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第62話:異世界探索-鍵の街-

 肉体が再構成される感覚。

 光が一点に集まる。

 光が物質へと変わり細い糸から太い糸を紡ぎ出していく、糸は繭のように集まる。

 よく見ると糸ではなく血管であり、繭ではなく人の形だった。

 気色悪い血管の人型に筋肉が付き皮膚が付き人間の形に成った所で動けるようになる。

 少し違いが有るとすれば半透明の糸が頭から生えている事ぐらいだ。


「生まれ変わった気分ですね。」

「まあ、この世界に生み出落された様なもんじゃからな。」


 きょろきょろ周りを見ると噴水のある公園のようだ。


「成功じゃな、ここは『鍵の街』『旅の街』『始りの街』『中心の町』などと呼ばれておる。」

「何故そんな名前で呼ばれているのですか。」

「ここの街は全ての中心であり、全てに通じている。」

「俺のいた世界にも通じているという事ですか。」

「そうじゃ。・・と思う。次元扉の鍵が売っているのでそれを使えば好きな時に次元扉を開いて移動できる。」

「じゃあ、それを買って帰らなきゃ。」

「幽体で来たから鍵を買っても持って帰れないぞ。」


 マジですか、がっくり肩を落とす。


「じゃがこれで、次元移動の呪文で一発で行く事が出来るようになった。」


 そうか、一度行った事のある次元は肉体ごと転移の『次元移動』の呪文で行く事ができる。

 ただし、この街は台風の目のような場所で外は様々な力が乱雑に渦巻く、簡単に説明すると街から1歩でも外に出ると魔法が使えなくなるようだ。

 神様すら力を失う所なので、魔法のアイテムも使用不可になるそうだ。

 中心から離れれば魔法が使えるように成るそうだが、何百キロも離れなければ呪文が使えない。

 もし『次元移動』で目標地点がずれてしまい徒歩で街を目指すとなったら魔法の装備が使用できない俺達はたどり着けるか怪しい。


「まあ、『次元界の境目』を通って移動すればよい。『次元界の境目』には距離など無い一度行った場所なら半日も有れば着くことができる。先ほど飛び込んだ池を目指せばよい。」

「じゃあ、今回は情報収集ですね。」


 公園を見渡す、ごみも落ちていない綺麗な公園だった。

 周りの人々は幸せそうに遊んでいる、日本の公園を思い出す、ただそこに居る人々が人間だけでなくエルフやドワーフ、天使までいる事を除けばだが。

 学者の様な服装の者達が近づいてきた。


「旅の方ですね、お待ちしておりました。」


 (誰?俺達この世界に知り合い居ないんだけど)と思っていると大司教が前に出て彼らと話をする。

 学問や魔術を司る神様の僧侶で、俺達を迎えに来たようだ。


「何で俺達の事を知ってるんですか。」

「善の幽体の旅行者を保護するように知識の神から信託が有りました。ここは善の旅者が始めに来る場所です。付いて来てください、『真実の図書館』に案内します。」


 歩きながらこの街の仕組みを教えてくれる、混沌、秩序、善、悪と4方向に分かれていてこの辺りは善の区域で治安も良く暮らしやすい、悪の区域は盗賊など悪の属性の住人が多く安心できない、秩序の区域は家々が整然と並んでいる、混沌の区域は何もかもごちゃごちゃしていて目が回るようだと教えてくれた。

