22 夏の思い出
お待たせしました。22話を更新しました。
今回は楽しい夏休み、だけど淋しい雰囲気をちょっと出して見ました。それではお楽しみください。
夏期講習も終わりお盆を迎える時期です。この時期の私は何となくしんみりします。お盆ということもあるかも知れませんが、この頃から虫の音が聞こえ出しもう秋なんだと染み染みそう思ってしまいます。お盆といえば胡瓜の馬や茄子の牛を作って、ご先祖様をお迎えしますけど、家は浄土真宗なのでそれはしません。浄土真宗でお盆の準備と言ったらお仏壇用にお花と酸漿、それにお菓子とフルーツをお供えして盆提灯を飾るくらいです。そうすると必ず祖父母がやって来て家の中が賑やかになります。しかし、お盆が終わると夏休みも残り少なくなりまた淋しいですね。今年は特に二十一日から学校が始まりますので…… そういう事で私達三人とお連れの三人も含めて遊ぶことになりました。この企画を出したのは玲華の彼氏の甲斐班長です。夏休みの思い出にということで遊園地へ……
「もっと別のところに行こうよ」
玲華は反論したみたいですけど「みんなが楽しめる所がいいだろう。それに斎藤さんは今から楽しみにしてるみたいだしね」ということでした。
「ねえ、飛鳥は洋服何を着て行くの?」
瑞稀のお洒落チェックです。
「うーん、遊園地ねえ、フリル袖のTシャツにロングスカートかな」
「飛鳥はブレないね」
玲華が口を挟みます。
「なによ、それ」
私のコーデに玲華が物申すようですよ。遊園地だよ! 普通ジーンズとかを選択するでしょう。乗り物とかに乗る時ヒラヒラしたら邪魔じゃない」
玲華の意見も分からなくはないけど私はスカートが良いのです。
「玲華こそジーンズ好きだよね! 私服でスカートは見たことないかも……」
「確かにそうだね!」
瑞稀も乗っかって来ました。
「だって、私はスカートとかあまり好きじゃないから……」
「え! どうしてよ?」
玲華は少し顔を顰めています。また、余計なことを言ってしまったとでも思っているのかな?
「私ね、小さいときからずっとスカートを履かされていたからあまり好きじゃないのよ…… 女の子はスカートなのよって決めつけられて……」
「そうなんだね」
そうか、お嬢様にはスカートなんだね! そういう決まりもないけど……
「でも玲華ちゃんはスカートよりジーンズの方が似合うと思うけどね」
「もう、ちゃんづけしないでよ!」
なんのかんのと班長は玲華のことが大好きなんだね! 全く惚気か!
「瑞稀はどうするの?」
「私はワンピーでキュロットスカートにしようかな! 関君どう思う?」
関先輩は少し困ったように「キュロットスカートってどんなのかな?」
「……」
先輩は女子の洋服にはあまり関心がないみたいです。って関君って呼んでるの!? まあ、ともあれ私達は前と似た様な格好になりそうです。
「恵美子ちゃんも来るんでしょう?」
「うん」
「どんな服を着て来るかな?」
私もちょっとだけ楽しみです。
当日、駅で待ち合わせです。あっ! あそこにいるのは恵美子ちゃん? あの格好は随分思い切ったね!
「おはよう恵美子ちゃん」
「あ! おはようございます」
そう言ってすかさず抱きついて来る恵美子ちゃん。これが彼女なりの挨拶かな! 彼女のコーデは淡いグリーンのTシャツにショートパンツとスニーカーをチョイスしています。
「結構大胆なのね」
「そうですか? みんなこんな感じですよ」
「おはよう、わあ! 凄いね!」
瑞稀も来ました。
「瑞稀、これが普通らしいよ」
「いや、普通じゃないよ飛鳥! 一段とお嬢様らしくなって」
「恵美子ちゃんじゃなくて私!」
私のコーデは宣言通りフリル袖の白っぽいシャツにスカイブルーのロングスカートにヒールサンダルなんですけど……
「これじゃ本物のお嬢様からまた言われるよ!」
「君達、おはよう」
甲斐班長が来ました。
「今村さんはやっぱりスカートなんだね」
「はい」
「素敵ですよね!」
恵美子ちゃんがそう言ってくれます。
「そうだね、今村さんはやっぱりジーンズとかよりスカートの方が似合うかな! 君が恵美子ちゃんだね!」
「はい」
「僕は甲斐です。今日はよろしくね!」
「はい、こちらこそお願いします」
私達は城南駅から電車に乗り橋本駅のひとつ先の常盤駅へ向かいます。玲華は一條駅から来るので先に常盤駅に来てると思います。私達が常盤駅の改札口を出たとき玲華が手を振っています。私達も手を振って返しましたがそれは甲斐班長へのものだったようです。
「おはよう玲華」
「おはよう、やっぱり飛鳥はブレないね!」
「玲華だってお気に入りのジーンズでしょう」
「まあね」
玲華はボーダーのプルオーバーにジーンズとヒールサンダル、それに黒いキャップを被っています。
「玲華さん格好良いですね!」
この言葉にちょっとだけ嫉妬する私です。
「そう、ありがとう。恵美子ちゃんも良いセンスしてるね!」
「ありがとうございます」
ちょっとだけ嬉しいそうな恵美子ちゃんです。
「ところで班長、ここからどうするの?」
玲華が甲斐班長に声を掛けます。今回の企画は班長なので詳しいことは聞かないといけません。
「確か、ここから送迎バスがあるはずなんだけど……」
そう言って班長は駅の外へ確認に行ってます。そこへ関先輩も班長のところへ行きます。
「おーい、甲斐!」
関先輩が班長へ反対側の駅北口を指差して言っています。
「みんな、北口だって」
そう言って駅の北口へ行くとスカイパーク行きのバスが来ていましたので私達はこのバスに乗ってスカイパークへ行きました。
「ここ凄いね! 飛鳥、ジェットコースターに乗ろうよ」
えっ! 私と?
