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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第2章

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第33話 たまには役に立つ

 翌日、銀鹿亭の厨房に呼ばれて行ってみると、アルヴィンが大きな鍋を差し出した。


「できたぞ!グリムバードのスープとグリムバイソンの煮込みハンバーグだ!あとこっちはグリムベアのメンチカツだ!」

「やったー!ありがとう!アルヴィン!」

「いや、かまわねぇよ。俺もこんないい食材で料理が作れて楽しかった!もらった肉もあるし、うちの食堂でも売り出していいか?」

「もちろんだよ!」

「また珍しい肉を手に入れたら持ってきてくれると嬉しい!そのときは腕によりをかけて美味いものをつくるぜ!」


 オーレリアは料理を受け取ると、アルヴィンとミレーネにお礼を言って宿をあとにした。



 その後、冒険者ギルドにニワトリを引き取りに行き、午前中には町を出たので、お昼過ぎには家に着いた。

 庭の端にはすでにニワトリ用の小屋を作っていたので、そこにニワトリを入れる。


『りあ!にわとりさんのなまえは?』

「え?名前?」

『そうだよ!これから、たまごをうんでくれるんだよ?なまえがないとこまるよ?」

「う~ん、名前ねぇ」


 ネロがまた名前にこだわりだした。困った、何も考えてなかった。


「じゃあ、ネロがつけてあげてよ!」

『えっ!ぼくが?』

「そう!従魔契約じゃないんだから、わたしじゃなくてもいいんじゃないかな?ネロがつけてあげてよ!」


 うん。実にいい案だ。


『えー!じゃあね、じゃあね、こっちのこはピピちゃん!』

「ピピちゃん……」

『えー!ネロだけずるいぞ!じゃあ、こっちのこはポポちゃん!』

「ポポちゃん……」


 ネロは小さくてトサカがピンと立っている方にピピちゃんと名付けた。ノルは少し大きくてトサカが倒れている方にポポちゃんと名付けた。

 ノルとネロは初めての名付けにちょっと嬉しそうだ。ニコニコと、ピピちゃんとポポちゃんを眺めている姿が可愛い。


『ピピちゃんとポポちゃんか。可愛いな!』

『えへへ~!かわいいでしょ!』

『りあ!ポポちゃんは、いつたまごうむ?』

「さぁ、どうだろうね?養鶏場の人にお世話の仕方を教えてもらったから、みんなも手伝ってね!」

『うん!てつだう!』

『おれも!がんばる!』

『早くたくさん卵産んでくれるといいなー!』


 新しくニワトリも加わり、魔の森のスローライフは充実していく。



***



 今日は朝からしとしとと雨が降っていた。こんな日は家でパンを焼くに限る。たくさん作っておかないと、すぐに無くなってしまうのだ。


 ノルとネロとえっちゃんは、リビングのソファでスヤスヤと寝息を立てていた。


 オーレリアは大量の小麦粉に砂糖とバターと少しの塩、そして自家製イーストを加え混ぜる。もちろん魔法で。水の量を微調整しながらいい感じの生地になるようにこねたら、一次発酵。


「どんなパンにしようかな。食パンはサンドイッチ用に必要だから別にして、あとは、ナッツを入れたパンと、チーズを入れたパンと、レーズンパンと、チョコ入りのパンも作ろうかな」