 池に(後で『次元の扉』と呼ぶと教えてくれた。)飛び込むとパーティの属性が偏った場所に対応して飛ばされるようだ。

 街の外周部に行けば行くほどその区域の特性が出る、最外周部にはその属性に対応した次元界に通じる扉も多数有るとか。

 街の中心部に行くが遠いな、遥か遠くに見える塔に図書館はあるそうだ。


 店に入って行くと中には様々な鍵が並んでいた。


「図書館まで頼む。」

「へい。」


 ドワーフの親父は金貨を数枚受取ると、鍵の束を取り出し1本の鍵を扉に挿入して回す。


「どうぞ。」


 通ると大きな塔の近くだった。


「え、どうなってるのこれ。」


 通った扉を開けると向こうは壁だった。


「旅の鍵だ便利だろ。」


 店員さんが笑いながら教えてくれる。


「旅の鍵は売ってもいますので本物の肉体で来たときに寄って下さい。」



 塔の近くと思ったがまだまだ遠かった、余りにも大きな塔だったので近いと錯覚してしまった。

 中心部に近づくにつれ店が増えている。


「ランスも大きな都市だと思っていたが10倍以上大きいんじゃないか。」

「中心から縁まで歩くと5日以上かかりますね。」


 嘘だろと思ってマップを確認する、どんどん倍率を小さくすると都市の半径が150Km物凄い巨大都市だった。

 僧侶の後を付いて行くとある露天に目が留まった。


「これって日本刀だよな。」

「兄さん冷やかしなら遠慮するぜ。」


 顔も微妙に日本人に近い。


「幽体だろ、買っても自分の次元に持って帰れないだろ。」


 幽体は物を買わないので冷やかしと思われていた、これだけ店があっても声が掛からない訳だ。


「これ刀だよな、もしかして日本人かな。」

「お、兄さん日本人か、俺の祖父は大和日本の国民だった。」

「やまとひのもと?」

「じいちゃんが昔話で良く話してくれたぞ。」


 歴史に詳しくないので分からないが戦前の日本ってそんな呼び名だったのかな。


「戦前はそんな呼び名なのかな、今はニホンってよんでるけど。」

「戦争で日本が勝ってからもヤマトヒノモトや、ダイニホンと呼ばれているって聞いたけど。」

「勝ったって?第二次世界大戦に負けなかったっけ。」

「そんな戦争は聞いたことが無いけど。」


 どうやらパラレルワールドの日本人のようだ。


「じいさんはご存命かな。」

「だいぶ前に無くなったよ、でも俺にはじいちゃんが残してくれた刀鍛冶の技術があるからさ、俺の腕にはじいちゃんの魂が宿っている。」

「そうか商売の邪魔したな。」


 刀を見ると、龍とか虎とか彫ってある、俺が日本で見た刀とちょっと違うよな。

 店員の兄ちゃんにマーカを付けてから別れる。


 武器屋がある、何これ宝石がちりばめられた両手持ちの黄金の筒、銃なのかな水晶の弾がセットで置いてある。


「興味深いかもしれませんが、先を急ぎますので。」


 僧侶に注意された。


「あ、ごめんなさい。」


 あの武器は何かと聞くと、弾を飛ばす武器と教えてくれた。

 銃で良いのか聞くと驚いた顔で「知っているのですか。」と答えた、「やはり」とか「流石」とかブツブツ言っているのが気になる。


 しばらく歩いて図書館に着いた。


「なんだこれ。」


 思わず出た言葉だ、中心の塔を守るように図書館が建っている、図書館と言われなければ城と見間違うほど立派な図書館だった。


「凄く壮大な建築物だそして綺麗だ。」

「我が神も喜ぶでしょう。」


 中に通される、どの部屋を見ても本が整然と並べられている。

 階段を登ったり降りたり何度かした後にある部屋に通される、もうどう戻るか覚えていない。

 マップを見ると地図無し状態で通った所のマッピングがされている、この図書館ダンジョン扱いかよ。


 ある部屋とは図書館長室のようだ、奥で豪華な服を着た若者や老人、女性が座っている。

 ステータスを確認すると、どの人物もレベルが10以上だ。


「我は第6区館長の・・・・」

「太陽の神の・・・・」


 対応は偉い人に任せた。

 もうこれ以上男の名前は覚えられん、この部屋にも本が並んでいるなと思っていると俺の名前が出る。


「はい、リクです呼んでいただき光栄です。」

「お前話聞いてないだろ。」


 大司教から突っ込みが入る、何か言い訳をしておこう。


「すいません田舎者なんで色々興味が有って。」

「率直に言いますがここで得られる知識は何処に行っても手に入らない知識です。この意見に関してはどうお考えですか。」


 否定すると駄目なやつか?、それとも正直に俺の意見を言うべきか、俺は正直に意見を述べる事にした。


 これだけの本があっても全てを読む事が出来ない事を述べる。

 そして、自分の居た世界は印刷機で何冊も本を印刷できた事、本の変わりに電子辞書や書籍が有る事、翻訳はパソコンである程度は訳してくれる事などを話す。

 科学ここで言う錬金術の発展についてはこの世界はまだ中世前期ぐらいで、市場に銃があったので一部は中世後期ぐらいの科学力じゃないかと話をする。

 自分の世界には魔法が無かったので科学に関しての発展していると付け加えておいた。


「つまりここで得られる知識は不要と。」

「違います、正確には知識の偏りがあるのではないかと思います。魔法が便利すぎて電気や機械などの研究はされていないと推測します。」

「ミランダ彼と話をして真偽を確認してくれ。」

「ふふ、かしこまりました。リクさん私の知識欲を満たしてくださいね。」


 キャリアウーマンのような女性はミランダという名前だった、美人だから名前を覚えよう、レベルは魔術師Lv8、僧侶Lv1、賢者Lv4だ、賢者って何と思ったが後で調べよう。

 ここから1時間ほど彼女と話をする事になった。

 最初に電気の話をする、磁界に話が移るを頃にはメモを取り、内燃機関の話をすると俺の横に座り落書きの図面を写していた、半導体の話をすると理解を超えたのか羊皮紙のメモに頭を埋めた。

