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31話 リンウェルをパーティーに入れよう

「理由を聞いてもええか?」


アーバスからパーティーの勧誘を受けたリンウェルは何故自分に白羽の矢が立ったのかわからないらしい。俺もリンウェルが前衛というのを知らなかったら声をかけてなかったくらいだ。


「あぁ。まずだがリンウェルは本来は前衛らしいな」

 

「せやで。こう見えても槍で結構強かったんやで」


リンウェルは声色こそいつも通りに振る舞ってはいたが、アーバスはそれがどこか自信がなさそうに見えた。


「ところがお前はここまで槍を一切使っていない。対抗戦や練習を含めてな」


そんなに槍が強いのなら槍で戦いながら戦術を勉強すればいいはずだし、そもそも自分の得意武器を封印してまで戦う必要なんてない。


「なんでSクラスに入れるくらいの実力がありながら使わないんだ?理由を教えてくれ」


「指揮を勉強したいからで許してや」


「それで見逃す理由がないだろ」


まるで槍から逃げているような感じだしな。恐らく何かあったと考えるのが自然だ。


「はぁ。アーバスには隠しごとは出来へんか…しゃあない、教えたるわ。私が何で槍を使うのを止めたのかをな」


そこからリンウェルが語ったのは武家貴族によくある話だった。リンウェルには兄と姉が居るそうで、父は槍1本で成り上がった貴族だそうだ。そして末っ子のリンウェルは当然兄と姉と比べられることが多く、よく父からは罵倒されていたそうだ。


「認めてもらう為に必死で努力したんや。それこそ兄上や姉上より上のSクラスに入るくらいにな」


兄と姉は最終的にはSクラスで卒業したそうだが、入学時はAクラスだったとのことだ。冒険者としはやってなかったそうで、本当に努力だけでSクラスに入ったことになる。Aクラスでも入るのは大変だも聞くがSクラスだもんな。相当頑張ったのだろう。


「それを親父に報告したら『俺の子だから当たり前だ。入学試験でSクラスになったからって何を喜んでいる』といいよったんや。こっちはどれだけ頑張ったと思ってんねん」


あー、リンウェルも苦労したんだな。それでそんなことを言われてやる気が無くなったんだな。


「それやからもう槍は止めて前からやりたかった指揮官を目指すことにしたんや」


アーバスは少し考える。そのままでも指揮官として進むのも良いのだがSクラスの腕前だからな。ただ、このまま腐らせるのは勿体無いとアーバスは感じてしまった。


「それもありだが、今のままだとどっち付かずになるかもしれんぞ」


「降格も覚悟の上や」


指揮官として成功すればいいが問題は時間だ。1年以内に指揮官としての実力を認めてもらえないと、年ごとにクラス替えがあるのでそのタイミングでAクラス以下への降格になるだろうな。特に評価されていた前衛での評価が0になるので加点するところもないしな。要するに1年でバッファーと指揮能力でSクラスの実力を出す必要があるのだ。


「降格でもいいか…その場合家はどう言うんだろうな」


「グッ…」


降格した場合、家から十中八九何か言われるだろう。Aクラス落ちならまだ怒られるのと長期休みなしで済むかもしれないがBクラス以下に落ちた場合は家の意向で退学もチラついてくるだろう。そうなった場合はただ単に1年間を棒に振っただけになってしまう。


「アーバスは指揮官なんて辞めて槍を磨けと言ってるんか」


「そこまでは言ってないさ。前衛の能力を維持しながら指揮官の勉強をしろと言ってるだけだ」


目指すななんて一言も言ってないしな。むしろ指揮官能力なんて勉強して損なんてないと思ってるくらいだ。ただ、指揮官を勉強するせいでSランクまで極めた槍術を捨てるのが勿体ないと言ってるだけである。


「前衛しながら指揮しろとか余計に無理ちゃうか。どんな頭しとんねん」


「ロインがしてるから不可能ではないだろ」


場数を踏めばそういうのは勝手に身につくしな。世界を見れば前衛の出来る指揮官なんて案外いるし、そういう人物ほど周りからの信頼も厚いし実力があるんだよ。リンウェルは少し考えると諦めたのか


