49話 調査を終えて
「変異種のハイスライムもそこまで厄介ではないな」
倒したハイスライムをみてアーバスはそう呟く。ハイ系統だったので警戒はしていたのだが、警戒した割にはそこまで強くなかったな。ノーマルよりかは格段に強くなってはいるが所詮はスライム、倒しやすいことには変わりない。
「お疲れ様でした」
「ありがとう、サーラ」
「ところで最後のは何だったのですか?」
「あぁ。あれか」
モンスターは武器によって耐性がことなり現在は3種類のダメージの与え方がある。1つは斬撃によるダメージである。切ったりすることによってダメージを与えられるものだな。ここには槍などの突いてダメージを与えるものが入っている。
もう1つは打撃で、主にハンマーなどの殴る系統の武器だな。銃もここに入ってくる。
最後が魔法でこれは攻撃魔法全般がはいる。ちなみに銃の中には魔法を銃弾の代わりにするものがあるのだが、それは打撃ではなく魔法攻撃に分類されるのである。
モンスターによってこのダメージがバラバラで最適なものを見つけるのもアーバスの仕事なのだ。
「武器によってダメージが変わることは知っていましたが、そこまで細かいのは初めて知りました」
「公表はされていないからな。そのせいで知らないギルドも多いしな」
ギルドだと魔法と物理と補助と属性でしか分けてないからな。斬撃と打撃で分けてるギルドなんて聞いたことないからな。
「それで何が弱点だったのですか?」
「打撃だな。スライム系統は元々打撃に弱いが、今回のもその特性が変わっていないみたいだ」
変異種はその希少さ故に解明されていないのが多く、今のわかっているのは属性の弱点や耐性が個体によって変わるということだけである。打撃や斬撃などの武器によるダメージ量の変化は現在検証しているところなので、解明にはもう少し時間がかかるだろう。
「打撃ですか。打撃使いは少ないと聞いていますので厄介ですね」
「そうだな。変異種を討伐出来る人材となると更に少なくなるしな」
打撃は斬撃と比べて使える人が極端に少なすぎるので慢性的に人材不足だったりする。ハンマーや銃って他の武器で良いって人が多くて偏見を持たれたりするんだよなぁ。
ハンマーは剣と違って血とかが出ないのでダメージをちゃんと与えられているかどうかがわかり辛く、銃は魔法の方がモンスターに当てるのが簡単だからどうしても極める前に斬撃や魔法に行ってしまい、結果的に総数が少ないのである。
「でも、大体の変異種って1人で何とかなるから13聖人すら回ってこないんだけどな」
「………」
アーバスの任務の場合、討伐ランクが高いモンスターから優先的に割り振られるのでランクが高いモンスターはモンスターは大体アーバスが請け負っている。
一部SSランク以上のモンスターは13聖人に回ることがあるが、それも13聖人上位だけで足りるので下の連中は高くてもSランクの依頼が年数回入るかどうかなのである。
「メルファスってそんな組織でしたっけ?」
「ある意味俺も責任があるんだけどな」
実力者が13聖人に選ばれるのが本来の在り方なんだけどなぁ。昔は上位依頼の割り振りや実力者の情報共有の場所だったんだけど今は政治の場所らしいからな。俺はそこまで怒ってないが、リーゼロッテとリリファスは激怒しているらしい。
「そんな話は置いといて宝箱を開けようか」
「そうですね」
アーバス達は宝箱の前まで来ると、その色にサーラが首を傾げる。
「銀色の宝箱ですね。これはレア度+1の影響ですか?」
「それがわからないんだよなぁ」
ハイスライムからドロップした宝箱は銀色だったのだ。昨日の黄金のスライム以来だな。昨日は魔力増幅120%の指輪だったので期待ができるな。
「わかっていることは銅よりも1つ上の宝箱で中身も豪華かもということだけだな」
「つまり銅の1ランク上の宝箱でしょうか?」
「多分な」
仮説では銅の上だが、まだ銅の上が銀と確定したわけではないからな。中身にしても1回しか開けてないので今回も良いものが出るとは限らないからな。
「よし、開けるぜ」
アーバスは宝箱に手をかけるとそのまま上に開ける。そこにあったのは1振りの剣で刀身は紅く輝いており、見ただけで火属性系統の剣だと想像できる。
「これは属性剣ですか?」
「わからんな。ちょっと鑑定するから待ってくれるか?」
このタイプの剣には2つの種類があり、1つはアミールやサーラが使っている属性剣で、もう1つは属性付きの剣である。違いは習得できるのか付与されるのかだな。
属性剣はアミールやサーラが使ってる通りで、その剣を持っているとその属性の魔法が使えるようになるもので使い込めば習得も出来るという優れものである。
もう1つは属性付きの剣でこれは魔法を習得出来ないが、装備しているとダメージを与えた敵にその属性のダメージも入るというものだな。追加効果や追撃といった部類だろう。
こっちは魔法を習得出来ないせいで生半可の武器だと価値が付かないくらいには不評な武器である。しかも属性剣と違って良く出る上に見た目は属性剣と良く似てるのが余計に紛らわしい。
そもそもエクストリームの剣は全てクリスタルなので見た目で判別は相当厳しいが
「普通の剣の方かぁ。ハズレだな」
「そう簡単には出ませんか」
鑑定したら属性付きの剣の方だった。残念ではあるが、剣としての性能は生産品よりも上なので十分に良いのだけどな。
「ちなみにその剣はどうするつもりなのですか?」
「必要ないから、ある程度貯めたら纏めて売るかな」
