↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第1章 会いに来ました
PR
6/49

6.距離

「アヤカを通して見た世界は一体どういう風に見えるんだろう」


 あれから私は仕事をしている時にそんなことを考えるようになっていた。近くにいるはずなのに、どこか遠くに感じるアヤカの存在。日増しに彼のことが気になっていくのを感じていた。


 とりあえず、彼が何を読んでいるのか気になったので、それを見てみることにした。私の部屋には本が結構ある。


 この本の量、流石に気になったのかアヤカも聞いて来た。


「…ミカは読書が好きなのか?」


 最初に言っておくとそこまで好き。ということではない。こんなに沢山の本がある理由は、私は学生時代から、まだ会社に勤めていた社会人時代まで、合宿や遠征、出張のようなことが多く、自分の家にいるということが少なかった。


 で、今ならスマホ一台あれば、動画は見れる、本も読める。そんな時代ではあるのだけれど、どうしても駅の構内とか、宿泊したビジネスホテルの隣にある小さな本屋とか。そういう所に置かれている本が気になっては購入してを続けていた。


 気が付いたら部屋に大きな本棚を購入して、そこに本を納めることになる。


 すごく話題になった本もあれば、誰も手にしないような哲学書。それから学術書。図鑑まであったりする。そうかと思えば漫画が隣に置いてあったり。


 整理整頓が好きな人からしたら「なにこれ」と言われてしまいそうな感じではあるが、幸いなことに私の部屋にやってくるのはアヤカを含めて、私側の人が多いせいなのか言われたことはない。


 私はアヤカの方を見て、積まれている本を見た。…物語が多いのかな。こういうお話みたいなのが好きなのだろうか。本を読むアヤカを見て私は有ることを思い出した。


「そういえば、言葉を覚えたのは本からだっけ」


 最初、出会った時、彼はしゃべらなかった。そこからこの世界の言葉をゆっくりと覚えていったとのことだったけど、すでに私と会話は成立している。それでも彼は本を読むことをやめてない。


「…視線を同じにしてみる」


 そう思いついた私は彼の近くに顔をやり、同じ目線になって本を見た。その様子に最初は彼もびっくりしたのかもれないが、何も言わずにそのままページを進めていく。


 彼が私のもとにやって来て、一か月が経過した。それでも彼の目的はわからない。私の体とか考え方にも特にこれと言った何かが起きていることも無い。私としては、まあ一人暮らしが長かったのもあるのか、話し相手が増えて嬉しいようなそんな気分だった。


「なるほど、そうか、誰かと住むって言うのはこういう感じなんだ」


 そんなことを考えていると、アヤカは読んでいた本を置いて、私に近づいて来た。


「…今日、やらなければいけないことがあるのだけれど、協力してくれない?」


 突然何か言い始めた。今まで、これについて教えて欲しい、と言われたことは何回かあるけれど、協力して欲しいは初めて言われた。まあ、特に何もない日だから「それ、私に出来る事?」と返事をしてみることに。


「うん。そこのプランターに種を1つ蒔くから、ミカと水をあげて欲しい」


「…私はどうすりゃいいのよ、あげるって言われても」


「まぁまぁ」


 窓に手を伸ばし、ベランダの窓を開けた。一応、私が先に顔を出して周囲を確認。時刻は夕方。近所の人は夕食の準備をしているのだろうか、そういう音が聞こえてくる。


 別段、アヤカの事を見られたとしても、何もないわけで。…なにもないのだろうか。実際、私がこういう光景を見たら何か思うのかもしれないけれど。


 そんな私の考えを隣に置いて、アヤカは窓枠に足をかけて、そのままプランターを前にするように移動していく。


「ミカ。頭をこっちへ、手が届かないから」


「頭?」


 私は足に力を入れて、アヤカのいる方に頭を近づけた。すると彼は私の額に左手を当てる。あいかわらず、触れられた感覚がないのだけれど、それからじっとしばらく動かなかった。


 このままどうなるのか。私もじっと待つことに。


 しばらくすると、次第にアヤカの右手に何かが集まってきているのが見える。


「…なんだろう」


 青白い輝き。私にはそう見える。実態はなさそうで、なんか少しだけふわりとしているような感じ、風が吹けば飛んでいきそうなそんな様子だった。


 それは次第にアヤカの手から降りていく、そうすると、降りた先はプランターの土の上。すると、その輝きは土の中へ消えて行った。


「…よしよし、出来た。よかった」


 アヤカは安心した声を出した。どことなくさっきまで緊張していたような感じもしたのだけれど、彼のそんな言葉を聞いて私は何だか期待に胸が膨らんだ。


「ミカ、水をあげてくれる?」


 そう言われたので、私はじょうろを取りに行くことに。


「…このくらいでいい?」


 水をあげながら、私が聞くとアヤカは笑顔になって頷き、「少し時間が経てばでてくるから」と言って、また部屋に戻ると、さっきまでいた場所に座り、本を読み始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。