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11 パーティ結成

 時刻は、午後9時。

 寝る準備や明日の準備をすべて済ませた私は、さっそくクォーターの世界にログインした。

 すぐにメニューを開き、フレンド確認を行う。フレンド登録してある人であれば、現在ログインしているかどうかを判別できるのだ。

 コクヨはまだログインしていないようだった。ただ、待ち合わせしているのだからその内にでも来るだろう。そう思いながら現在ログインしているプレイヤー――グスちゃんに音声チャットを送る。


「グスちゃん、今大丈夫?」

『んあ? ヒカリか? 今はちょっと手が離せないんだが、急ぎか?」

「あ、ちょっと聞きたいことがあったんだけど、それなら後でいいや」

『おお、すまんな。あとで時間があいたらチャット飛ばすわ』

「うん、宜しく」

 ぷつりとチャットが途切れる。私は一つ溜め息を吐いて、コクヨとの待ち合わせ場所に向かうことにした。エルフさんのことは気になるが、こうなっては仕方がない。


 昨日行った食堂に、レベル上げのため、飛行スキルを使用しながら向かう。

 ただし、MPを消費してしまってはコクヨと合流してからレベル上げがすんなり行かなくなってしまうので、MPが1減ったら1分間普通に歩いて回復する、を繰り返した。 

 もう少しで食堂に辿りつこうかというとき、音声チャットが飛んでくる。コクヨかな、と思う。案の定だった。私は歩を休めず、彼女とチャット越しに話す。


『ごめんなさい、ヒカリ。待たせてしまいましたか?』

「大丈夫、私もさっきログインしたところだからー! ちなみにもうちょっとで食堂だよ」

『わたしも、すぐに向かいますね!』

「うん、待ってる!」

 チャットの向こう側で、はあはあと息を荒げているのが聞こえる。どうやら一生懸命走っているようだ。私は「あんまり急いで転んだりしちゃダメだよ?」と釘を刺してから、チャットを切る。その時ちょうど、食堂に到着していた。


 1MP分浮遊、1分間着地を繰り返しながら、コクヨを待つ。2~3分ほどで彼女はやってきた。ぜえぜえと肩を揺らすコクヨに、仮想現実でも走れば疲れるんだなあ、とどうでもいいことを考えてしまう。すぐにその考えを振り払って、彼女に手を振った。


「やほ、コクヨ! 昨日ぶり!」

「はいっ! 昨日ぶりです、ヒカリ!」

 麗しい黒の精霊が、その雰囲気に相反した柔らかい笑顔を浮かべる。それでも似合ってないなんてことはなくて、とても可愛らしく私の目には映った。


「じゃあコクヨ、レベル上げ、行こっか?」

「はい!」

 私たちは二人連れ立って、フィールドに続く門へと向かうのだった。


 □


 フィールドに向かう道中、私はコクヨにある提案をした。それは、二人でパーティを組まないか、という誘いだ。

 当然、コクヨはその申し出に戸惑い、一度は断った。自分の方が魔法の撃てる回数が少なく、魔物を倒せる数が少ない。それではヒカリの足を引っ張ってしまう、と。

 だけど、「私が飛行スキルで敵を誘導し、コクヨが魔法で一掃する」という作戦を伝えると、彼女は嬉しそうに笑って快諾してくれた。単純に敵を倒し続けることに、彼女もまた飽きていたということだろう。


 というわけで、フィールドへ抜ける門に辿り着いた私たちは、二人でパーティを組む。何だかそれがとても素晴らしいことのように思えて、私はにやにやしてしまった。そして、パーティという単語に心躍っているのは私だけじゃなさそうだ。コクヨもまた、抑え切れない笑みを口元に浮かべている。


「じゃあ、飛行スキルで釣りしてくるね!」

「はい! お願いします、ヒカリ!」

 「釣り」とは魔物を惹きつけて狙いの場所に誘導する、というネトゲの用語だった……はず。使い方が合っているのか正直自信がないが、コクヨも何も言わないので、恐らく間違ってはいないのだろう。

 というわけで、モンスター釣りを開始しようと思う。

 以前グスちゃんに教えてもらった、「フィールドでは、もし落下して他のプレイヤーを巻き込んだ場合、HPを減らしてしまう」ということを思い返しながら、空を飛ぶ。ちゃんとMPの残りには気を配ろう、と念頭に置きながら、出現したモンスターに空から近付いていった。


 モンスターは私を見つけるなり、ひょろりとした身体から伸びる、細い腕をこちらに振りかぶった。その先端には尖った爪のようなものが付属しており、私は大きく余裕を取って回避する。途端、ふわ、とスカートが舞い上がる。思わず両手で押さえつけながら、私は次に現れたモンスターに視線をやった。

 意識を移した瞬間、二体目のモンスターが私に向かって爪を振りかぶる。私はヒッ、と小さな悲鳴を漏らしながら、咄嗟に高度を上げた。空ぶった攻撃に、モンスターは悔しげに唸る。次の瞬間、三体目が現れ、私は更に意識をそちらにも分散させながら、攻撃に当たらぬように敵を誘導していった。


 ぶっちゃけものすごく必死である。中々釣りというのも難しいものだ。

 コクヨがはらはらとした顔でこちらを見ているのがちらりと見える。心配させたくなかった私は、あえて口元に笑顔を浮かべて、余裕を取り繕った。


 そんなことを繰り返し、なんとか5体のモンスターを集めた私は、ちらりとコクヨに目配せを送る。彼女もこちらの意図を察したのか、こくんと頷いた。

 少しだけ高度を落とし、モンスターをコクヨの方に誘導する。


「闇よ、波紋となりて敵を呑み込め――」

 冷たさすら感じさせる詠唱の声に、私はタイミングを計って上空に舞い上がる。


「――『ダーク・ビロウ』!」

 コクヨの放った闇属性の範囲攻撃魔法が、敵を呑み込んでいく。私はそれを、上空から見守っていた。少しして、釣った敵の全滅を確認した私は、コクヨの隣に着地する。そして二人で顔を見合わせて、どちらからともなくハイタッチした。パン、と気持ちいい音に、お互いに笑ってしまう。


「中々大変だけど、これならちょっとは効率いいよねっ?」

「すごいです、ヒカリ! これなら経験値を分け合ってもいつもより多いです!」

「だよね! 私も飛行スキルのレベルが上げられるし、いいことばっかり!」

「はい! ヒカリ、次からもこの作戦で行きましょう!」

 二人して、きゃっきゃと喜び合う。これならただの作業だったレベル上げも、少しは楽しく出来そうだった。

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