表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/41

第36話 本物の誘拐

 残暑の厳しい昼下がり、オーレリアとノルとネロは、家のすぐ横を流れる川で涼んでいた。冷たい水に足を浸すと、火照ったからだからすっと熱が引いていく。


『わーい!』


バシャバシャ


『キャー!!』


バシャバシャ


「今日も暑いねー。夏って長いなー」


 川岸に腰掛け、ノルとネロが遊んでいるところを眺めていると、えっちゃんが森から帰ってきた。


『リア、人間の子供を連れた馬車が森に入って来てる!浅い場所だけど、何してるんだろう?』

「危ないね。何かあったのかな?」


 今まで、魔の森の浅い部分に冒険者が入ってくることはあっても、子供が入ってきたことはなかった。何か困ったことでも起きているのだろうか。


 オーレリアたちは様子を見に行くことにした。


 えっちゃんに乗り、森を駆け抜ける。森の浅い場所、でもグレンハルトの町とは離れた森のはずれにその馬車はあった。

 どうやら岩場に拠点を作ったようで、魔物避けの香が焚かれていた。辺りは酷い臭いに包まれている。


 オーレリアたちは遠くから様子を伺っていた。子供の姿は見えないが、魔力でたどると、確かに8人の子供が確認できる。

 対して大人は13人、あんなところで何をしているのだろう。


『何をしているんだろうな?』

「えっちゃん、よく見つけたね。こんなところまで遊びに来ていたの?」

『いや、グリムウルフが教えてくれたんだ』

「グリムウルフ?そんなのいたっけ?見たことないけど」

『聖域には近づかないように言ってるからな。ウルフ系の魔物はフェンリルの眷属みたいなものだから、奴らから森の情報は入ってくるんだよ』

「初耳なんですけど!」

『そうだっけ?まぁ、あんまり用はないからな。リアたちに狩られたくなかったら近づくなと言ったから、普段からあの辺にはいないんだよ』

「そうだったんだ。言ってくれれば狩らないのに」

『それよりもあっちだ!どうする?』

『ねぇりあ。なんか、いやなかんじがする』

『うん。なんかねぇ、いやなかんじするよ』


「嫌な感じか……そうだね」


 オーレリアが嫌な感じの正体をたどっていくと、どうやら子供たちの首元につけられている魔道具が原因のようだ。


「あれは……たぶん、奴隷が付けられる首輪だ」

『奴隷?』

「本に書いてあった。ほとんどの国ではもう禁止されているらしいけど、ゼノスガイア帝国ってところには、まだ奴隷文化が残っているんだって」


 オーレリアは本で読んだ内容を思い出し、胸糞悪くなってきた。


『りあ、おこってる?』

『だいじょうぶ?』


 ノルとネロがオーレリアの不穏な空気を感じて心配する。


「大丈夫だよ。とにかく、あの子供たちはどこかの町から誘拐されてきて、帝国に連れていかれるんだろうね。あまり国同士の問題には関わりたくないんだけど、見つけてしまったものは仕方がない」

『リア!俺も行くぞ!』

『おれも!』

『ぼくもいく!』

「みんなにはあの魔物除けの匂いがきついでしょ?洞窟の外で見回りをしている奴が5人いるからそっちをお願い。なるべく殺さないようにね」

『分かった!任せろ!』

『まかせろー!』

『りあは、どうするの?』

「わたしは洞窟の中に入って子供たちを連れだしてくる」


 オーレリアはそう言って魔法の杖を取り出し、一人で馬車の方へ飛んで行った。外套のフードをしっかり被る。


 馬車には人の気配はなく、岩場の洞窟の様になっている場所に人が集まっているようだ。洞窟の入り口に向かって行くと、見張りと思われる男が二人、武器を手に駆け寄ってきた。


