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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第2章

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第31話 噂の新人冒険者

 森の奥で薬草採取をしていたオーレリアの前に現れたのは、オーレリアより少し大きいぐらいの少年三人組だった。

 

「おい!そこの新人!」


 左端の男の子が腕を組んで立ちはだかる。急になんだろうと思って振り返って見つめていると、なぜかタジタジとしてしまったが、気を取り直してまた話しかけてきた。


「おい!そこの新人!この場所はな、俺たちが先に目を付けた場所だぞ!」

「昨日たまたま見つけたってだけだぞ?」


 右端の男の子がツッコミを入れている。


「うるさいぞ、セト!俺たちは、お前より一か月先輩なんだ!先輩のほうが優先だ!」

「アルト、そんな決まりはないぞ?」

「おい、セト!今俺が新人冒険者にいろいろ教えてやってるんだから黙ってろよ!」

「自分がやられて嫌なことは、人にしちゃいけないんだぞ?」

「分かってるよ!俺はただ、ちょっと噂になっていた新人に調子に乗らないように注意するだけだ!」

「そうか?ならいいけど」


 なんだろうか、この人たちは。噂になっていた新人ってわたしが?なんかまずいことしたかな?


「うわー!でっかい狼だーー!!!」


 今まで大人しく成り行きを見ていた真ん中にいる男の子が、えっちゃんを見つけて恐怖で目を見開いた。

 左右の男の子も遅れてえっちゃんに気付き、悲鳴を上げている。


「ヒィー!ホワイトウルフだー!殺されるー!」

「ギャー!逃げろー!」

「しぬぅ~!」


 えっちゃんはただ少年たちの方を見ただけなのに、この怯えようはどうだろう。こんなにもふもふで可愛いのに!


 左右の男の子が逃げ出そうと走り出したのに対し、真ん中の子は腰が抜けたらしく、アワアワと尻もちをついて後ずさる。

 なんだか可哀そうなので、助け起こそうとオーレリアが一歩踏み出すと、


「ひえー!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「ピノ!!すみませんでした!もうしませんので、ホワイトウルフをけしかけないでくださいー!」

「命だけは、命だけはお助けをー!」


 腰を抜かした子の元に、左右にいた子が駆け寄ってきてなぜか命乞いを始めた。今にも泣きだしそうな勢いだ。


 ちょっと待ってほしい。なんだか人聞きが悪いではないか。そんな化け物を見るような目で見つめられても困る。

 オーレリアがどうしたものか考えていると、心配したえっちゃんが隣に来てスッとお座りをした。


『なんなんだ?こいつらは?』

「さぁ、なんだろうね?」

『俺なにかした?』

「えっちゃんはおりこうさんにしていたよ」


 オーレリアはえっちゃんをよしよしと撫でまわす。えっちゃんは頭を下げて大人しく撫でられている。


 その光景を見ていた少年三人組が、驚いた表情でオーレリアとえっちゃんを交互に見つめている。


「「「すげーーー!!!」」」


 と、驚いたと思ったら、急に我に返ってまた威張ってくる。


「き、今日のところは勘弁してやる!ホワイトウルフが相手じゃ仕方ない!」

「ほら、ピノ!立てるか?行くぞ!」

「俺、別に泣いてねーし!怖くねーし!」

「分かったから、ちゃんと歩けよ!」


 謎の少年三人組は、腰を抜かした子を左右から抱えながら、それでも何か捨て台詞を言いつつ元来た道を戻っていった。


「……えぇ?なんだったの?」

『訳が分からないな』

「えっちゃん気付いた?わたし、あの三人と一言もしゃべってないんだよ」

『あいつら、勝手に文句付けて勝手に怯えて、勝手に逃げていったのか。ハハハ!面白いな!』

「面白いのかな……?」


 彼らはいったい何がしたかったのだろうか。考えても分からないので、今日はもう町に帰ることにする。薬草は十分集まったし。


『俺の背中に乗っていく?町までなんてすぐ着くぞ!』

「うん、お願い」


 また変な人に絡まれないように、えっちゃんに乗せてもらうことにした。

 