「アーバスが意地でもダンジョンに連れていきたいことはわかった。しゃあないわ、その話に乗ったるわ」


「ありがとうなリンウェル」


「但し、わからんとことかあったら教えてな」


「それくらい朝飯前だ」


交渉成功だな。これで明日からリンウェルにもダンジョンへ一緒に行くができるようになったな。  


「時間はまた追って連絡する。明日から頼むな」


「了解やわ。久しぶりのモンスターになるから手加減はしてな」


リンウェルとそう言葉を交わすともういい時間なので3人と解散となった。そしてその足で校長室へと向う


「来たわね。ソファーに座って頂戴」


アーバスは言われた通りにソファーに座るとシエスがその対面に座る。


「まずはパーティーの状況を説明して頂戴」


「パーティーかそうだなぁ」


エクストリームは後回しね。あっちの方が衝撃が凄いから判断は間違ってはないか、アーバスはどこから話そうかと考えてから


「とりあえずレベル7はクリアしたかな」


「!?………ゲホッゲホッゲホッ」


アーバスの言葉に紅茶を飲んでいたシエスがむせ返す。そんなに衝撃すぎるか?昨日もレベル6を攻略したからそこまでビッグニュースじゃないと思うんだけどな。


「ちなみに俺は普通に道案内しただけでショートカットは一切してないぞ」


「はい?」


何も嘘は言ってないからな。今日は1体しかモンスターを倒してないしな


「レベル7ですよね。入ダンして2日でそれは速すぎませんか?」


「普通は知らんがペースは至って普通だぞ」


「………」


休憩したり宝箱ではしゃぐ時間もあるくらいだからな。道中も雷魔法の習得練習したりと最速で攻略している訳じゃないしな。


「アーバス、ダンジョンの1レベルの攻略日数ってどれくらいかご存知ですか?」


「知らんな」


レベルが上がるにつれてダンジョンの1層も少しずつ広くなっていっているからな。闇雲に探すとしても3日あれば余裕でクリア出来るだろう。そう思っているとシエスからの答えは予想外な回答だった。


「初心者ダンジョンであるレベル5までは1レベルを3日でクリア出来る人は多いです。が、そこから先のレベル6以上になると普通は1週間程度はかかるのですよ」


「そんなにかかるか?」


レベル6からはモンスターが強化されているとはいえそこまで強くはなかったぞ。それなのに1週間かかるとかどういうことだよ。


「熟練探索者ならそこまでかからないですが、学生ですからね。練度も高い人も極少数ですので時間がかかるのですよ」


「なる程な。それは知らなかったな」


学生だから索敵等のサポートが出来る人間が少ないのはわかるが、それでも掛かりすぎだろう。そのペースなら卒業までにいけるレベルなんて20以下じゃないのか?でも、こっちはマイペースで攻略ペースしているから他人の攻略速度なんて気にしていないが、流石にそれは遅すぎると思うぞ。それに今更、意図的に攻略速度を落とすのは難しいだろう。


「攻略のペースを落とせとは言わないですが、今のペースが十分に早いことだけは認識してください」 


「あぁ。わかった」


攻略ペースは今のままで大丈夫とのとこなので今後も変わらずでやっていくことにしようかな。ただ、ペースは早いらしいので今の攻略階層は他人にはあまり言わない方がいいな。


「他は何かありましたか?」


「そうだな。サーラが雷魔法を習得したことかな」


「待ってください、どういうことですか?」


「そのままの意味だが?」


シエスの頭が爆発したらしい。そりゃそうだよな。まさか雷魔法なんて習得するなんて思わなかったよな。


「どうやってサーラに雷魔法を覚えさせたの?」


「それにはエクストリームに関係があるがいいか?」


「えぇ。いいわよ」


アーバスは昨日のエクストリームでドロップした雷刀とサーラの習得速度について話した。シエスは話を聞きながら時折ため息や頭を抱えていたが気のせいだろう。


「アーバス。その実物はありますか?」


「今はサーラが管理しているな。明日で良ければ実物を見せるけど」


「国宝を超えるような品物を簡単に渡すのはどうかと思いますけど。少なくともアーバスが管理するべきですよ」


シエスがそんなことを言う。管理なんてしなくても何かがあったらトゥールが動くので問題ないと思うのだけど。


「もしかしてトゥールがあるから盗まれてもなんとかなると思っているのかしら」


「そうだが?」


「アーバス。そんな簡単にトゥールが動くのは他が色々と困るわよ」


困ることはないだろう。ただメルファスにとっては表面上、トゥールとは敵対関係となっているので確かに大胆に動かせばメルファス側も人員を出さないといけないのでそこは迷惑がかかるな


「ならリーゼロッテを使って屠るしかないか」


「どこまで物騒なのよ。脳筋すぎない?」


「スマートだと思ったんだがなぁ」


脳筋って言うよりはその方が人員や効率が良いからな。正攻法なんてやるほうが時間かかるし、リーゼロッテならメルファスも兼任しているので多少暴れたところでメルファスが出撃してくることはないだろう。


「その話はもう置いときましょうか。他に何かありますか?」


「そういや。不思議なスキルの装飾品が出てな。これ知ってるか?」


「レア度+1ですか。本当にレアなものが出ましたね」


「知ってるのか?」


どうやらシエスは知っているらしい。もしかして過去にはあって現在ではほぼ出ないものなのか。そんなことを考えていると


「これはですね。ダンジョンでしかドロップしないし、ダンジョンでしか使えないスキルなんです」


「ダンジョン特有ってやつか」


「そうなりますね。スキルは単純でドロップ率が減る代わりにレアなスキルが出やすくなるスキルですね。最大で3までありますが、重複はしないので気をつけてくださいね」


なる程な。だからこれを着けた後だとドロップが極端に減ったのか。それに重複はしないとなるとレア度+3を出すのは結構運が必要になりそうだな。


「それとそのスキルは+1であっても着けていない時よりも換金率やレア度が高いのが出るので、私はレア度+1でも着けることをお勧めしています」


「そうなのか。じゃあ装備ようにするわ。ありがとうシエス」


まぁ、普通にやっても良いドロップは出ないしな。換金率が高いらしいのでダンジョンに行くときはつけっぱなしだな。

さて、次は本題を話しますかね。

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