 何か顔が赤いのは気のせいだろうか「いっちゃった。」とか良く分からない事を言っている。


 他の僧侶達は彼女の様子に驚きの表情を浮かべた。


「ミランダ、彼の錬金術の話はどうなのじゃ。」

「うー、検証してみないと分かりませんが、実験すら私の技術ではできません。」


 助け舟を出す。


「科学の発展は小さな積み重ねですからね。実験に必要な計器も過去の様々な発見から作られています。」


 ミランダが大量のメモを大事そうに片付けるのを皆で見守る。


「試すような真似をしてすまない本題に入ろう。」

「俺の話が聞きたかったのではなかったんですね。」

「この図書館以上の知識が存在しているとは思っていなかったのでな、リク殿ならいつでも図書館の入口を開けるから訪ねてくるがよい。」


 別に必要が無ければ行かないけどね。

 俺達が呼ばれたのには理由があった、この世界のバランスを崩す者がいるので知識の神が解決するように僧侶に信託を与えた。

 今いる次元界は善・悪・秩序・混沌のバランスが重要との事だ。

 なぜならこの次元界が上の次元を茶碗の底の様に支えている、もし底のバランスが崩れれば大きく力のバランスが傾く。

 バランスが崩れると悪の勢力が栄えたり他の次元界まで悪魔が出現したりすると言っている。

 それの解決を俺達に依頼してきた、報酬はこの図書館で得る事の出来る知識だ。


「どうやってバランスを取っているんですか。」

「この都市の住人の善・悪や秩序・混沌の比率だ。」

「どうやってバランスを崩すんですか。」

「善の属性がこの世界に入れないように『次元の扉』の周辺で徘徊している。」

「それって、この世界に入る前に倒したよな。」


 パーティメンバーが頷く。


「鎖の悪魔はそんな簡単には倒せんぞ。」

「あーそれそれ、6体いた。」

「馬鹿な。」

「じゃあ、報酬を」

「内容を変えていいか。」

「いやいや、先にクエストをクリアしてたからって報酬無してのは駄目でしょ。ゲームだったら誰もやらなくなるよ。」

「では追加で依頼を頼む。」


 依頼内容は悪魔退治だった。

 最近大量に悪魔の住人が増えている原因は魔戦将軍が原因で悪の根源を絶って欲しいとか。


「ただの暗殺じゃないですかそれ、俺以外に頼めないのですか。」

「強力な天使等は居るがその者が死んでしまうと本当に均衡が崩れかねない。」

「まあ、様子見て来ていけそうなら。」

「では頼む、報酬は図書館を行き来できる鍵。『旅の鍵』を作るではどうじゃ。」

「それいいですね市場にも近いし。」


 クエストクリアの報酬を受け取る。

 内容は知識、日本に帰る方法を聞くとやはり平行宇宙パラレルワールドが多数存在しているので同じ日本に帰るのは難しいとの事。

 ただ場所を特定する呪文が有るのでそれを使えばば帰ることが出来る可能性が高い。


 可能性が高いとは、日本に飛ぶエネルギーが不足する可能性があるようで、月や惑星の配列などでエネルギーを増幅させる必要があるかもとか。

 俺が転移した日を計算して、ビッキーが星の配置の知識を述べるとかなり難しい顔をしていた。


 双方の星の配列を合わせる必要があるってかなり無理ゲーじゃないのと思っていると。


「どの世界にも1、3、7、9のアーティファクトがある。」

