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「晴世ちゃん、お昼一緒に食べない?」
「え、いいよ」
「やったー」
4限終わり、加藤の方から晴世に話しかけてきた。晴世はいつもだったら、久実あたりと食べるか、その辺にいる誰かと机を合わせて食べるかといったところだったので、加藤と二人でご飯というのは初めてだ。
加藤はタッパーから謎の食事を取り出した。
「それは?」
「これはね、ささみにゆで卵、ブロッコリーをほぐして、ポン酢で味付けしたもの」
「そうなの?」
そうは見えない、なんか見た目だけだとボロボロのご飯のように見える。なんかあの、言い方は悪いが、一度こう、出したような……黄色と緑が混ざってるのが何とも。
ただ、そのようなものを食べるあたり、やはり体型への意識が窺える。加藤は私よりも身長も高ければ脚も長い。
目の前で普通のパンをかじるのが、申し訳ない気分になってくる。
「舞台の稽古はどう?楽しい?」
「え、まあ楽しいよ。今の演出家良い人だし」
「私、演技無理なんだよね」
「そうなの?」
「うん。昔事務所に言われて小さい舞台に出たんだけど、ダメだった」
「ダメっていうのは?」
「普通に棒読みでさ」
「あー、まあでも、慣れ?経験?ってあるからなぁ。子役が棒読みでもあんま誰も気にしないのと同じでさ。てか緊張してたんじゃない?」
「緊張ではないかな。私ステージ上がるの楽しかったし。このセリフ言ってるときは自分だけに目が向いてる!とか思うとすごく楽しかった」
その発想ができる人は、舞台向いてると思うんだけどなぁ?まあ自分でも分かるくらいの棒読みなのが本当だったら仕方ないのか。
「モデルってさ、モデル一本でいける人って、あんまりいないんだよね」
「そうだね」
「うちの雑誌も、女優やってるかアイドルやってる子がほとんど。私も、事務所では演技レッスンとか受けてるしね」
「うん」
「雑誌卒業したら、女優なるかタレントなるかの道しか残されてないけど、私にはどっちも難しそうだなって」
へらへらと加藤が笑う。
加藤が休んでいるところをあまり見ないのは、雑誌モデルという時間の都合をつけやすい仕事「しか」やってないことが要因なのだろう。
この学校は、全員が学生を本業と思っていないような学校だ。学校に来られないことは一種のステータスになりうる。
毎日来られる、それは仕事がないことを表す。
……元々の攻略者は芸人志望だったよな。もしかしたら、同じ境遇だってところから加藤さんを取り込んだのかもな……
「晴世ちゃん?」
「あ、ごめん、ちょっと考えごとしてて」
「あ、よかった。すごい怖い顔してたから、なんか怒らせたかと思った」
「そんなに怒らないよ私」
「晴世ちゃんは、舞台以外興味ある分野ないの?」
「えー」
結局、加藤との話は深いところまでは行きつかず終わった。
何が加藤の攻略手段なのか……
放課後、私は本屋に寄って、加藤の載っている雑誌を手に取ろうとした。どの雑誌かはもちろんリサーチしていたが、それにしてもすぐ手にとれた。
加藤は雑誌の表紙を飾っていた。




