↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第2章 あなたの世界で
PR
19/49

7.決めていたこと

 私にとって〝ツバサ〟という言葉は、どこかで聞いたことがあるようなそんな気がした。どこか、懐かしいようなそんな気持ちになる。


 そんな風に私が思っていると、彼はそれを確認するように話を続けた。


「…僕たちには、役割があります」


「役割?」


 アヤカは真剣な表情で私に話しかけてくる。


「はい。それが今、この僕たちが居る世界から〝飛び立つ〟という役割です」


「飛び立つこと…」


 アヤカ達の世界。その情報は私たちの世界にほとんど入って来ない。彼らはどんな生活を普段しているのか、どういう家に住んでいるのか。ということが一切わかっていない。


 …でも、そうか。役割…そして、飛び立つこと。それがアヤカ達の世界では、きっと大切なことなのだろうというのは、アヤカの目を見れば直ぐにわかった。


「…それっていうのは、その、アヤカ達にとって、共通の役割なの?」


「そうですね。時期とか時間とか。そういうのも関係あると思いますが、基本的には共通です」


 アヤカが言うには、役割、飛び立つこと。そのために必要なツバサを求めることは、私たちと求め合うことになるらしい。それは、アヤカ達の世界にはない物というか、彼らには出来ないことが、私達には出来るからだという。


「じゃああれだ、つまり、ずっと昔なら、私とアヤカは一緒に住んでいて、それでお互いに求め合う物を差し出し合いながら生活をしていて。それで、アヤカはツバサを、私は今の仕事みたいなのが出来る…みたいな?」


「はい、本来ならそういうことになります」


 なるほど。今と昔で形は別の物になったけれど、アヤカ達と私達で求め合う物はお互いに手に入れることができる。というのは代わりないってことか。


「ツバサねぇ…」


 私は腕組みをして天井を見上げる。…そんなことが出来るのだろうか。誰かに何かを与えるというか、やってあげられることがあるとすれば、物語は作れるけど。ツバサとなると…。


 でも、アヤカの纏っていた白い布は、それを私に求めてきたわけで。


「…それでですね、ミカさん。僕とミカさんの関係は、まだ本来の形を取っていないんです」


「どういうこと?」


「僕はミカさんが求めるモノを渡していません。だから、渡さないといけないのです」


 …なるほど、そういうことか。言っていることは理解できる。確かに私がもっているこの物語を作ることは、目の前にいるアヤカから貰ったものではない。アヤカの先輩から貰ったもの。


 じゃあなるほど。確かにアヤカから貰わないと本来の関係性は成り立たない。


 とは言うものの、私は既にアヤカ達から受け取っていて、それで仕事をしている。


「でもアヤカ。私はもう持っているって言うか…こうやって生活してるわけで」


 部屋にある本棚、机の上に置いてある写真や絵。銀細工のペン。物語。私の生活はアヤカ達との関係性、それがあっての話になる。


「…いえ、〝それだけ〟ではないはずです」


 そう言うと、アヤカは私の後ろの方を指さした。


「ここではない世界のミカさんが、求めているモノを僕が渡します」


 …なんだろうか、そのここではない世界の私というのは。そんなのが居るのだろうか。別世界の私が求めているモノ…それがアヤカには見えているのだろうか。


「…なのですが」


 少しアヤカは申し訳なさそうな顔をした。


「それを可能に、別の世界へ届けるためには、ミカさん達の力を借りなければ作れない…と言いますか…」


「そうなの?」


「…はい」


 私はアヤカの言った「作る」という言葉が気になった。


「作るってことは、その、私が受け取ったような感じじゃなくて…物質的な物をってこと?」


「そうです」


 アヤカ達から貰うモノは、使い方、見方。そんなようなものを教えて貰い、それを実体化するための媒体を一緒に見つけ出し、私たちは自分たちの世界で使うようになる。


 物質的な物ではなく、考え方を受け取るような感じで。


 確かに、今の世界の私であれば、こうして直接言葉とかで伝えればいいけど、ここではない世界の私に伝えるためには、物にする必要があると。そういうことらしい。


 …じゃあそれを作るためには、どうすればいいのだろうか。


 考えていたら、アヤカは私の手を指さした。


「必要な物は2つあって、1つは分かっているのです」


 アヤカは両手を広げると、全身を見せるようにしてきた。


「それは、僕の姿を作ること」


「姿を作る?」


「はい。写真や絵などで、僕自身の姿をかたどること」


 …そう言われても私は絵が描けない。写真は…まあ、スマホとかカメラがあるからそれなら可能だけれど。でもそれだと多分、きっとアヤカの望む物にはならないと直感的に思った。


「つまり…とりあえずアヤカの姿を絵にすることって言うのが、一歩目ってこと?」


「はい」


 私はしばらく静かに考える。絵を描くという言葉が出て来たとき、頭の中にある人物が現れてしまった。現れてしまったのであれば、その人物の所に行くしかないだろう。


「…どうせ、お店に居るだろうから」


 そう言うと、私はスマホを手に取り、電話をかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。