第14話 悪魔
それから数日後、やっと愛美と会う許可が下りて、奏はジャンに連れられて牢へとやって来た。
城から隔離された地下に造られた牢屋は、石と鉄格子だけの殺風景な場所だった。冷たい空気に奏は身震いする。
「寒いか?」
先を歩いていたジャンが振り向き声をかけてくれる。
「ううん、なんか…こう…空気がね。」
「まぁ、牢獄だからな。良い場所じゃないのは確かだ。」
「なんかいかにも出そうなところだねー。」
肝試しを楽しむ子供のようなセツを奏が睨み付けた。だけどセツは可愛らしいお尻を向けていて、奏の視線には気づいていない。
「奏、大丈夫ですか?」
「あまりこういう場所が得意じゃなくて」
奏の顔を覗き込んだリズの衣装は真っ黒ではなく、いつものメイド服を着用していた。護衛を兼ねているのに動けるのかと奏が聞いたら、どうもこちらの服装の方がしっくりくるらしい。
「あまり無理はなさらないでくださいね。」
「うん、ありがとう。」
心配そうに言うリズに、奏は大丈夫だと笑って見せると、ジャンが後ろを振り替えっていたずらっ子の顔をした。
「なーに怖かったら俺にくっついてても良いんだぜ。」
「こ、こんな時に何言ってんのよっ」
「つれないねぇ。」
と言いつつジャンはまんざらでもない顔をした。隣にいるリズもニヤニヤして楽しそうだ。
“奏、真っ赤だねー。”
“う、うるさいわよ、セツ”
ムギュッと尻尾を掴む。
“イタッ!”
“えっ、ごめん。そんな強く引っ張ったつもりないんだけど…”
“尻尾はデリケートなんだよー。大切に扱ってもらえないかなぁ。”
“ご、ごめん。”
分かればよろしい。と言わんばかりにうんうんと頷くセツ。なんだか理不尽だと思う奏の緊張は、少し解れていた。
しばらく歩くと、石で造られた壁だけが続く温度のなかった洞窟のような道に、鉄格子というアートが加えられた。
「そろそろ着くぞ。」
ジャンの言葉に先程までの悪戯な雰囲気は消え、リズにも笑顔が消えてお仕事モードに入っている。
急に緊張感が辺りを張り詰めた気がして、奏も背すじをピン!と正す。
「...奏が頼りだ。」
「うん。」
「まっ、失敗したら国外にでも逃げようや。」
ジャンが脱力感満載でそう言うので、奏は笑ってしまう。
「相変わらず緊張感ないね。」
「相変わらずとは失礼な。少しでも緊張が解れるようにだな…」
「うん、ありがとう。じゃあ、もしもの時はよろしくね。」
「おうよ。」
奏が苦笑すればジャンはニッと笑う。
「その時は私もお供しますからっ」
そう横でリズも加われば、奏の心にあった失敗への恐怖なんて消えてしまった。
「準備は良いか?」
「ええ、いつでも」
ジャンはその言葉を聞くと、鉄格子の中でも明かりが灯ったところに向かう。それは道の終わりに造られた一等頑丈な牢の前だった。
壁には何かの紋が刻まれている。
恐らくは魔封じか何かなのだろう。
「ここだ。」
そう言ってジャンは道を譲るように、奏に前を空ける。
牢屋の中は真っ暗で何も見えない。
よく目を凝らして、奏はぼんやりと人の形を捉えることができた。
ジャランと鉄の擦れる音がして、その塊が動いた。
「…なに?笑いにでも来たの?」
擦れた声は間違いなく愛美のものだった。顔色までは伺えないが、睨み付ける視線は病んだ人間のそれだ。
眼孔は鋭いがどこか疲れたような感じがする。魔法を封じられているからか、はたまた無意味だと悟ったのか、ジャンに色目を使う雰囲気はないようだ。
「いいえ。」
「じゃあ、今までの仕返しにでも来たのかしら?」
奏は静かに頭を左右に振って否定する。
「貴女に用事はないよ。」
「じゃあなによ…」と言いかけて思い当たることがあったのか、愛美はハッとして自分の斜め上に視線を上げた。
