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憧れのスカート  作者: 赤坂秀一
第五章 夏の終わりのハーモニー

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21/52

21 私の彼女です

お待たせしました。21話を更新しました。

前回、恵美子ちゃんは何故飛鳥が男子だと気づいたのでしょうか…… 彼女は飛鳥のことをどこまで気づいてしまったのでしょうか!


 私は恵美子(えみこ)ちゃんに告白され、それを受け入れてしまいました。でも何故でしょうか不思議なことに彼女は私が男子だということを知っていました。どこで分かったんでしょうか? いろいろと一晩考えてみましたが思いあたる節がありません。結局一睡も出来ず朝を迎えてしまいました。おかげで今日は少々寝不足です。しかし夏期講習二日目があります。まだ眠いけど行かない訳にはいきません。

「おはよう」

 私はリビングへ降りて行きました。

「おはよう! どうしたの飛鳥(あすか)、眠れなかったの?」

「うん」

「あなた酷い顔よ。薄っすらクマが出来てるわよ」

 母はちょっぴり心配しています。

「うん、大丈夫」

「ちょっと待ちなさい」

 母はそう言うと髪をブラシで整えたあとファンデーションでクマのところを隠してくれました。

「ありがとう」

 そう言って私は朝食を済ませバスで学校へ向かいます。今日もバスターミナルから玲華(れいか)が乗って来ました。

「おはよう」

「あ、飛鳥どうしたの? その顔!」

「うん、ちょっと眠れなくて、クマが出来てたからファンデで隠したんだけど……」

「まあ、パッと見、分からないけど…… 違和感はあるね、昨日何かあったの? あの後」

「うん……」

 私は昨日のことを話しました。

「そう、恵美子ちゃん知っていたんだ!」

「うん、何故分かったのかは分からないけど……」

「まあ、女の子は敏感だからね、それで本気でお付き合いするの?」

「うん、彼女は私のことが好きだから一緒にいたいって言うし、私も彼女といると気が休まるというか…… ずっと傍にいてほしいの……」

 私の言葉は段々小さくなり顔は熱を帯びている感触があったのでかなり赤くなっていると思います。そんな私を見て玲華はひとつ溜息をついた後「飛鳥がそう言うなら応援するよ。まあ、両思いならそれ程心配はいらないだろうけど、それにしても飛鳥も可愛いとこあるのね」

「もう、(からか)わないでよ」

「でも、これから大変だよ! 恵美子ちゃんは来年受験だし……」

 玲華はそれ以上言わなかったけど、このまま全てが上手くいくとは思えないし問題はあると思う。まあ、あまり考え過ぎても仕方がないですけどね!

 教室では昨日と同様瑞稀(みずき)が来ています。また朝から先輩と一緒だったのだろうけど……

「飛鳥、昨日はあれからどうしたの?」

 瑞稀は身を乗り出して訊いて来ました。ちょ、ちょっと怖いから……

「お付き合いするんだって!」

 玲華が私の代わりに瑞稀に話しました。

「本当に! 飛鳥応援するからね」

「あ、ありがとう……」

 瑞稀、なんだか熱いよ! 瑞稀も玲華も私のこと面白がってない? そう思っていると先生が教室へ来て講習が始まりました。外は気温が高く猛暑ですが教室の中はエアコンが効いてとても涼しく快適です。しかし、男性の先生は少し暑いのか額に薄っすら汗をかいています。しかし、私達女子は少し寒くてニットのベストを着ている生徒もいます。瑞稀もカーディガンを羽織っています。私と玲華はそこまで無いですけど男性と女子では体温の差があるようです。


