エピローグ
「あ、コクヨ、いる……!」
いつも待ち合わせしている時間にログインして、真っ先にメニューを開いてフレンドの欄を見る。コクヨがログインしていることを確認して、私はほうっと息を吐いた。
だけど、何となく負い目があって、こちらからチャットを飛ばすことが出来ない。なんせ姉の色んな意味であられもない姿を見せてしまったのだ。立つ瀬がない。
連絡を取るべきか、それとももしかしたら迷惑? だなんて、迷いに迷っていたら、逆にチャットが飛んできた。私はあたふたと慌てながら、それを受ける。
「はい!」
『あ、ヒカリ! 今どこですか?』
「ん、えっと、ど、どこだろう?」
はっきり言って、春国の首都の地理なんてさっぱりだった。コクヨも、くすくすと笑ってそれに同意してくれる。
『ヒカリ、空を飛んでみてもらえますか? こっちから見つけますから』
「あ、そっか、その手があったね」
音声チャットを繋いだまま、ふわりと空を舞い上がる。ぐんぐんと高度を上げている内に、そういえばコクヨと普通に会話できていたことを思い出して、何となく口元がにやける。彼女の中であの姉について、どういう決着がなされたかは判らないが、普通に接してくれることが嬉しい。何よりそう思った。
私は、ハル――本名は千春さんらしい――が言った、3つ目の案を受けることにした。つまりは、彼女たちと一緒に、この世界を守る一員になった、ということだ。
それと引き換えに、というわけじゃないけど、先輩魔法使いである千春さんには、自身の魔力を抑制するマジックアイテムを貰ったり、魔法について教わったり、色々と面倒を見てもらうことになっている。浮遊しただけ(「だけ」というのもなんだが)でも色々と戸惑っていた私には、とてもありがたかった。
あ、ちなみに四季のメンバーは、みんな名前に季節がついているらしい。私も「つゆり」だから、ちょうどいいね、なんてナツ――奈津さんが笑っていた。確かに四季と雨季(梅雨)でちょうどいい、なんて自分自身思ってしまった。
姉を見て、常々非常識だのぶっ飛んでいるだのと思っていた私が、それよりもおかしいことに遭遇する羽目になるとは、全く思っていなかったけれど。それでも、そんな特別も、悪くはないと思っている。
今だから言えることだけど、私は姉を羨んでいないと言いつつも、心のどこかで憧れていたような気がするのだ。だから、私も私の特別が持てて、少しだけ嬉しい。
……いや、違うな。
すごく、嬉しいんだ。
見上げるしか出来なかった場所の隅っこにでも、来れたことが。
『あ、見つけました! ヒカリ、後ろです!』
「あ、噴水のところで、手を振ってるのがコクヨだよね!?」
『はい、そうです!』
「わかった! 今行くね!」
両手を振るコクヨの姿を見つけた私は、応えるように手を振りながら風を切って飛んでいく。
私はこれからもコクヨたちとこの世界で一緒に冒険して楽しんで、そして同時に千春さんたちとこの世界を守っていく。
姉をキッカケとしてはじめたVR体験記と、その顛末については、これにておしまい。
あとはまだ見ぬ未来に、一歩ずつ歩いて(たまには飛んで)行こうと思います。