必要のない武器を持ってても意味がないからな。トゥールのメンバーも独自の武器を持っているのでこの程度の武器を欲しがる人はいないだろう。
「そんな。勿体ないですよ」
「いくら生産品より質が良くても俺が持ってるものよりかは低いからな」
持っている生産武器が強すぎるからな。持っている生産品がドロップ品と入れ替わるなんてことは早々ないだろう。サーラからすると相当強い武器なんだけどな。
「でも、学生商会を使えば誰がドロップしたのかバレますし、普通の商会なら安く買い叩かれませんか?」
確かに普通の商会を経由したほうが高く売れるからな。学生商会だと普通の商会と比べたら価格は安くなるだろうけど買い叩かれることはないからな。それを嫌って普通の商会と取引をすると、買い取れないか、足元を見られて買い叩かれたりするリスクがあるからな。
「そこは問題ない。既に信頼している商会に頼んでいるからな」
武器はまだ渡していないが、装飾品は既に渡しているからな。オークションはまだ先だろうがいい値段で売れるはずだ。
「そんな商会があるのですね。もしかして普段からそこに素材を流しているのですか?」
「そうだな。メルファスで引き取る場合もあるが、大抵はそこに売ることが多いな」
メルファスは基本的には討伐がメインで素材を買い取ったりすることはないからな。サンプル目的でメルファスが買い取ることはあるものの、討伐したモンスターの大抵は個人で処理することが多い。
その為、メルファス所属の人間はメルファス経由で買い取りを出すか、商会やギルドに直接買い取ってもらうかしかないのである。
サーラ達の場合はギルドからの依頼なので自然とギルドになるが、アーバスの場合はルーファが商会をしてることもあってルーファ商会へと素材を下ろしている。
「お得意様なら安心ですね。ちなみにどこか聞いても?」
「それは答えられないな。万が一に向こうに迷惑がかかったら困るからな」
商人は信頼が命だからな。俺のせいでルーファの仕事に影響が出たら困るしな。
「そうですか。ギルド以外の依頼の時に利用しようかと思いましたが残念です」
「すまないな」
「結構大変なのですよ。ギルド以外だと結構足元を見られますからね」
どうやらギルド以外でも依頼があるのようで、そこでのモンスターの処理を苦戦しているようだった。年齢もあって素材の価値を知らないことが多いから買い叩かれやすいよな。高ランクのモンスターだと冒険者はギルドに買い取りを出すことが多いから商会に直接行かないしな。
商会に直接買い取りを出す人の大半は裏ルートでの討伐なので大手商会は買い取ってくれないから怪しい商会へ買い取りを出すしかないからな。
「ギルドから紹介してもらったらいいじゃないか」
「そうしたいのですけど、断られたんですよね」
「マジか。やりすぎたろ」
ギルドに頼んだら紹介を書いてもらうことでギルドを経由しなくても直接できる方法が存在するのだが、ギルド次第では紹介をしてくれないギルドもあったりする。それ自体は問題ないのだが、ギルド側が買い叩いていた場合は逆に処罰されるから注意が必要だな。
やりすぎだと思ったのはこういう場合は買い叩かれている可能性があると思ったからだ。
「ちなみにどこのギルドなんだ?」
「タポリスのギルドですね」
「王都ギルドじゃねぇか」
マジかよ。大国の首都ギルドでそんなことをやっているなんて何かやっているかもしれないな。王国で1番権力を持っているのはシエスだが、ギルドは独立した組織だからシエスの権力の影響下ではないんだよなぁ。
冒険者側からタポリスのギルドの不正を聞いたこともないが、万が一の可能性も否定出来ないな。
「そろそろ時間か帰るか」
「時間が経つのは早いですね、もう少し探索したかったですがら、仕方ないですね」
アーバスが魔道具の残り時間を確認すると残りは10分を切っていた。一応6層目を探索することが可能なのだが、最悪戦闘中に探索が終わるかもしれないので切りの良い5層で終了することにした。アーバス達は転移陣で入口へと帰還する。
「暗いですね」
「もう閉まっているからな」
アーバス達が入口へ戻ると片付けが終わっているので既に施設は消灯されていた。帰る時はいつもこうなのでサーラには慣れてもう必要があるけどな。
「それでここから出るには転移が必要なんですね?」
「そういうことだ。外に出るぞ」
アーバスはサーラを含めて転移を発動して施設の外へと移動する。
「本日はありがとうございしました。エリース様にはしっかり報告していますね」
「あぁ、頼むわ」
サーラのことだからしっかりと報告してくれるだろう。結果はリリファスから聞くことになるだろうけどな。
「それと、明日の任務のことだが」
「どうされました?」
任務自体はアミールと一緒に戦うだろうし、エリースだから特攻のような任務を与えることはないだろうしな。
「明日倒したモンスターと買い取り金額を教えてくれ。状態もわかる範囲で教えてくれると助かる」
念の為にタポリスのギルドの買い取り金額を聞いておいたほうがいいな。状況的に他のギルドに売却はしていないかもしれないからな。もしかするとないとは思うが、もし買い叩きの疑惑があるなら報告しないといけない。
「わかりました。口頭で良いですよね」
「あぁ。紙とかに書くと怪しまれるからな」
普段からメモを取ってないのなら取る方が怪しまれるからな。サーラには普段通りに活動してほしいからな。
「それでは私はこっちなので失礼しますね」
「そうだな。また、明後日だな」
「そうですね。では失礼します」
寮と校門への分かれ道でアーバスとサーラは解散したのであった。




