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84話 反対派

俺の名前はルドルフ、ドグニイル様の右腕だ。

今はこのセキュリティスペースで臨時の代表を務めており、地上世界侵攻の指揮官でもあった。地上世界と魔界とを繋ぐゲートを作り、完成次第地上世界へと侵攻して地上世界を制圧する計画だった。もし仮に失敗したとしても工作員にはペルロストが仕組んだと教育しているのでペルロスト派を失脚させるいい機会であった。そしてペルロスト派を失脚させた後、ドグニイル様を次期魔王とする計画だ。もしバレたとしても我々にはセキュリティスペースへと逃げ込んで処罰の手は及ばないからな。


地上世界への侵攻だけでペルロスト派が失脚するのかと普通なら疑問に思うのだが、魔界と地上世界は不可侵条約を結んでいてそれが破られるからだ。

魔界は作物の育ちが悪く年中食料難で苦労しており、そのせいで味方同士の共食いや争いが頻繁に起こっているのだ。それに比べて地上世界は食物が潤っており、地上世界を制圧して食料問題を解決するのが魔界全体の悲願となっている。ペルロストが魔王になったことで多少は改善されたものの、それでも十分な食料が行き渡っているとはいえず、ペルロストに不満がない魔界の人間は少数派だと自負している。

ただ、ペルロストを失脚させようにも魔界の実権を握っている裏の管理者という存在のせいで普通に失脚させてもペルロストみたいなのが代表になるのが目に見えているので失脚がそこまて意味をなさないのが現状である。

だが、地上へ侵攻して条約を破ればそうではないだろう。というのも遡ること3年前、魔界が地上へ侵攻しようとしたタイミングで管理者の一員であるキョウロクールが魔界で大暴れしたことにより、魔界の人口は半減し、当時の魔王達幹部は全てキョウロクールにより滅ぼされたそうだ。

何故憶測で語っているのかというとその時ドグニイル様を始めとした一部派閥はこのセキュリティスペースに逃げ込んでおり詳しい事情を知らないのだ。ただ、そのお陰で派閥はほぼ無傷で残ったのであるが。

しかし、その後に魔王になったのが前魔王と反対の派閥であったペルロストだったのだ。どうやら裏の管理人が直接指名したみたいでこれにより地上への侵攻計画は完全になくなったのだ。その為、反対派でまた侵攻を煽ろうかと考えたのだが、今全員帰ってくると違和感を持たれるというドグニイル様の判断で派閥の半分はここに留まっており、残りの半分はこことパンドラワールドで作戦の立案や情報収集に勤しんでいたのだ。

そして、地上世界の人間が届かない場所にゲートを作り、そこから侵攻しようと我々は企んだのだ。ドグニイル様もこれを承認しており、計画を順調に進めていたのだ。


ただ、もう少しでゲートが完成するタイミングでペルロストが突如反対勢力を捕縛だしたのだ。しかもいきなり捕縛に乗り出ししたみたいでスパイから事前にこの情報を聞くことが出来なかったので我々は後手に回ってしまったのだ。そのスパイが言うにはペルロストが何処かへ行った後にいきなり捕縛が始まったそうだ。それも普段とは違い血眼になって探しているそうで、ドグニイル様から避難命令が出たものの我が派閥の人間が全員が帰ってくることが出来ずにドグニイル様を始め何人かが捕虜として捕縛されてしまったのだ。


「ルドルフ様、どうしますか?」


「こうなった以上ここへ来る可能性もある。総員戦闘用意。警戒を怠るな」


ドグニイル様はこのセキュリティスペースのことは消失封印にしているらしく、漏れることはないだろう。血眼になっているペルロストのことだから幹部以外は全員屍だろうが、むしろ捕縛された一般市民や幹部のの中にはこのセキュリティスペースを知っている人が数人紛れているので口を割らないかどうかだけ心配であった。


そして2日経った頃、ペルロストは俺達を捕まえるのを諦めたかのようにピタリと捜索が止んだと協力者から連絡が入ったのだ。俺は相手が探すのを諦めたと考えてパンドラワールドに居る仲間達を集めて今後の作戦会議を始める


「おい大丈夫なのか?追ってが来たら終わりだぞ」


と、パンドラワールドを管理しているトイルーソが開始早々に口を挟む。トイルーソは昔から慎重派で地上侵攻にも最後まで反対していた人物だ。俺からしたら頭が固いだけの老いぼれだけどな。


「あぁ、協力者から捜索は打ち切りとの連絡があった。しかもパンドラワールドはバレたようだがこっちはバレてないようだ」


「そうなのか!だったらこっちへ呼んで来てくれて感謝する」


今日の協力者の情報の中にペルロストがパンドラワールドの存在に気づいたという情報が入っていたのだ。奴らが異世界に気づいたのは想定外だったが、幸いにも人質達がいる方のパンドラワールドだったのが救いだな。

