が悪くなり焦っているのか慌てた様子で「ヤバイ、ヤバイ。」と繰り返す。


「―――大丈夫でスか!?しっかりしテ下さい!」


コウガの強い叱咤に観測手の肩がビクッと跳ねる。

しかしながらその声である程度冷静さを取り戻したのかしっかりした目をコウガに向けた。

その様子を確認してコウガはフックに足を掛ける。


「観測手殿、此レから私は下に降りマス。何か伝えル事はありマスか?」


「すまないが頼めるか?船長にヤバイ奴が近づいているって言ってくれ。」


コウガの問いにさっきよりもしっかりした声で観測手が答える。


「分かりマシた。

――――――所デ此れはドウやって降りルんデスか?」


そんなコウガの台詞に観測手はガクッと膝を崩しそうになるがかろうじて留まった。

苦笑を湛えた顔をしてヤレヤレといった様子だ。

しかしながらほんの少しだけ緊張が解けたのか少しだけ肩の力が抜けているようだ。


「ハハッ、仕方がないな。―――そのままシッカリそのロープを持って、な!」


言うが否や観測手は足元のスイッチを力一杯踏みつける。

すると先ほどとは逆に勢い良く甲板までフックが降りていく。


コウガはロープが完全に甲板に降りる前に跳躍し船長の直ぐ側に降り立った。

船長は得意そうな顔を浮かべ


「よぅ坊主!高ぇ所から景色はどうだった?最っ高だっただろ?」


降り立ったコウガに豪胆に笑いかけた。


「船長殿それ所ではアりまセん!観測手殿からの言付ケが有りマス!」


そんな船長にコウガは顔を曇らせてしかし真剣な光をその目に宿して言う。

真剣な眼差しに船長もニヤケ面を正し今までの船長では考えられないような鋭い眼を向けてきた。

彼も多くの船員の――いや、家族の命を預かっているのだ。嫌が応にも真剣に成らざる負えないのだろう。

その目が続きを話せと促してきている。

コウガもその視線に促されるように船長とシッカリと目を合わせ話し出した。


「・・・・・・先ほど上から海を眺メて見たノですが余りにも静かで。

そレを不審に思い観察してみたのでスが。そしたら海鳥共ガ異様に集まって騒いでイる所がアっての。

・・・それだけナら良かったのデスが、その海面に異様に大きな影が指していマシて。

そレを伝えたら至急船長にも伝えて欲しいと言う事に成リまして。急いで降りて来た訳デス。」


話を聞き船長は視線を観測手に合わせ口を開く。


「話は、分かったちょっと待ってろ。

―――スゥ・・・。ジェクゥトォォオ!?何か判ったかぁぁあ!?」


「キャプテン!こっちに近づいてくる巨影が有ります!

大きさは凡そこの船と同じくらいです!

影の形状と速さから見て―――」


それは轟音、まるで雷鳴のような大声が観測手-ジェクト-に掛けられた。

そしてすぐさま勝るとも劣らない声でジェクトから状況の報告が返された。


「――――――海魔かいま《クラーケン》です!」


その正体を言うが早いか船の両側面から大きな音を立て水柱が上がる。

それは4本の触手とそれより長く太い触手が1本、計5本の触手がそれぞれ海面から生えていた。

更に船首には異常な大きさの影が見える。

それは見た事が有る筈なのに見覚えのない―――或いはその異常性から理解が追いついていないのかもしれない。


それはまさしく超巨大な―――――烏賊だった。

ヒト

その世界に住む交流可能・・・・な人種のことを総称して言う。

蛮族などは亜人デミヒューマンと呼ばれる。


人間種ヒューム

あらゆる種族を合わした平均的なステイタスをしている。

あらゆる種の始まりとも、或いは終着点とも言われる。

あらゆる可能性を内包している為、種族的にはあらゆる適正を持つ。

どの種族でも無いにも拘らずどの種族にも親和性が有る為、まさしくヒトのはざまの種族といえる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