8連目
馬車の中には、ベットやテーブル、椅子などがあり、小さなキッチンなどもあった。
「カイト様、此方におられる方がアルフレッド侯爵様が長女エリナ・ブライトンお嬢様です」
カイトが周りを見て観察していると、エドガーがカイトに声かける。
(!!!)
カイトがエドガーの声のした方へ顔を向けると、そこには桃色の髪をストレートに流したとても可愛らしい美少女が、侍女らしき人に支えられながらそこにいた。カイトは、その美少女に見惚れていた。
(か、かわいい、年は僕同じくらいかな)
「エリナ様、此方が先程話したカイト様です」
「初めまして、カイトと言います」
エドガーが、エリナ様にカイトの事を紹介すると、カイトも、自己紹介をするが、エリナ様は酷く怯え、侍女から離れようとしなかった。
「申し訳ございませんカイト様、お嬢様は外に出たことがあまりなく、王都に行くのも今回が初めてでして、あまりお気を悪くなさらないでください」
「そうだったんですか、わかりました」
「初めての旅は大変でしょう、僕はカイト、頭の上にいるのがニュアって言います、王都まで一緒に行く事になりました、よろしくお願いします」
エドガーの言葉にカイトが納得し、エリナ様に優しく話かける。
カイト達が馬車に乗り込み、移動を開始してから1時間程の時間がたった。
「ニュアちゃん、とっても可愛いです」
「きゅう!」
馬車の中では、先程の怯えが嘘の様に、エリナがニュアと遊んでいた。初めは怖がっていたエリナも、エドガーと同じく、カイトの頭の上にいたニュアが気になり、ニュアに挨拶された所、可愛い!と気にいられ、今に至る。
(ニュアちゃんって、ニュアってそもそもメスだっけ?まあどっちでもいいか)
「カイト様が羨ましいです!こんな可愛いニュアちゃんとずっと一緒なんて!」
カイトは、エリナとニュアが遊んでいる姿を見てそんな事考えていた時、エリナがカイトに話しかける。
「そうですか?うーん、でも、ニュアと一緒に旅をしてまだ少ししか経ってないですよ?」
「え、そう何ですか?カイト様は強いと聞いていたのでもうずっと一緒旅をしているのかと思いました」
「ニュアは、俺が村から旅立つ前の日に卵から産まれたんですよ」
エリナは今は、カイトとも普通に話が出来るようになっていた。それどころか、ニュアがカイトの元に戻ると羨ましそうに見てくるので、ニュアにエリナと遊んでおいでとエリナに預けている始末だった。
ちなみにエリナが、助けていただいた相手に様付けなんて、同い年と聞いていますし呼び捨てでいいですよ、と言うので、カイトは今は呼び捨てで話す様にしていた。初めは、侍女やエドガーが、それはあまりにも無礼になりますとカイトに言うが、エリナは頑として普通に話て欲しいと聞かなかったので侍女やエドガーは渋々承諾した。
「お嬢様、後少しで王都に着きます」
エリナと話をしていると、馬車の前の小窓が開きエドガーが顔を覗かせる。
「わかりました、ニュアちゃんともう少し一緒にいたかったんですけど、仕方ありませんね」
エドガーの報告に、エリナは返答し、一緒に遊んでいたニュアをカイトに渡す。
「きゅう!きゅう~」
カイトの元に戻ったニュアは、すかさずいつもの定位置、カイトの頭の上に登り手足伸ばしリラックスの体勢になる。
「あう~ニュアちゃんが頭の上に!いいな~」
エリナのそんな発言を、カイトは受け流し頭の上にいるニュアを、少しやりにくいが撫でてあげる。
「そういえば、カイト様は王都に行ったら、どうされるのですか?」
「まずは冒険者ギルドに行こうかなと考えています、身分証を持ってないので」
エリナのそんな質問にカイトは答えながら、残り少ない馬車を堪能するのだった。
「お嬢様、カイト様、王都が見えてきましたよ」
馬車で移動し2時間程がたった頃、ようやく王都が見えてきた。カイトは、王都が見たいので馬車から降りたいと小窓から声をあげたエドガーに伝える。エリナはまだ街道に出るのがまだ怖いらしく、馬車の中に残る。
(へ~あの城壁があるところが王都か~)
カイトは、まだ少し距離が有るものの、遠くてわかる城壁の大きさと、巨大な白い城に目を奪われる。
「どうです!凄いでしょ、あのお城はフェルノート城と言うのですよ、王都フェルノートの観光地としても有名なんてすよ」
カイトが城に目を奪われていると、エドガーが話かけてくる。
「そうなんですね、確かに、これは驚きました」
エドガーの話によると初代国王が他国に舐められない様に、城をとにかく大きくしたようだ。
(初代の国王様どれたけ見えを張りたかったのか、て言っても、今は観光地になってるなら大きくしても舐められてるんじゃあ、いや、収入が増えて逆に良かったのか?)
カイトがそんな事を考えているうちに王都の入り口にたどり着いた。