俺はその情報に触れると同時に会議と称してパンドラワールドから人員を引き上げてまだバレていないセキュリティスペースの方へと人員を集めたのだ。

実はパンドラワールドとセキュリティスペースは直接行き来することが出来ず、魔界経由でしか来ることが出来ないので気づかれるリスクがあったのだが、気づかれずにこちらへ来てくれたお陰でその心配もなくなったのでほとぼりが冷めるまでここに引き籠もれば問題ないだろう。


「それでこれからだが、暫くは何も行動せずにここにいた方が良さそうだが、それでいいか?」


「あぁ。今迂闊に動くと簡単に見つかるだろうからそれでいい。数年はこのままの方がいいだろう」


数年。人間だと非常に長い期間らしいが魔族からすればそこまで長い訳ではない。しかも忘れるには丁度いいくらい空いているのでそれが理想だろう。食料は少し心持たないが、畑の割合を増やせば何とか持つだろう。ここの畑は魔界と違って育ちは非常に良く外敵もいないので数は取れるしな


「よし、今後はそれでいく。反対する者はいるか?」


「私は反対ですね」


と幹部の1人が反対し、全員の視線がそちらへと向く。そいつは人型ではあるが、頭には大きな笠があり、巨大な水晶のような目をしている女性幹部だった。というかこんな幹部がいたか?


「貴様、何者だ」


俺の1言によりその他の幹部15人が一斉に戦闘体制に入る。そいつは全員が戦闘体制になったにも関わらず余裕の笑みを浮かべるとこう答えた。


「我が名はキョウロクール。恐怖と絶望を与えし存在」


キョウロクールだと、魔界を蹂躙した存在が何故こんなところにいる。スパイの情報では裏の管理者は動いていなかったはずである。もしその兆候があればスパイから情報が来るはずだ。

キョウロは名乗り終えると周囲に自身の魔力を霧散させていく


「グァァァァァァァァァァ」


その魔力に触れただけなのに自身でもわかるくらいに精神が汚染され、壊れていくのがわかる。これが裏の管理者の幹部の力か。


「貴様らは魔界と現世との不可侵協定を破った。これにより我らトゥールは貴様ら反ペルロスト派全てを敵対行為をみなし、殲滅するという決定を下した」


「せ、殲滅だと」 


精神がおかしくなりそうな中、キョウロクールから言われたのは殲滅という言葉だった。そんなことにはなりたくないと抵抗をしようとするにも精神を抑えるに精一杯で反撃などできる余力がない。


「アァァァァァァァァァア」


「ドネイル!?」


とうとう精神が耐えきれなくなったのだろう。隣にいたドネイルは奇声を上げるとその場に崩れ落ちる。崩れ落ちた側から体は砂になっていき、最後には全て砂となってサラサラと消えていく。

そんな光景を見た俺は更に精神を保とうと努力をする。精神汚染であんな風に死ぬなんて絶対に嫌だ。


「これで一人目ですか、皆さん耐えれているようなのでもう少し上げても大丈夫そうですね」


「グッ」


キョウロクールは楽しそうに笑うと更に魔力の密度が濃くしていく。反対派はもう反論すら出来ないくらいに余裕がない中、キョウロクールは一方的に話を続ける。


「そもそも私達に勝てるというのが過ちです。前回から何も学んでいないのですね」


「…………」


前回とは前魔王がキョウロクールに挑んだ時のことだろう。前魔王は実は裏の管理者と戦う気は一切としてなかったらしいのだが、幹部を初め周りの空気に押し負けて戦争を開始したということをドグニイル様から聞いたことがある。ドグニイル様は前魔王のことを腰抜けやチキン野郎と言っていたので俺も前魔王のことをそう思っていたのだ。

だが、実際は前魔王は裏の管理者達の実力を知っているからこそ戦争をしたくなかったのでないだろうか。そうだった場合、馬鹿なのは前魔王ではなく


「やっと気づきましたか?前回は前魔王に免じて反対派もある程度は残しましたが、その必要はなかったですね。まさか3年でこうなるとは思いませんでした」


「もっとも戦争に参加せずに逃げていた人達だからそんなこともわかる訳がないのでしょうが」とキョウロクールは続ける。その間にもどんどん仲間達は発狂して砂となって消えていく。何故こんな奴らと敵対しようと思ったのか、過去に遡れるのならどんな手を使ってでも自分の行動を止めさせたいくらいだった。


「それではさようなら」


最後まで残っていた俺に対してキョウロクールは更に魔力を強めるととうとう俺の精神が限界を迎えたのか、叫び声を上げると同時に意識が途絶えてしまった。

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