夏祭り 7
イズマと手を繋ぎあれこれ見ながら歩いていると、あめ屋、と書かれた屋台を見つけた。
ぼうっと見ていると、イズマに促され、そのあめ屋を見に行くことになった。
あたしたちの前にいたお客さんが商品を買って立ち去ってから、商品を見てみる。
なるほど、あめ屋というだけあって、べっこう飴やいちご飴、ぶどう飴など並んでいた。もちろん忘れちゃいけない、真っ赤なりんご飴が大きいのと小さいのの2種類がある。
どれもこれもきらきらと輝いていて綺麗だ。
そういえば、初めてりんご飴買ったとき、残しちゃったなぁ。
小さい頃だったから、コーティングの飴は硬いし、中のりんごはもさもさして酸っぱいし、思ってたのと違くて結局全部食べきれずに残してしまったのだ。ああ、なんて懐かしい。
屋台の明かりに照らされて、きらきら輝くりんご飴はとても美味しそうで、今なら食べれる気がする。
あんまりにもりんご飴をじっと見ていたからだろうか、屋台のおじさんがあたしが見ていたりんご飴を掴むと、ずいと目の前に差し出してきた。
「ほら、これだろ?」
「あ……」
「持っていきな。夏祭りはやっぱりりんご飴だろう。」
「はい。あーっと、」
バッグの中から財布を取り出そうともたもたしていると、イズマが空いている左手でりんご飴を受け取ってお礼を言っていた。
「さてと、行こうか。」
「えっ?だってお金は……」
ぐい、と手を引かれお金を払う前に屋台から離れることになってしまった。
「ちょっとイズマ、タダでくれるわけじゃないんだからお金を払わないと!」
「タダなんだよ。ここはお金という概念がないからね。どこの屋台も値段が書いてないのが証拠だ。」
改めて屋台を見てみると、確かに値段が書かれていない。
ここは売り買いという概念もないのだろうか。
「客が商品を選び、それを渡す。ただそういう一連の流れを繰り返すだけだ。夏祭りが終われば、全てが元通りになった状態でまた最初から夏祭りが始まる。」
全てが元通りになるなら、売上なんていらないだろう。なるほど、お金なんていらないわけだ。
「あとね、ここでのものを飲み食いすると戻れなくなるよ。」
「ちょっと待って、初耳なんだけど!」
「そうだね、今言ったから。」
いやいや、ここ屋台沢山あるし、何か食べたりする機会なんていっぱいあるでしょう。なぜ最初に説明しなかった?今更すぎる。
とは言っても、思い返せばイズマはあたしに渡すことなくすぐにりんご飴を受け取っていたから、食べさせないようにはしていたのかな。
「ていうか、食べないなら受け取らなくても良かったんじゃ?」
「言っただろう夏祭りを楽しまないとって。」
つまり、りんご飴を受け取ることは必要なことだったのか。
それなら言ってくれればいいのにと思う。
「そうは言っても食べれないものをもらっても楽しくない……食品サンプル配布場じゃないか。」
「でもキミはこれが欲しかったんだろう?欲しかったものをもらう。それこそが大事なんだよ。」
楽しさよりも欲しいものを手に入れることが重要視されているのか。うんうん、なるほど、ちっともわかんない。ただそんなもんだと受け入れておく。




