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島の娘  作者: M38
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第26話

「ノアがいなくなったですって! どうしてなの?」

「なんだって! どういうことだ!」


 久しぶりに社交場へ行きオリバーと帰ってみれば、ノアが行方不明だという報告を受けた。


「どんな状況でいなくなったんだ?」


 子守の女が前に進み出た。


「申しわけありません! わたくしが古い絵を捨ててしまったところ、それは坊ちゃまの大切な品物で……。2人でゴミを出しにいった裏門へ行ったところを……」

「リードさま! 彼女は裏庭で倒れていました! 何者かに襲われた模様です!」

「わたしが絵を捨てさえしなければ、坊ちゃまは……」

「わかった。犯人の心当たりは? 何か要求はしてきたか?」

「それがなにも……。怪しい人物の目撃情報もありません。自警団への連絡はどういたしましょうか?」

「待ってくれ。彼らが動いてもことを大きくするだけで、真相はわからないだろう。ウィンター公爵も子供が誘拐されたと言っていたな……子供を攫うのがはやっているのか? なにかの一味か?」

「そのようなうわさは最近ありません」

「おお……ノア……どうしたら……」

「エマ……しっかりしておくれ」

「あなた……オリバー……」


 わたしはオリバーに抱きつき泣き崩れた。

 ノアに何かあったら、わたしはいったいどうしたらいいのだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 オリバーは従業員や衛兵たちを連れ街や山へ捜索に出かけた。

 場合にはよっては河もさらうそうだ。

 わたしは長いすに横になり、なすすべもなく横たわっていた。


「ノア、ノア、どうか無事でいて……わたしはいったい、どうしたら……」


――コンコン!


「奥さま……ルーシー・ウォルターさまがお見えです」

「ルーシー・ウォルター……なんの御用なの?」

 

 わたしは色めきたった。

 こんなときになんの用事だろう?

 彼女の初めての接触にとまどうばかりだ。

 とりあえず通してもらうことにした。

 元伯爵令嬢が向こうから赴くとはよっぽどのことだろう。

 ルーシー・ウォルターは侍女を従えやってきた。


「奥さま……こんなときに申しわけありません……」


 近くで見るルーシー・ウォルターは、やはりとても美しい人だった。

 茶色い髪に茶色い瞳の愛くるしい美人でしとやかな印象を受けた。

 愛妾をしてきた割には聖女のような雰囲気を身にまとっていた。


「なんで、ございましょうか……?」

「実は……お宅の息子さんを目撃したものですから……」

「なんですって! いまですか?」

「いいえ、少し前です。わたくしは今日、王城に上がっていたのですが……その……どうしてもバーバラ・パーマーのことが気になって、西の離宮の裏を通って帰りました。そうしたら偶然にも、馬車からお宅の息子さんとダニエル・リードが降りてくるところが見えたのです」

「ノアと……ダニエルさまが……? たいへんだわ! ほんとうに彼でしたか?」

「間違いないと思いますわ。ダニエルのことは小さいころから知っているので、見間違うはずありません。わたくしはいま帰ったばかりなのですが、侍女からリード家の息子さんが行方不明になったと聞き飛んで参りました」

「とても助かりました! すぐにオリバーに知らせますわ!」

「ノアが早く見つかるといいですわね……。わたくしも心より祈っております」

「本当にどうもありがとうございました!」


 ルーシー・ウォルターは帰っていった。

 すぐにオリバーに使いを送った。

 わたしは矢も盾もたまらず、衛兵から馬を借りすぐに出発した。

 もしもノアがバーバラ・パーマーの屋敷にいるとしたら、たとえ国王であろうと奪還は不可能だ。

 話がこじれる前に直接ダニエルに会って交渉しよう。

 大金持ちのバーバラ・パーマーの元にいるダニエルが、なんの目的でノアを誘拐したのかはわからない。

 わたしが叶えられる要求があるならば、なんなりと受け入れようと思っていた。

 

――パカッパカッパカッパカッ!

 

 とにかくノアの無事を祈る一心で馬を駆った。


◇ ◇ ◇ ◇


「ハアハア……」


 あっという間にバーバラ・パーマーの宮殿に着いたわたしは、裏の森へ回りそこへ馬を繋いだ。

 慎重に裏門へと近づいていく。

 見張りはいなかった。

 今日も門の鍵は開いていた。


 そうっと門を開け中へ入ろうとしたとき、どこからか視線を感じた。

 咄嗟に振り向くと、森の奥に誰かいた。

 よく見るといつかの赤毛の娼婦だった。

 こんなところで何をしているのだろう。

 疑問に思ったが、こんなところでグズグズしていると誰かに見つかる。

 いそいで裏庭を突っ切り、いつかクロエが教えてくれた秘密の通路に入っていった。

 奥のバーバラ・パーマーの部屋から話声がしてくる。

 音を立てないように忍び足で近づいていった。

 覗き窓からなかを見る。


「うまくいったな……あとは……」

「ウフフフフフ……悪い人!」


 むっとするおしろいの匂いが鼻を突いた。

 暗闇で裸の男女が長椅子に座っていた。

 真っ白な裸体が闇に浮かび上がる。

 男が突然、顔を上げた。

 心臓が凍りつく。


「……オリバー!」

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