「そこにいるのね?」
確認するように奏が聞けば、愛美はばつの悪そうな顔をした。
「なになに、僕にようなのかい?お嬢さん。」
声は闇の中から聞こえてくる。
声自体は無邪気な子供のようだが、セツのような声とは違う。光が届かない、深い奥底に引き込むような誘惑的なものを感じる。意識を保たないと持って行かれる。そんな感覚だ。
──愛美はこんなものに耐えていたのか。
奏は素直にそう思った。この圧に耐えながら、彼の魔力を借りていたのかと。
「そうよ。出てきてちょうだい。」
奏の言葉を聞いてジャンとリズが顔を見合わせた。
おそらく2人には悪魔の声が聞こえていないのだ。
「そうしたいのは山々なんだけど、ここから出してくれないと…」
「それはできない相談ね。」
「だよねー。まぁ、良いんだけどさ。」
ケラケラと笑う悪魔はこのやり取りを楽しんでいるようだった。
「どのみち君の前には姿を見せられないよ?」
「どうして?」
「聞いてくれる!?」
パアッと嬉しそうな声に変化し、魔力が少しだけ奏の方に近づいた気がした。
「酷いんだよー。愛美がね本契約してくれないのさ。」
「あんたとなんて契約するはずがないでしょ。」
「ほら、こんな調子だ。だから姿を現すこともできないんだ。」
「ひどくなーい?」と距離感のない言葉に、奏は彼のペースに飲み込まれそうになる。
「奏、ダメだよ。こんな奴の話をまともに聞いたら。」
「分かってる。」
セツの忠告に頷くと、目の前にいるであろう悪魔の気配ががらりと変わった。
「黙れよ、精霊。俺はお前らみたいな、お気楽な奴等を見てると滅ぼしたくなるんだ。それに、今、俺はこの子と話をしてるの。精霊は黙ってろよ。」
愛想の欠片もない、さっきの混ざった声に奏は半身を引く。それと入れ替わるように、セツが牢の前に出てきて腰に手を当ててフンッと、鼻で笑った。
「名前も貰えない悪魔がえらそーに。」
「あー?名前をもらっておいて、その程度の魔力しかない奴に言われたくない。」
鉄格子に向かってガンを飛ばしていたセツがくるりとこちらを振り返る。
「ねー、このまま仮主人ごと燃やして良い?」
「ダメに決まってるでしょ!」
自分の命の危機に、目を見開いて驚く愛美を庇うわけではないが、奏は強い口調で答えた。
するとセツは「ちぇ…」とつまらなさそうな反応を見せてそれ以上はなにも言わなかった。
奏は改めて悪魔に向き直り、「ねぇ…」と声をかける。
「悪魔さん。提案なんだけれど…」
「なーに?」
無邪気な声は先程までの不機嫌さが欠片も感じられない。つかみどころがないなと、奏は思う。
「私と契約しない?」
「えっ…」「あんたバカじゃないの!?」
悪魔が絶句し、愛美が叫ぶ。予想通りの反応に奏は笑ってしまいそうになるのを堪えて冷静さを装った。
「良いの!?俺、悪魔だよ?精霊じゃないんだよ!?」
「え、ええ。分かってるよ。悪魔の貴方と契約したいのだけど…どう?」
「どうって…願ったり叶ったりだよ!本当に?本当に良いの??」
愛美は呆れたのか、もうなにも口を挟まない。
悪魔の反応が予想以上に素直なものだったので、奏も素直な気持ちで思ったことを口にしてみる。
「そんなに嬉しいことなの?」
「うん!だって取り憑くんじゃなくて、契約してもらえるんでしょ!じゃあ…」
続く言葉は鬼が出るか蛇が出るか…などと奏が不安に思えば、悪魔はただ楽しそうに言葉を続けた。
「現世に体現できるじゃん!」
「え?」
「た・い・げ・ん!姿を現せるってことでしょ?この世界の悪魔は誰にも見て貰えないわけだよ。」
奏には悪魔が魔力の塊のようなものにしか見えていない。