 今日も午前中はみっちりと講習がありました。終わった瞬間、すぐに教室のエアコンのスイッチが切られ生徒は早く帰れと言わんばかりです。

「瑞稀、お昼に行こう!」

「何食べる?」

 瑞稀が訊いてます。

「こう暑いと冷たいのがいいわね、お蕎麦とか冷やし中華とか……」

 玲華は冷たくてあっさりした物の方が良いようです。

「それじゃ駅のお蕎麦屋さんに行こうか」

 私達はバスでバスターミナルへ向かいます。

「今日は恵美子ちゃんはいないの?」

「そう毎日はね!」

 本当は、この後図書館で待ち合わせだけど……

「お付き合い始めたんでしょう!」

「そりゃそうだけど彼女だって受験生なんだからそう毎日はね」

「そうか、ちょっと残念」

「瑞稀は(せき)先輩と逢わないの?」

 瑞稀は照れ笑いしながら「実はこの後待ち合わせなの」とちょっと嬉しそうです。

「玲華は?」

「私は講習が終わってからね」

 みんなそこそこ予定がある訳ね。

 食事が終わり玲華達と別れ図書館へ行く私です。

「お待たせ!」

「飛鳥さん」

 私は恵美子ちゃんの横に座りました。すかさず彼女は私にピッタリと身体をくっつけて来ます。ちょっと恥ずかしいですね!

「恵美子ちゃん恥ずかしいよ」

「でも私はこうしていたいんです」

 少し、頬を赤くする私です。それはそうと何故私のことが分かったのか訊かないと……

「ねえ恵美子ちゃん、私が男子だって何故わかったの?」

 彼女は私の顔を見てちょっと恥ずかしそうに言いました。

「だって、飛鳥さんに抱きついたとき胸の柔らかい部分を感じたんですけど…… 下の方にも私には無いものがあるような感じがして…… それで、なんとなく……」

 彼女は顔を真っ赤にしながら俯いたまま言いました。それを聞いて私も顔が真っ赤になった様に熱を感じます。まさかホルモン治療で小さく萎縮しているとはいえ、それがまさか彼女に触れていたとは……