「良いけど…… 関先輩と一緒じゃなくて良いの?」
「だって、関君は怖いから嫌だって!」
私はひとつ溜息をついて……
「瑞稀も少しは先輩に合わせてあげたら? 嫌われても知らないよ」
「大丈夫だよ! 関君はそんなに心の小さい人じゃないから」
「関君ね!」
「あ! 言っとくけど関君がそう呼んでって言って来たんだからね」
瑞稀は何か気付いたようにそう言いました。別に訊いてないよ! 瑞稀。
「飛鳥さんお化け屋敷に行きませんか?」
今度は恵美子ちゃんです。
「みんなでジェットコースターに乗ろうかって言っているんだけど、どうする?」
私が恵美子ちゃんに訊くと、彼女は「それじゃ、その後にお化け屋敷ですよ」と言って私の手を引っ張ってジェットコースターへと連れて行きます。私はそれがたまらなく心地良いのです。
「あれ、飛鳥は恵美子ちゃんと乗るの?」
そうか、恵美子ちゃんが来たから瑞稀の相手がいなくなったのか……
「瑞稀、私が一緒に乗ってあげるわよ」
そう言いながら玲華がやって来ました。結局、女子四人しか乗らないみたいです。私は相変わらず恵美子ちゃんにピッタリ身体をくっつけられ、私は彼女の手をそっと握ります。すると出発の合図が鳴りコースターがゆっくりと上まであがって行きます。ちょっと心臓がドキドキです。ジェットコースターってこの時間が怖いんですよね! スピードが出たらそんなの考えている余裕は無いし、気がついたらもう終わってますから……
そう思っている間にコースターは一番上まで来て今からが本番です。
「うわーーーーーっ!」
と叫びながら両手を上げる恵美子ちゃんと私です。瑞稀達は後ろの席だから分からないけど……
「あーっ面白かった!」
私と恵美子ちゃんの感想です。
「あーっ! 怖かった」
瑞稀の感想です。
「怖いんなら乗らなきゃよかったのに」
「玲華だって大声で叫んでいたじゃない」
「それが良いんじゃない! ストレス発散よ!」
玲華は満面の笑みで言います。
「それにしても飛鳥と恵美子ちゃんは余裕だったね!」
「そんなことないよ、充分怖かったよ」
「でもコースターの下りのところで両手を上げるなんて……」
「だってそれが気持ちが良いじゃないですか」
いや、恵美子ちゃんはそうかも知れないけど私は彼女の手を握っていたから一緒に上げるしかなかったんだもん。
「面白かった様だね」
班長と関先輩です。
「瑞稀ちゃん、良い写真が撮れたよ」
「えっ!見せて」
「あ! フイルムだから見れないよ」
「えーっ、そうなの」
「でも、良いのが撮れたって何故解るんですか?」
「ずっと 写真を撮っているとなんとなく感覚で分かるんだよ」
恵美子ちゃんも私達もスマホのカメラが主流だから今ひとつ分からないけど、そっちの方が本物に近いんだろうと思いました。
「飛鳥さん、次はお化け屋敷」
私はまた、恵美子ちゃんに手を引っ張られます。その後お化け屋敷の中で大声で叫ぶ私と恵美子ちゃんです。そして、みんなのところへ疲れ果てて帰って来ました。
「飛鳥さんあれは反則ですよね」
「まあ、それがお化け屋敷だよ」
「何かあっての?」
玲華に訊かれ、屋敷の中でお化けに待ち伏せされて追い回されたことを告げる恵美子ちゃんです。
「それ、面白そう。班長後で行こうよ」
玲華が班長を誘っています。
「良いよ」
班長も笑顔で了承しています。
「その前に、お昼食べない。なんかお腹空いてさ」
関先輩がそう言うので「それじゃ、向こうの芝生のところで食べましょうか」と私が言うと「いや、その前に弁当を調達しないと!」
そう言う関先輩です。
「お弁当ならありますよ!」
私が微笑みながら言うと「飛鳥も持って来たの?」と玲華に訊かれました。
「え! 私も持って来たよ」
それに瑞稀が続き「私もです」と恵美子ちゃんまで……
私も含めて女子四人はお弁当を作って来ていました。
「それじゃ、向こうの芝生のところで頂こうか!」
甲斐班長と玲華が芝生のところにレジャーシートを広げます。そこでお昼です。私はサンドイッチと玉子焼きとソーセージを炒めたものを持って来ました。
「恵美子ちゃんは何を作って来たの?」
「私はおにぎりと唐揚げと玉子焼きです。飛鳥さんに食べて欲しくて……」
ちょっと頬を赤く染める恵美子ちゃん、可愛いですね!
