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ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第1章 会いに来ました
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2.言葉

 朝、私は起きるといつものように窓を開けて、彼を部屋に入れることに。ここまでは昨日と同じ。


 けれど、今日は本棚に向わず、座布団の上に座った。すると彼は口をひらいたのである。


「‥‥あんたの名前はなんて言うんだい?」


「しゃべれたの?」


 とっさに出た私の言葉はこれだった。前に話しかけた時は全く反応が無かったのに、するとドラゴンは本棚とパソコンを指さした。


「文字はここで、それと、音はそこから覚えたよ」


「なるほどね」


 彼の言葉に納得した私は、面と向かって話し合おうと彼の正面に座ることに。


 さて、ここから何を話せばいいのだろうか。聞きたいことは結構ある。言葉が通じるのであればそれも聞けるし、何より、どうしてここに居るのかをまず知りたい。あなたは何者なのか、とか。


 …でも、先に聞いて来たのは彼だ。名前を聞かれているんだから答えないといけないよな。とかなんとか。そんなことを頭の中で考えていると、私は名前を教えることにした。


「私は美花、みかっていうの。よろしくね」


「漢字だと?」


「美しいって字と花って字で書くの」


 机の上に置いてあった白い紙に、ペン立てからボールペンを取り出すと、書いて彼に渡してあげることに。すると彼はその紙を手に取り、まじまじと見つめていた。


「美花…ミカ、なるほど」


「あなたの名前はなんて言うの?」


「僕?…僕にはまだ名前が付いてないよ。だって、ここで生まれたんだから」


 それもそうか、と納得してしまった。生まれた時に名前が付いてくるわけでもない。例え決まっていたとしてもそうだよな、この状況だと決める人がいないのだから。名前は大抵、親からもらう物だし。


「…自分で決めたらどう?」


「人は自分で名前を決めるのか?」


「まあ…そういう人もいなくはないのかもしれないけど、名前は家が半分、親が半分みたいな感じで決まるかな」


「そうか、だったら僕もそれに従った方がいいだろう」


 ってことは誰かがこのドラゴンの名前を決めなければならないことになる。けれど、彼の存在を知っているのは私だけ。つまりそれは私が名前を付けなければならない。のだけれど、全く思いつかない。


「名前を決めるっていうのは、…難しいな」


 そんな時、有るモノが目に入った。カレンダーである。私はスマホを手に取ると、今日の日付を確認した。


「…今日は10月。でも、彼を見つけたのは9月の末日…」


 9月の和名は長月。けれどこれでは少し安直すぎる。と考えた私はもう一つの方を考えて、彼に差し出すことにした。


「9月には長月って和名があるんだけど、それだと少し私らしくないから、別の言い方で、色取り月って呼び名があるんだけど」


「…じゃあ僕はその色取り月って名前になる?」


 でも、これだと呼びずらい。だからもう少し考えて、色取りは彩。読み方を名前っぽくすると、あや。それで、子供は親から一文字貰うって言うのがあるから、彩花(あやか)にすることにした。


「それいいね。彩花」


 ここで私は有ることに気が付く。さっきから勝手に彼、とか呼んでいたのだけれど、性別を知らない。見た目でなんかどこか男っぽいからそう呼んでしまっていたけれど。


「アヤカ、あなた性別は?男、女どっち?」


「僕に性別はないよ」


「そうか、じゃあいいかこれで」


 性別は特にないらしい彼に、名前が付いた。さっきまでこの部屋にいたけれど、無かったものが付いた彼は、私からアヤカと呼ばれる存在に。


 私はパソコンの椅子に座って、アヤカの方を見ながら少し考える。


「さて、何から聞こうか」


 聞きたいことは沢山ある。どこから来たのか、とか、そもそもどうしてここに居るのか。とか。


 そこで私は考えて、アヤカにこう質問してみることにした。


「…どうして、この世界に来たの?」と。

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