「それで私が男子だって分かったのに、それでも好きなの!」

 彼女は俯き時折上目遣いで私を見て言いました。

「わたし、男子は好きになれないんです」

「どういうこと?」

「よく分からないけど、男子といても楽しくないから……」

「一緒にいてときめいたりとかしないの?」

「無いです! でも、飛鳥さんと一緒だと胸が締めつけられそうにキュンとするんです。もうどうしようもないくらいに……」

 確かに、私も同じ気持ちになるから……

「でも、飛鳥さんは何故女子の格好をしているんですか?」

 私はそれを聞いて、また訳が分からなくなりました。

「恵美子ちゃん、知ってるんじゃないの?」

「え! 私は飛鳥さんが男子ではないかと思っただけですよ」

「……」

 彼女は私の全てを見透かしていた訳じゃなかったのね! 私はひとつ溜息を吐いたあと精神科の医学書をとり彼女に言いました。

「私は、これなの!」

 私は性同一性障害のページを開いて言いました。

「それじゃ、心は女子なんですよね!」

「…… うん」

 私が頷いて返事をすると彼女は嬉しそうに身体を寄せて肩に手を掛けて来ました。ちょっとそれは駄目だよ図書館なんだから……

「やっぱり飛鳥さんのことがだーい好き!」

 そう言って恵美子ちゃんは私にずっと身を寄せたままでした。私も彼女と一緒にいるこの時間をとても幸せに感じました。

 私達は図書館を出てバスターミナルへ手を繋いで向かいます。

「私達って側から見たらどう見えるのかな?」

 私が訊くと恵美子ちゃんは笑顔のまま「仲の良い女子ですかね」と言ったあと、さらに微笑みながら言いました。

「別にいいじゃないですか周りのことなんて」

 恵美子ちゃんは心が強いなあと思いました。

「そうだね」

 こうして私は夏期講習の後、恵美子ちゃんとデートをする日が続きました。


 今日は夏期講習最終日です。最後にテストもあります。

「飛鳥、飛鳥!」

「え! なに?」

「ボーッとしてるけど大丈夫?」

「…… うん、大丈夫だよ」

「恵美子ちゃんと上手くいってないの?」

 瑞稀が唐突に訊いて来ました。

「なんでそうなるのよ?」

 瑞稀も玲華も呆れ顔で私の方を見ています。

「私達が知らないとでも思ってるの? 毎日、講習が終わったあとお昼を食べて図書館へ行ってたでしょう」

「知ってたの?」

「もちろんだよ! だから邪魔しちゃいけないから私達は別行動してたんだから」

 玲華は溜息を吐いています。

「どうやら上手くいってるみたいだけど彼女の勉強の邪魔だけはしちゃ駄目だよ」

「うん……」

 私は玲華に釘を刺されてしまいました。


 お昼のちょっと前に講習が終わり休憩を挟んでテストです。一応終わった人から順次帰っていいのですが……

「飛鳥、大丈夫? 心ここにあらずといった感じだったけど」

「大丈夫だよ」

 なんだかみんな私のこと心配しすぎだよ。

「今日も逢うの?」

「ううん、今日は大学病院へ行かないといけないから」

「とか言って病院で待ち合わせとかじゃないよね」

 瑞稀、いくらなんでもそれはないよ。

「病院へ行くのなら上杉先生(うえすぎせんせい)にいろいろ相談して来なさい」

「うん、分かった」

 玲華から忠告を受けました。


 夏期講習とテストが終わり私は北山大学(きたやまだいがく)病院へやって来ました。

「先生、こんにちは」

「やあ、こんにちは飛鳥君! 変わった事はないかな?」

「はい……」

「うん! どうかしたの? この間言っていた男性恐怖症は大丈夫?」

「はい、それは大丈夫です」

 私は恵美子ちゃんの事を言わないとと思うと顔が熱ぽく感じました。

「なんだか顔が赤いんだけど……」

 上杉先生は何かに気づいたみたいで小さな声で訊かれました。

「ひょっとして彼氏さんが出来たの?」

 いやいや、男性恐怖症なのに可笑しいでしょう。

「いえ、彼女です」

 あっ! 言っちゃった。

「そうか、まあいろいろ大変だけど相談には乗るから、その時はここでもいいし、クリニックでもいいからいつでも来なさい」

「はい、有難うございます」

「それで、どんな人?」

 あっ、やっぱり訊くんですね!

「えっと…… 文化祭の時に、一緒にいた女子ですけど……」

「え! やっぱり玲華ちゃんなの?」

「いえ、違います。もう一人の方です。先生が石鹸をあげた……」

「ああ、あの()か、確か中三とか言ってたよね、来年受験か! 何処の高校に行くの」

「最初は悠秀館(ゆうしゅうかん)高校にと言われていたみたいですけど本人の意思で城南高校(じょうなんこうこう)にしたそうです」

「そうか、ランクは下がった感じだけど、まあ余り負担を掛けないようにしないとね」

「はい」

「あっそうだ、山吹(やまぶき)さん、さっき言っていた飛鳥君」

「初めまして看護師の山吹瞳美(やまぶきひとみ)です」

「今村飛鳥です」

「今度からホルモン注射は婦人科の方ですることになったから」

 山吹さんはニッコリ微笑んで「飛鳥さんよろしくね! 先に婦人科の方で待ってるからね」

 そう言うと山吹さんは行ってしまいました。

「先生、私は泌尿器科じゃなくて良いんですか?」

「どこから見ても女子なのに泌尿器科じゃ違和感たっぷりだろうからね」

 その後もう少し問診をして「飛鳥君、恋をするのは良いことなんだけど自分自身を見失わないようにね!」と一言言って診察は終了しました。その後、婦人科へホルモン注射を受けに行きます。

「今村です」

 私がそう言うと処置室へ呼ばれました。

「ちょっと痛いかも知れないけど」

「あっ、大丈夫です」

 うっ! やっぱり何度受けても痛いですね。でも一度始めたらやめる訳にはいきません。ホルモンバランスが崩れてしまいますので……

 そして、治療が終わりました。上杉先生はなんとなくあっさり話してましたけど、私に彼女が出来たことは想定内の事だったのでしょうか? それと最後に言われたあの言葉はちょっと気になります。




なんと単純な事で飛鳥が男子だということが分かってしまったのですね! でも恵美子ちゃんは大丈夫なのでしょうか! ランクダウンをして城南高校を受けるみたいですけど…… お互い無理しない程度でないとね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりソコはね…隠しきるのは大変ですね、実際。 ガードルできつく締めつけて潰したりもしますけれど、普通女子高校生でガードルは履かないでしょうし。 未手術だと結構面倒な問題だったりもします…
2020/09/06 14:04 退会済み
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