「さっきも言ったけどさ、君にも俺は見えないでしょ?ほら、聖女ですら見えないんだ。絶望的だよね。俺の魅力溢れる姿をさ、誰も見れないなんて…ふざけてる。」
「え、うそ、それだけ?」
思わず口から出てしまって奏はまずい!と口を塞ぐがもちろん遅く、悪魔は機嫌を悪くしたのか魔力が膨れ上がる。
「それだけって…それが大変なんだよ!この願いだけはどうやっても自分だけの努力じゃ叶えられないんだ。だけど、悪魔と契約したがる奴なんていないし、もし、いたとしても大抵が魔力不足で契約すらできないから…。でも、君なら魔力も十分だし問題ないよ。まぁ、贅沢を言うならその精霊はいらないけどねー。解約してくれない?」
「それは出来ない。」
「だよねー。」
そう答えることを分かっていたような反応にどこまで本気で言っているのか、奏は掴めないでいた。
「こんなの相手にしないで、自分の好きな契約条件を考えなよ。」
「契約条件?」
「あー、そっか…そこのクソ悪魔に記憶なくされてるんだよね。」
セツが恨みのこもった視線を向ければ、悪魔の楽しそうな笑い声が聞こえる。
「契約するのには互いに1つずつ条件を付けられるんだよ。そこのクソ悪魔は具現化するのを条件にすれば良いでしょ。こっちはこのクソ悪魔が暴走しないような条件を付ければ良いよ。」
「さっきから、クソクソ失礼な精霊だなぁ。」
「名前がないんだからクソ悪魔で十分だよ。」
セツに言われて奏はどうしたものかと悩む。
単純に人間を攻撃しない。という条件だと他の生き物が攻撃される気がするし、奏自身が操られた場合にどうなるか分からない。かといって乗っ取られないように魅了を使えないようにしても、この悪魔が直接的に動いたらダメだろう。
「決まった?」
「そんなすぐには決まらないよ。」
こんな難題がすぐに解決する訳がないと、奏は口をへの時に曲げる。
「なんで?簡単じゃん。魔力を勝手に行使しない。とか、魔力自体をその辺の魔物レベルに下げる。とか。色々あるよ。」
「へ?そんなの出来るの?」
「このクソ悪魔が条件を飲めばね。」
「え?飲むの?そんな条件?」
「飲む訳ねーだろ!アホか!」
当然の答えが牢獄の中から返ってくる。
それはそうだろうと、奏ですら頷きそうになるが、セツはニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。
「へぇ…お前、こんな条件も受け入れられないくらい、その夢って薄っぺらいものだったのぉ?その程度だったのかぁ。」
「な、なっ!そんな訳あるか!どんな条件を飲んででも叶えたいと思う野望なんだぞ!」
悪魔が慌てたようにそう言葉にした。
「言ったね。」
「げっ…はめられた。ああ!このクソ!お前、精霊じゃなくて悪魔だろ!こんな性根の腐った精霊見たことねーぞ!!」
鉄格子をすり抜けてくるのではないかと思うほどに悪魔の魔力を近くに感じて、奏は一歩後ずさる。
「え?なに?どういうこと?」
意味が分からずに奏が聞けば、悪魔をからかっていたセツが振り向いて教えてくれる。
「ああ、僕たち精霊や悪魔って生き物はね。口にしたことは絶対なんだよ。そう言う縛りで生きているんだ。」
「なら、誰かを殺すって言ったらそうしなきゃいけないの?」
「いや、当てはまるのは自分に対することだけだよ。例えば、僕は何があっても奏を裏切らない。とか…ね。」
「じゃあ、セツが死ぬって言ったら死んじゃうの?」
「物騒なこと言うね……でも、まぁ理屈としてはそうなる。ただ、心から思ったことだけだから、なかなか死ぬことはないと思うよ。」
セツはそう言うと一度大きく伸びをして、こんな面倒ごと早く終わらせようよと、奏を促すように悪魔へと向き直らせる。