 発酵を終えた生地を何等分かに分け、それぞれ具材を混ぜ込んだら丸く形成する。そしたら二次発酵。

 ニックのオーブンの中の回転する棒を外して、パン生地が並んだ鉄板を入れる。焼き加減はニックにお任せだ。


「よし、ニックよろしくね!どんどん焼いちゃって!」


 ニックがクルリと頭を回してパンを焼き始めると、部屋中にパンのいい香りが漂い始めた。


『……スンスン』

『……ピクッ』

『……スンスン』


 ガバッと、ぐっすり寝ていたはずの三匹が飛び起きた。


『いいにおいがする!』

『ぱんのやけるにおいだ!』

『美味しそうな匂い!』

「寝てても分かるんだ?」

『すぐに、わかった!』

『たべたい!』

『味見する!』

「焼き立てのパンって美味しいもんね!もうすぐ焼けるから待っててね」


 みんなでパンが焼けるのを今か今かと待っていると、とうとうニックが最初のパンを焼き上げた。


『わーい!できたー!』

『おいしそう!』

『早く食べよう!』

「熱いからちょっと待ってね。火傷しちゃうよ」


 粗熱が取れるまで待とうと思ったのだが、待ちきれなかったえっちゃんが風魔法で冷ましていた。


「じゃあ、これがナッツでこっちがチーズね。あとこれはレーズンで、つるっとしてるのがチョコパンだよ!どうぞ!」

『『『いただきまーす!』』』


 パックっとパンにかぶりつくと、中から湯気がフワッと立ち上る。


『おお~!おいしー!』

『あったかくて、ふわふわだー!』

『すごい!ホワッホワで、フワッフワだ!』

「やっぱり出来立ては美味しいね!」


 それぞれが全種類のパンの味見をしたので、せっかく焼いたのにすぐになくなってしまった。でも、試食している間にもニックはパンを焼き続けているので、まだまだある。……まだ大丈夫。……ちょ……ちょっと待ってよ。


「ねぇ!味見でしょ?食べすぎだよ!」

『やわらかいから、くうきみたい!』

『そう、くうき!まだまだたべれそう!』

『膨らんでる分は空気だから』

「あ~ちょっと待って!なくなっちゃう!」


 焼きあがったそばから次々と食べられてしまう。ニックも追いつかない勢いだ。


「ねぇ、味見おしまい!ほら、いつのまにか雨やんでるし、外に遊びに行ったら?」

『あ、ほんとだ!』

『あめ、やんでる!』

『じゃあちょっと狩りに行ってくるか!』


 行ってきまーす!と言って三匹は出かけて行った。ふぅ、危うく焼いたパンを全部食べられてしまうところだった。雨がやんでくれてよかった。


 オーレリアは、残りのパンをどんどん焼いて空間収納にしまっていく。食パンは冷ましてから薄くカットしてサンドイッチ用にした。

 大体のパンを焼き終えた頃、バンッ!と勢いよくドアが開いた。


『リア!ワイバーンの群れがいるぞ!』

『かりにいこうよ!』

『たくさんいたよ!』

「ワイバーンの群れ!やったね!」


 オーレリアはえっちゃんに乗り、ウッキウキでワイバーンが群がっている場所まで急いだ。


「おぉ!たくさん飛んでるね!みんな、なるべくお肉には傷つけないようにね!」

『『『ラジャー!』』』


 ワイバーンは美味しい食材だった。ドラゴンほど魔力を帯びてはいないが、その分クセがなく、飛竜特有の力強い風味があった。

 この辺りではあまりたくさんは見かけないから、群れているならチャンスだ。しかもワイバーンたちはグレンハルトの町の方へ行こうとしていた。これはもう狩るしかない。


 ノルとネロとえっちゃんは地上から魔法攻撃で、オーレリアは飛行魔法で上空からワイバーンを狩っていく。

 雨のせいで今日一日をほとんど寝て過ごしていた三匹は、のびのびと狩りを楽しんでいたし、オーレリアも、頭の中でワイバーン料理を考えながら次々と狩っていった。


「だいたい終わったかな?みんな!解体するからわたしのところに集めて!」

『『『はーい!』』』


 オーレリアはみんなが集めてくれたワイバーンを解体しては空間収納にしまっていった。解体を済ませ家に帰るころには、辺りは薄暗くなっていた。みんなでお話しながら家に帰る。


『今日の夜ごはんはワイバーンだ!』

『たのしみー!』

『りあ、なにつくるの?』

「何にしようかな?煮込むと美味しいんだけど時間がかかるから、今日のところはニックに焼いてもらおうか。ワイバーンのステーキだね!」

『ジュルル!』

『わいばーんのすてーき!たのしみ!』

『美味そう!早く食べたい!』


 赤ワインで煮込んだり、香草で煮込んだり、シチューもいいな。パンもたくさん焼いたし、これだけたくさん狩ったからしばらくは楽しめそうだ。



 一方、さかのぼること数時間前、グレンハルトの町は一時騒然としていた。ワイバーンの群れが町へ近づいていると、見張りの兵士から報告が入ったのだ。

 城門を閉じ、騎士団と冒険者は臨戦態勢を取った。

 だが、運よくワイバーンの群れは魔の森上空で姿を消した。しばらく様子を見ていたが、町に近づいてくる気配はない。夕方になり、ようやく町は落ち着きを取り戻した。


「ありぁ、オーレリアたちだな」

「そうだな!きっと今頃はどうやって食べようか相談しているころだろう!」

「ハハハ!違いねぇ!」


 ガイウスとフリードリヒが、森を見ながら楽しげに笑った。


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