48話 エクストリームのボス
「やっと落ち着けるな。どうだ、エクストリームは?」
「想像以上ですね。自信が無くなりそうです」
今は4層目と5層目の間にあるボス前の広場だ。そこでアーバスはサーラにエクストリームについての感想を聞いていた。
「正直、私だけだとエリース様までは行かないにしてもSクラスですし、障壁に関しては自信はあるとは思っていましまが、まさかここまでの差があるとは思いませんでしたね」
「これくらいは余裕で防いで貰わないとな。変異種なんてどれだけ強度をつぎ込んでも防げる訳ではないからな」
実際手を抜いていた訳ではないが、障壁に遮光がないせいで簡単に障壁は破壊されるし遮光を入れれば今度は強度不足で障壁が破壊されてるしな。
「それは痛感しましたね。私の障壁なら何処でも通用すると思ってましたね」
「それは大きな間違いだな。メルファスからの依頼は余程の事がない限りは実力と見合うくらいの難易度のモンスターとしか戦えないからな」
「それって勝てて当然じゃないですか‥‥‥」
メルファスへの依頼は膨大であり、その依頼を13聖人に均等に配分することで依頼を消化していて、13聖人が回れないところは部下に指名依頼を出して対処している形だ。ただ、アーバスが学園に入るまでは災害級などの強敵は全てアーバスが担当していたので13聖人には強敵が回ってくることはなかったのだ。
だが、今はアーバス不在の為に13聖人が対処することになっており、その影響かはわからないが既に2人が殉職しているけどな。
これもアーバスが強敵を担当するようになった結果、実力に見合わなくても政治力だけで13聖人になれるようになった結果なので当然ではあるか。
アーバスが担当する前は実力で決めていたようだから、アーバスのせいで実力が必要なくなって政治力で決めるようになってしまったのだろうなぁ。
「そうだな。だからメルファス所属は勝っていても慢心せずに努力しないといけない」
「そうですね。思ったよりも未熟でしたね」
実績を積まないと13聖人になれないどころか、そもそも候補にすら上がらないからな。モンスターに勝てるだけではなく、使える魔法を増やしたり、自身の魔法を極めたりしなければいつまで経っても燻ったままになるだろう。
「暫くは道中で障壁の練習だな」
「はい」
壁張りの練習くらいはそこまで時間がかからないからエクストリームを攻略しながらでもそこまでペースを落とすことなく攻略していけるだろう。
「ところで、ボスって何のモンスターなんですかね」
「知らないな。ここはダンジョン攻略の最前線だ。道中、ボス共に何が通常で何かレアかも手探りな状態だ」
エクストリームに入るまではモンスターが変異種なことすらわからなかったからな。全てが未知数だし、変異種なんてメルファスの任務でもほぼなかったからな。アーバスですら変異種の知識が殆どない状態だ。
「そうでしたね。私は何をすればいいですかね」
「とりあえずは見学だな。何を任せていいのかすらわからんからな」
アーバスとサーラは休憩を終えると5層目へと足を踏み入れる。ボスの部屋には階段から見るに何もおらず、どうやらノーマルと同じような感じだった。
「気をつけろよ。不意打ちとかや罠もあり得るからな」
「はい。わかりました」
アーバスは障壁を張るとそのまま入口から入る。周囲を確認や索敵を行うが、モンスターの存在は確認出来なかった。
アーバスはサーラにジェスチャーを送るとサーラは安心した様子で5層目に足を踏み入れたのだ。
「ここは変わらないのですね」
「そうだな」
サーラが完全に足を踏み入れるとダンジョンの中心で光が輝き出す。その光はノーマルの時と違ってダイヤモンドの輝きのようなのを周囲に纏わせている。
そして、その光が中央に向かって集まって行くとダイヤモンドのエフェクトと共にモンスターが現れる。
「スライムですね」
「ハイスライムの変異種みたいだな」
出てきたスライムも直ぐに看破で鑑定すると、ハイスライムという名前と共にステータスが出てくる。
どうやらハイスライムの変異種みたいだが、特段変なスキルは確認出来なかったな。
「一発受けたくないんだけど、データ取りしないといけないのがなぁ」