「アーティファクト?」

「それを集めよ。」


 分厚い本を何冊か持ってきて見せてくれる。

 俺達の次元の本だ『狭間の次元・場所:×××』と書いてある。


「リクの次元界には、1つの神剣、3つの指輪、7つのアイテム、9つのタリスマンがある。」


 大司教とビッキが同時に


「「神剣と7つのアイテムはアルトシュタインとブルグント王国にあるのじゃ(あるわ)。」」


 アルトシュタインには『神殺しの神剣』がブルグント王国には『ドワーフの7つの秘法』があるとか、さらに『ドワーフの7つの秘法』の内4つのアイテムはすでに場所が分かっていると教えてくれた。


「アーティファクトの強力なエネルギーを解放すれば望む次元と繋げる事が出来るだろう。」

「この図書館でいろいろ調べ物をしてから元の次元に帰ります。」

「いいだろう。」


 こうして『真実の図書館』で数日滞在する事になった、ビッキーには調べ物をしてもらう。

 メルカバとベニーは交互で俺の護衛をしてもらう。

 何故かって、それはミランダが毎日俺を尋ねて来るからだ。

 

 ミランダは魔術師だったが知識を追い求める為に『知識と魔術の神』に入信する、その後高い地位を得て『真実の図書館』までたどり着いた。

 文字通り実験が恋人で、新しい実験を行いながら自分を慰める変態ちゃんだった。

 綺麗なのにとても残念だ。


 今も吐息がかかるぐらいの距離にミランダがいる。

 ベニーがミランダと俺の間に入って、


「ミランダさんちょっとリクに近すぎます。」

「いいじゃない、減るものでもないし、ね、リク様。」


 まあ実害ないし良いだろう。

 ミランダのお気に入りの話は直ぐに実験ができる電気と磁界の話だ。

 電気を作ったり貯めたりと実験のやり方を教えている。


 こちらもギブアンドテイクで色々教えてもらう。


 この次元界の1・3・7・9のアーティファクトは、『淑女の自動人形レディーオートマタ』と3つの『キャンセラー』7つの『バランサー』9つの『次元リング』

 2000Kmの皿の様な大地でとても狭い世界アーティファクトは直ぐに全部見つかり現在は『淑女の自動人形レディーオートマタ』が完全かつ完璧にアーティファクトを操ってこの世界を守っているとか。

 魔法の力を無効化して神ですら力を失うこの大地は敵の侵入を塞ぎ、他の次元界の土台となっていること。


 他の次元界のアーティファクトも色々在って面白かった。

 悪の次元界では『7つの大罪』とか『3つの猿』とか。


 新たな職業の情報も得た。

 『旅の鍵』の作る職業は『次元の鍵師』という職業で、今ボニーが自分に適正があるか『次元の鍵師』を紹介してもらった。

 何故かというと、日本に戻れても一方通行では困るから帰り方を聞いたら盗賊の上級職の『次元の鍵師』なら自分の好きな次元間を結ぶ鍵を作る事が出来るからだ。

 などなど興味深い情報を沢山聞くことが出来た。


 ミランダさんが椅子を濡らして帰らなければ文句は無いのに、その椅子はミランダ専用になっている事は言わなくても良いだろう。

 しかしそんな平和な日々は終わりを告げようとしていた。


異世界冒険 115日目

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