「今、言質はとった。だからどんな条件付けでも可能だよ。奏の好きなように条件を付ければ良いさ。」
「…好きなように。」
奏は後ろで様子を見守ってくれているジャンとリズを振り返る。
ジャンはセツの声が聞こえているからか、ある程度の状況を把握しているようで、「奏の好きにしろ。」とだけ言った。
リズは「どんな結果になろうと奏を信じています。」と言ってくれる。
なら…と、奏の心は決まった。
「私からの条件は…自分の心に嘘をつかない。」
「はぁ?なにそれ?あんたばっかじゃないの!?」
その条件に怒り出したのは悪魔本人だった。
「何でも条件付けられんのに、自分に嘘をつかない?それだけ?魔法も魅了も使い放題じゃん。ってことはだよ?国だって滅ぼせるんだよ?分かってる?」
「そんなことしようとしたら止める。」
「止めるって悪魔を?」
「できるよ。だってセツもいるし。ねっ。」
奏の条件を聞いて呆けていたセツだったが、奏の言葉にふわふわな胸を張って可愛い肉球でポンと胸を叩いた。
「もっちろん!僕は奏の味方だからね。こんなクソ悪魔なんて一撃で塵にしてあげるよ。」
「あん?なめんなよ。俺、悪魔だよ。分かってる?」
「分かってるよ。だから契約して。」
ピシャリと奏が言えば悪魔はまだ不満気だったが、渋々と契約の言葉を口にした。
「これで完了だ。」
「これだけ?」
姿も変わらず見えない悪魔の方を何となく見て、奏は首をかしげる。
「そう、これだけ。じゃあ、名前を付けてよ。」
「うーんと…エンはどうかな?」
「意味は?」
「闇。漢字でエンと読むの。単純すぎる?」
「ううん、すごく良いよ!!気に入った!」
そう悪魔が言うと、突然、悪魔の魔力を感じていた辺りが淡く光出した。目が痛くなるほどパアッと光り、眩しさに目を閉じる。
明るい感覚が消え、ゆっくりと目を開けた。真っ暗な中になにかいるのは分かったが、目が暗闇に慣れなくて良く見えない。じっとそのなにかを見て目が慣れるのを待った。
「え?」
奏から漏れたのはそんな感想だった。
目の前に映るのは真っ黒いほわほわの毛玉。大きさは20センチくらいで頭らしき場所には三角の耳がふたつ。胴体にはスラリとした足が4本あり、お尻にはスラッとした長い尻尾が生えていた。
それはどこからどう見ても前の世界にいた猫そのもので、セツと色は違うが同じような形をしていた。唯一彼とも違うのは、背中から生えたコウモリのような真っ黒な翼くらい。
「体現したかったって…ねこなの?」
「ち、違うよっ!これはあんたの…奏が考えた姿だろ!」
「えっ?そうなの?」
ならセツもそうなのかと彼を見れば「うん。」と、頷かれる。
「名付けをすると契約主の考えている姿形に変わるんだよ。」
「え?なら、セツはなんで名前をつける前に姿があったの?」
「ああ、それは…忘れちゃった。」
てへへと頭を掻くセツに、はぐらかされたのだともちろん分かるが、問い詰めたところで答えが貰えないのも分かっていた。
「無視すんなよっ。」
「ごめんごめん。エン、それで貴方が見せたい姿って?」
尋ねれば聞いてもらえたのが嬉しかったのか、パアッと明るい表情をするエンは空中でくるんと一回転した。
ボンッとねこの姿は消えて、代わりに現れたのは人間だった。いや実際は人間とは違うのたが、どうみても超絶美形な男子だった。外国人のような高身長に、目鼻立ちがしっかりとしている。髪や瞳は真っ黒で日本人のようだが、整ったこの顔立ちはテレビですら見たことがない。
だが、それは人間とは明らかに違っているのだ。
頭に生えた二本の角。ニッと笑う口からは吸血鬼のような牙が覗いている。そして背中には、やはりコウモリのような翼が生えている。