魔法に耐性のないモンスター相手なら、本来は先手必勝で大量の魔法を叩きつけるのだが、エクストリームの探索には調査も付いているのでデータを取る必要があるのだ。
アーバスは7つの魔法陣と展開させるとそこから1発ずつ魔力弾を放ってダメージを確認する。
「アーバス、何をしてるんですか?」
アーバスの行動が不思議だったのだろう。サーラが理由を聞いてきたのであった。
「弱点の確認だな。変異種はその少なさもあってちゃんとしたデータがメルファスにはないんだよ。だから色々と確認して報告する必要があるんだよ」
「退場の可能性もあるのに大変ですね」
「データがあることで他の13聖人や冒険者に適正に依頼が出来るから損ではないんだよ」
変異種の中身が段々わかってきたらメルファスも他の人材に割り振りが出来るから結果的にはアーバスの負担が軽くなるかもしれないからな。
「弱点は火と水か」
魔力弾を打ち込んだ結果、その2つの属性だけダメージ量が多かったので弱点として問題ないだろう。火属性はスライムの共通弱点なのでそこもこの個体は変わらずだな。
「さて、向こうの攻撃だな。頼むから耐えてくれよ」
ハイスライムは息を吸い込むような動作をするとそこから何かを吐き出したようで、それが障壁へ当たると同時に爆発する。
「キャァァァァァァァ」
「威力はあるが、昨日程じゃないな」
「これでそうなのですか?どうなってるのですか」
試しに昨日張っていた障壁と同じ障壁を今の障壁の上に重ねるように展開する。サーラはあまりの衝撃に多重展開されたことも気付いていないようだった。ハイスライムは爆発が終わると先程と同じように吐き出して攻撃する。
「また、防げましたね」
「そうだな」
ハイスライムの攻撃は外の障壁も貫通出来ずに爆発して終わってしまう。アーバスはハイスライムが攻撃する度に徐々に防御の低い障壁を展開していき、ハイスライムの攻撃の実験台にする。
「結構防ぎましたね。障壁は大丈夫なのですか?」
「今のところは問題ないな。遮光をマスターしたらサーラでも防げるんじゃないか?」
爆発自体は大した威力ではなく、ダメージが出てるのは障壁貫通による継続ダメージだからな。光を貫通させなければ、この程度はサーラでも防げそうだ。
アーバスは試しにとばかりに遮光なしの普通の障壁を展開する。強度は今張っているものと同じ障壁だな。
そしてハイスライムに攻撃させるとアーバスはその障壁で防ごうとする。
パリィン
「キャァァ」
「やっぱり無理か」
遮光をつけなかった障壁は爆発してからわずか3秒しか保たずに破壊されてしまった。最大強度でも3秒かぁ。やっぱり遮光のありなしで倒す難易度に結構な差が生まれるな
「なにをしたのですか?」
「なにをって遮光なしの障壁を展開しただけだぞ」
まさかそんな簡単に割れてしまうとは思わなかったけどな。サーラに追加で遮光なしの状態で今出せる最高強度なことを説明すると簡単に納得してくれたのだ。
「そうなのですね。遮光って大事すぎませんか?」
「大事も何も上位では必須項目だぞ」
遮光以外のものも含めて上位モンスターと戦闘する時は必須だからな。障壁が貫通されて破壊されるとかそのまま死ぬから洒落にならない。
「さて、残り2つもやっておかないとな」
「まだやることがあるのですか!?」
サーラはもう十分にやったと思っているのだが、今やったのは弱点と相手の攻撃の強さだけなのである。実は肝心なところをやっていなかったりする。
アーバスはまずアイテムボックスから銃と取り出して構えるとそのまま無造作に一発弾を発射する。弾丸は高速ということもあり、ハイスライムが避ける隙きを与えずに直撃させる。
「弾ダメージは補正ありか」
アーバスはそう呟くと次は銃を剣に持ち変えると転移でハイスライムの背後に回り斬りつける。
「剣ダメージは逆補正か、スライムしだし仕方ないな」
アーバスは1人で納得して、サーラの横に転移するとハイスライムの周りに大量の魔法陣を展開する。
「じゃあな」
大量に叩き付けた炎属性の魔法によりハイスライムは一瞬でHPが無くなり、宝箱だけ残して消えていったのであった。