「私はおにぎりと玉子焼きと焼きそば、関君沢山食べてね!」
と瑞稀が嬉しそうです。
「玲華は?」
「私は炊き込みご飯のおにぎりと玉子焼き、それにコーヒー」
「随分と手が込んでるね」
甲斐班長も嬉しそうです。
「飛鳥さんの玉子焼き美味しいです」
「恵美子ちゃんのも形も良いし美味しいよ」
私が言った時「でも甘くないんだね」と瑞稀に言われました。
「瑞稀の家は甘い玉子焼きなんだね」
「玲華の玉子焼きは?」
瑞稀が訊きます。
「さあ、どっちだろう?」
玲華から不思議な返事が帰って来ました。
「玉子焼きは私が作っていないから」
「誰が作ったの?」
さらに瑞稀が訊くと、これはほとんどお手伝いさんの料理だそうです。玲華が作ったのはコーヒーだけのようです。流石はお嬢様です。
「でも、このコーヒーは美味しいよ。コクと風味があって」
班長がさりげなくフォローしています。仲が良いですね!
「僕は瑞稀ちゃんのおにぎりが一番かな」
今度は関先輩です。
「関君ありがとう!」
ここも熱いですね。
「私は、飛鳥さんのサンドイッチが美味しかったですよ」
「ありがとう恵美子ちゃん。マスタード効きすぎていなかった?」
「いえ、私はこのくらいが丁度良いです」
「確かに今村さんのサンドイッチは美味しかったなあ」
班長も褒めてくれました。
「玲華のコーヒーと一緒だととても合いますよ」
私の感想です。ちょっと手前味噌ですみません。
食事も終わり、今度は観覧車に乗ろうと恵美子ちゃんに引っ張られる私です。玲華は班長とお化け屋敷に行くみたいです。瑞稀達はどうするのかな? ベンチで二人並んで座っているけど…… そう言いながらも私と恵美子ちゃんも観覧車の中で二人並んで座ってます。ちょっと傾いていないかな? でも恵美子ちゃんと二人きりの十五分間です。
夕方、六人で来た夏の思い出作りも、もう終わりです。私達はそれぞれ常盤駅で解散したあと、私と恵美子ちゃんは一足先に城南駅に戻って来ました。
「飛鳥さん、まだ良いですよね?」
「うん、良いけど…… どうするの?」
「お茶でもしませんか?」
まあ、城南駅まで戻って来ている訳だし良いかな! ということでカフェへ行きました。
「瑞稀さん達はあれから何処かに行かれたんですか?」
「折角だから二人で食事でもするんじゃないかな」
「玲華さんも?」
「玲華は班長と一條駅まで行くかもね」
「そこに何かあるんですか?」
「玲華の家があるから」
「ふーん」
返事をしながら、ちょっと俯き加減の恵美子ちゃんです。
「急に淋しくなった?」
「そんなんじゃないけど…… 飛鳥さん今度はいつ逢えますか?」
恵美子ちゃんはとても淋しそうにしています。
「まだ、一緒にいるじゃない」
「でも、この後別れたら今度はいつ逢えるかなって……」
「いつでも逢えるよ! 家だってたぶん近くだよ。それより今は受験の事を考えて、そうしないと一緒の高校に行けないよ」
「飛鳥さん! 家庭教師してくださいよ。そしたらもっと沢山逢えるし……」
「そうだね…… 家庭教師出来るほど勉強出来ないから、偶に一緒に勉強するくらいなら……」
そして、私達はバスで戻って来ました。
「あ! 飛鳥さん、あれ!」
恵美子ちゃんの指差したところはドラックストアーです。入口のところに大特価で花火が売られています。
「これやりましょうよ!」
私は、溜息を吐いて「いいよ」と了承しました。
その後私達は、河原で花火をする事にしました。最初は地面に置いて火花が吹き出すタイプです。私がそっと火をつけると数秒後に火花が勢い良く吹き出しました。
「うわぁ、凄い!」
恵美子ちゃんは笑顔ではしゃいでいます。それを見ていた私も一緒になってはしゃぎました。「キャッ、キャッ」言いながら、今度は手持ち花火を両手に持って振り回し、その火花が舞い降ります。とっても楽しい時間でした。最後に線香花火をしました。ちょっぴり淋しくなったけどあの勢いよく小さく弾ける火花から元気がもらえるような気がしました。これで私の夏休みは終わりを告げました。
とうと夏休みが終わってしまいました。これから秋になり恵美子ちゃんは受験が近づくにつれ気持ち的にも大変になっていきます。飛鳥達は前期期末試験が始まります。




