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ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第1章 会いに来ました
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1.雨と共に

 朝起きると、雨の音がした。窓の方を見ると雨粒がガラス越しに見える。天気予報の通り、昨晩から降り始めたらしい。ベッドから起き上がると、机の上に置いてあった煙草を手に取り、窓を開けて吸い始める。


「‥‥雨、強くなるかな」


 まだそこまで本降りという感じではなく、雨音と、雨どいに水が伝う音が耳に届いてくる。住んでいるアパート。屋根を叩く雨音が気になるくらいにはいつもは響くのだけれど、今日はそこまででもなかった。


 口から立ち上る紫煙に目をやりながら空を見上げていると、あることに気が付く。


「…」


 ベランダには少し前、リモートワークが多くなって時間が出来た時に、ホームセンターで見かけて購入した、野菜のプランターが置いてある。


 野菜を育てたあと、そのままにしていて、雑草が生えているだけのプランターだったのだけれど…。


「…ドラゴンだ」


 良く見なくともそれは一目でドラゴンだと分かった。尻尾が根っこのような役割をしているのだろうか、目は閉じていて、プランターの上にちょこんと座っている感じでじっとしていた。


「夢じゃないよね」


 私は、一旦窓を閉めて、再度開けてみることに。やっぱりいるよね、夢じゃないわこれ。


 腕を組んでしばらく考えてみることに。


「私、ドラゴンの種なんか植えたっけか?」


 身に覚えがない。というかこの世の中にドラゴンの種なんて言う物が存在するのだろうか。それも良く分からないが、私はそう口にしていた。


 私の住んでいるのは2階。1人暮らし。当然、私以外このプランターの存在なんか知らない。…どこからか種が飛んできたのだろうか。それか、鳥が運んできたのか。


 ありもしないことを考えながら私はそのドラゴンをじっと見つめていた。


「とりあえず、水をあげてみるか」


 煙草を消し、玄関に向かうと置いてあったジョウロに水を入れて、そのままプランターへ注ぎこんでみる。


 雨は降っているものの、水は勢いよくドラゴンへ吸い込まれていく。


「…全部こいつに吸われてるのか?」


 普通であれば、プランターに水をあげると下から出てくるのだけれど、出てこない。どうやら相当、水を吸収しているらしい。このドラゴンは。


 水をやり終えると、しばらくじっと見つめる時間がやって来る。…かわいいのだろうか。いや、どうだろう。前、会社の同僚にトカゲみたいなのを飼っている子が居て、見せてもらったことがあるのだけれど、なんか、それっぽくはない。


 だって、多分、こいつはドラゴンだから。


 でも、どちらかというと、もしかしたら植物に近いのかもしれない。と私はそう思った。


 今度はドラゴンの顔を見てみることにした。表面は葉っぱみたいで色は青緑色、なんというか水分をたくさん含んではいるけれど、どこか動きそうな感じもする。口は完全に閉じていて、歯を見ることは出来なかった。…こいつはなにか食うのだろうか。


 しばらく眺めていると、雨音にまじって、風の音が耳に届く。


 すると、さっきまで閉じていたドラゴンの目がゆっくりと開いていく。少しだけ私は驚いたが、その様子をじっと眺めることにした。


「片目が青、もう片方が紫」


 こういうのなんて言うんだっけ…そうだ、オッドアイだ。思い出した。目の色が左右で違うやつ。しばらく見ていると、完全に目は開き、その目は私を見ている。自分の尻尾をプランターから抜き出すと、先端が見えた。根っこのような感じではなく、やっぱりトカゲみたいな尻尾をしている。


 ドラゴンは閉じていた口を開け、大きなあくびをすると、また私の顔を見つめて来た。


「…あんた、どこから来たの?」


 話しかけてみるも返事はない。それもそうか、言葉が通じないのであれば仕方がない。と腕を組んで見つめていると、ドラゴンは立ち上がって、そのまま私の部屋に入ってきた。


「ちょっと、ちょっと!」


 慌てて近くに置いてあったタオルを下に敷いた。何せさっきまでドラゴンはプランターの上にいたんだから、足は土まみれ。これで部屋の中を歩かれたら掃除をしなくちゃいけなくなる。


 そんな私の感情を読み取ったのか、ドラゴンは置かれたタオルの上に足をのせて、何度か足踏みをして、土を落してくれた。


 部屋に上がると、彼は私の持っているモノや、置いてある家具を見渡す。


 するとある部分で目がとまった。


 本棚である。


 置いてあるのは漫画、雑誌、それから小説。哲学書とか昔使っていた専門書とか。その本に興味が出たらしい。彼は器用に手と足を使って本棚によじ登ると、その中の数冊を手に取り、近くに置いてあった座布団の上に座ると読み始めた。


「…まあ、大人しくしてるならいいや」


 そう思って私もパソコンの前に座って仕事を始めることにした。時間が経って、夜が近づくと彼はまたプランターへ帰っていくことに。


 彼の生活はそんな感じで、朝起きて、部屋に入り、本を読む。そして日が沈むころにプランターへ帰る。


 そんな生活リズムを刻んでいたのだけれど、3日目くらいから彼にあることが起き始めた。

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