「貴様!何者だ!」

「何だお前は!なんでこんなところに子供がいる!」

「あなたたちは、こんなところで何をやっているの?」

「何だてめぇ!殺されてぇのか?」

「まぁ待て!子供が自分から来てくれたんだからよ、こいつも連れて行けばいい!」


 男の一人がオーレリアに掴みかかろうとした。


 オーレリアは軽く指を振る。

 目に見えない衝撃が男を横から叩きつけ、体が宙を舞った。


「がっ……!」


 地面に転がった男はそのまま動かなくなる。


「なっ……!?」


 残ったもう一人の男が慌てて剣を構える。だが、その足元に魔法陣が浮かび上がった。次の瞬間、男の視界がぐらりと揺れ、糸が切れたように崩れ落ちた。

 こんな森の中にいる子供が普通の子供のわけないのに、馬鹿な大人である。


「外にいる見張りと合わせてこれで7人。残りは6人か」


 人数の確認をしていると、中からさらに3人のゴロツキが出てきた。大きな声で汚い言葉を叫んでいてうるさいので、手をサッと振った。


 周囲の空気がドンッと弾け、見えない壁に叩きつけられたように、三人の体が後ろに吹き飛ぶ。剣が地面を転がり、男たちはそのまま動かなくなった。


 洞窟の中は思っていたよりも広かった。ただ、魔物除けの香だけではなく、据えたような臭いが漂っていて非常に臭い。

 オーレリアは風の魔法で換気をしながら洞窟の奥に向かって歩いて行った。


 今いる場所は少し広くて、見張り達のたまり場のような場所になっていたのだろう。乾燥肉や酒瓶などが転がっていた。

 

 洞窟の中には横穴がいくつかあり、そのうちの一つに子供たちが集められているようだ。見張りが一人ついている。

 でも、その前に一番奥にまだ二人いる。そっちから先に片付けたほうがいいだろう。


 オーレリアが奥に向かって歩いて行くと、粗末な扉のようなものが乱暴に開いて大柄な男が出てきた。


「騒がしいな!何してやがる!……は?」


 男はオーレリアをみて、一瞬戸惑ったが、入り口付近に倒れている仲間を見て顔色を変えた。


「……てめぇ、何者だ!」


 何者だって聞かれて、答えるわけないのに、とあきれながらまた手を軽く振る。部屋の奥から出てきた男も一緒に壁に叩きつけた。鈍い音。それきり動かない。


「残るはあと一人」


 洞窟内の横穴に戻り少し進むと、牢屋のような格子が組まれた場所があった。その扉の前にいた男を払い飛ばす。


 格子の向こうでは、子供たちが身を寄せ合っていた。怯えた目でオーレリアを見ている。見たところ、獣人族の子供たちだ。あとは、エルフの少女が一人。


 オーレリアが格子の鍵に触れると、パキンと乾いた音を立てて砕けた。

 子供たちが目を見開く。だが、誰も声を出さない。相当怯えているようだ。


 オーレリアは扉を開け放ち、声をかける。


「大丈夫?怪我はない?」


 みたところ、かなり疲れている。服も汚れているが、怪我はなさそうだった。声をかけられても、小さな獣人の子供たちの耳や尻尾は不安そうに伏せられている。そのなかで、一人だけいたエルフの少女がかすれた声を発した。


「あなたは……?エルフですか?助けに来てくれたの?」

「そうだよ。わたしはハイエルフのオーレリア。ここにいた奴らはみんなやっつけたから、早くここから出よう」

「……ハイエルフ?……やっつけた?でも、どうやって……」

「魔法で。あなただって魔法使えるでしょ?」

「私は……でも、これをつけられてしまったから……くすん」


 エルフの少女は首元につけられてた魔道具に触れ、泣いてしまった。


「あぁ、それね。大丈夫、こんなの簡単に外せるよ。でもここは暗いから早く外に出よう」


 エルフの少女を促し、獣人族の子供たちに手を貸して立たせる。力の入らない子供たちは助け合いながら、ゆっくりと歩いて洞窟の外に出る。

 途中、倒れたゴロツキ共を見て怯えてしまった子もいたが、一番小さい子はオーレリアが抱っこして、他の子たちは手をつないで、何とか洞窟から出ることが出来た。


 洞窟を出た先では、ノルとネロとえっちゃんが待っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