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ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第4章 わたしの世界で
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3.対話

 私は種に記憶を入れるのも、どうやって送り出したのかも見ていた。だから部屋のベランダにどうやって彼が辿り着いたのか、今ではもちろんわかる。


 アヤカは植物を通してこの世界にやってきた。


 だから、本来なら〝アヤカだけ〟で成立するはずなのだけれど、紫色の本を作る時、この世界に居る私の成分を取り込んだ。


「…分岐点はそこだった?」


 本来であればその必要はないはず。だって、植物を通しているんだから。


「まあ、おおむねそこら辺の話にはなるんだけど」


 彼は本棚の前から飛び立つと、机の上に降り立った。


「でも、もう少し前が分岐点になってる」


「前…?」


「ミカにとって実のところ、僕と言う存在が特別だったわけじゃないよ」


「どういうこと?」


「ずっと語り掛けていた。でも、ミカはその語りの言葉を自分の中に持っていなかった」


 何の事だろうか。全く分からない。


「簡単に言えばようやく気が付いたって言う話になる。だからミカ、本当の分岐点はキミがプランターに居た僕の存在を見つけた時」


「…見つけた時」


「そう。でもそれはずっと長い時間気が付かなかっただけ。プランターだけじゃないでしょ?公園とか山とか。そういう所で〝僕〟の存在に気が付くことは出来た」


「それじゃあ、紫色の本にあった模様の分岐点が…」


「まさにあの分岐点は僕とミカが出会った瞬間そのもの。だって、本は出会ってから種を作って植えて、それで生えて来たでしょ?じゃあそれは過去の事だ」


 そうか…私がアヤカに気が付いたから対話が出来て、だから私の成分を取り込むことも、本を作ることも。全部そこからだったんだ。


 私は長い時間、きっと通り過ぎていたんだ。アヤカ達が〝ずっと続けていた〟ことに。


「まあ、気が付いてよかったよ。僕もベランダに生えていたかいがある」


「でも…ちょっと待って」


 過去の世界で私は銀輝師という職業に就いていた。ルリハから教えて貰った世界の見方。私たちはお互いにツバサを求めたからこそ、成立していた。


 そうなると、私はアヤカから世界の見方を教えて貰うことになるのだろうか。


 自分の手を見た後、アヤカの方を見ると、彼は何かを察知したのか羽を少しだけ動かして、私の方を見た。


「…僕がこの世界にやってくるとき、種という形が適しているのは、世界の成分を取り込んで生長することで、ミカに認識してもらいやすくする。っていうのもあるんだけど」


「…うん」


「もう1つ。種っていうのは〝過去からの繋がり〟であり〝未来を内包している〟っていう存在。だから、過去と未来。両方が1つの中に存在している状態になる」


「まあ、言われてみれば確かに」


「種から芽が出るってことは、未来に向かって行くこと」


「…じゃあ」


 ルリハの言っていた2つを1つにする。元は1つ。っていうのはこの事だろうか。


「僕にとっては過去かもしれない。けど、ミカにとってあの世界はキミ自身の未来なのかもしれない」


「紫色の本にはミカの成分が入っている。つまりそれは―」


 とアヤカが言いかけた時、私の中である言葉が見つかった。


「…私自身の内側の世界?」


「うん。ミカ自身、気が付いていない自身の中に存在する〝ミカだけの未来の形〟それが内包されていたってことになる」


「そうでなければ、あの世界は存在しないから」


 パソコンの前に置かれた椅子を引き出して、座り、背もたれに寄りかかると天井を見つめた。


「私の未来の形…」


「だから僕にツバサがあるってことは、ミカの内側の世界でミカ自身がやることをやったからってことになる」


 アヤカの方を見ながら、私はまた考えることにした。

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