「わぁ…イケメン…」
「そのイケメンって言葉の意味は分からないけど、感動してるのは伝わってるぜ。」
得意気な顔をするエンは、やはりどことなく猫のエンを思わせる。
「カッコいいよ。カッコいいとは思うんだけど、悪魔ってもっとこう…ムキムキの半裸でさ、角も羊みたいにぐねぐねって主張してて、ヤギのような顔じゃないの?」
「なにそれ?どこの悪魔だよ。」
エンに突っ込まれてしまい、奏は自分の思う悪魔は元の世界のものでしかないと思い知る。
この世界で悪魔がこうなら、それは不自然でもなんでもない。奏の固定概念の問題となる。
「セツ、悪魔ってこうなの?」
「さあ?」
だからこそ奏はこの世界の住人に質問したのだが、返ってくる答えはそっけないものだった。
「さあ?って…」
「コイツも言ってたでしょ?体現しない限り姿はないって。僕たちは概念でしかないんだ。君たちの思うような姿形はないんだよ。」
「じゃあ、エンの言う悪魔の姿って…」
「自分の理想を形にしたってだけだよ。人間にもあるでしょ?見目が良いとか美しいとか可愛いとかさ。それと同じだよ。」
「でも、なんで人間ぽいの?」
「それは悪魔が元々人間っぽさがあるからじゃない?」
「そうなの?」
「だって人に取り憑こうって考えるくらいなんだよ。人間的な考え方がないとできないよそんなこと。」
「なーんか、俺のことバカにしてる?」
割り込んできたエンの口調は前と変わらないのに、声だけは無駄にイケボなもんだから奏は思わずドキリとしてしまう。
そんな奏の心境を見透かしたの、エンは悪戯な笑みを作ると奏の耳元に口を寄せた。
「ねぇ、ドキッとした?」
今度こそ心臓が飛び跳ねる。魅了の魔法でもないのに、脈が速くなり頬が熱くなってくる。異性に慣れていない奏には、どうしようもできないことだった。
「可愛い反応だね……食べたくなっちゃうよ。」
もう止めて!と突き放すために伸ばした奏の手は空振りをして空をかいた。
後ろに引かれてストンと背中が何かに当たると、手で目を覆われてしまう。それはまるでそれ以上、エンを見るなと言わんばかりに…
「その辺にしといてくれないかね。」
ジャンの声はいつもと変わらない。
だけど、お腹に回された腕がキュッと軽く締めつけ奏は抱き寄せられる。
「俺の大切な人なんだ。」
そしてとどめとばかりに耳を舐められた。
「……かな……かなで………奏ってば!」
「うーん…」
「やっと起きた。」
セツのそんな声が聞こえて目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。
「大丈夫?」
「うん…えーっと…私、倒れたよね?」
正直、良く覚えていない。バクバクなっていた心臓が限界になり、頭が真っ白になったところで記憶が途絶えている。
「うん、ジャンがここまで運んでくれたんだよ。覚えてない?」
「全然。」
「ほらー、クソ悪魔のせいじゃん。」
「えー、俺が悪いのー?」
白と黒の二匹のもふもふが奏をじっと見つめている
ここは天国だろうか?
「可愛い…」
「かなでー?」「おーい、戻ってこーい。」
「はっ…夢の世界に向かってた。」
ガバッと起き上がり、2人を見れば呆れ顔でこちらを見ている。
「ごめんごめん。えと…リズはいないの?」
「奏が起きる少し前にお茶の準備をしに部屋を出ていったよ。そろそろ戻ってくるんじゃない?」
「そっか。それから…えっとぉ……ジャンは?」
「もう帰ったよ。」「とっくだよ。」
ガクッと肩を落とす奏を、セツとエンが楽しそうに眺めている。
「なんだか、2人は気が合いそうだね。」
『どこが!』
ハモった声に奏は声を出して笑ったのだった。