 町に戻ってからは、すぐに冒険者ギルドへ向かう。依頼を完了するため受付のアニーのところへ薬草を持っていった。


「おかえりなさい、オーレリアさん!早かったですね。あら?何かありました?」

「ただいま、アニー。何かあったといえば、あったけど……」

「どういうことですか?」

「ねぇ、わたしって何か噂になってた?」

「もちろんですよ!とびきり可愛いエルフってだけでも噂になるのに、フェンリルを従魔にしているんですから、噂になって当然です!」


 なぜか胸を張って言うアニー。


「そうなの?でも、えっちゃんは町では小さくなってるから、フェンリルって分からないんじゃない?」

「従魔のことだけではないですよ?オーレリアさんは魔の森の調査隊を守って町へ来ましたし、素材をたくさん売ってくれるでしょう?それでもういろんな憶測が飛び交っているんですよ!」

「……そうなんだ、全然気づかなかったなぁ」

「もちろん、調査隊にいた冒険者の皆さんには守秘義務もありますし、変な噂が流れないように注意してくれています。ギルドでも気をつけていますので、そこまで騒ぎにはなっていないと思いますが。……もしかして、何かありました?」

「あ~、ううん、大丈夫」

「そうですか?もし何かあったら、すぐに教えてくださいね!全力で対処しますので!」

「うん、わかった。ありがとう!」


 いろいろあったが、とりあえず依頼達成なので、冒険者証の有効期限がまた三か月先まで伸びた。

 それにしても、まさか噂になっていたとは思わなかった。今度からは絶対に家の近くの森で薬草を探してから来ることにしよう。そして、彼らのことはもう忘れよう。



 オーレリアたちは冒険者ギルドを出て、宿へ向かった。

 この宿を紹介してくれたSランク冒険者パーティー黄昏の獅子たちは、今は遠征に行っていて留守なのだとか。Sランクにもなると指名依頼もあり、忙しいらしい。


 お風呂に入って先程の疲れをサッパリと洗い流してから、夕食をいただくことにする。


 銀鹿亭の食事は相変わらず美味しい。今日の夕食は香ばしく焼かれた豚肉のロースト、たっぷり野菜のスープ、黒パンと茹でたじゃがいもがお皿にこんもりと盛られていて、ボリューム満点の夕食だった。


「あぁ、美味しい!」

『うまうま……ガツガツ!』

『おいしーねー!』

『うん、いつもと違った味付けもいいもんだな!』

「そうだよね!たまにご飯だけでも食べに来たいね!」


 そういえば、空間収納にしまっているアルシアに作ってもらった料理が、大分減ってしまっていたんだった。銀鹿亭の料理は美味しいから、作ってもらえないか交渉してみよう。


「ねぇ、ミレーネさん。ここの料理って持ち帰りできる?しかもたくさん」

「持ち帰り?う~ん、どうかしら。ちょっとアルヴィンを呼んでくるわね。そろそろ手が空くころだし」


 ミレーネが厨房の奥に声をかけると、ガタイのいい男性が姿をみせた。ミレーネの夫、厨房担当のアルヴィンだ。


 アルヴィンとミレーネは元は冒険者だったらしい。結婚を機にミレーネの実家だった銀鹿亭を継いだそうだ。アルヴィンは昔から料理が好きで、野営中の料理も担当していたのだとか。


「なんだ?」

「あのね、材料持ち込むから鍋一杯のスープとかお肉の料理を売ってくれないかなと思って」

「べつに構わんが、材料はなんだ?時間はあるのか?」

「材料はねぇ、魔の森固有の魔物肉なら一通りあるんだけど、スープとかシチューにするならどれが美味しい?」

「なに!魔の森固有だと!?高級食材じゃないか!ちょっと見せてくれ!」

「いいよ」


 厨房に入れてもらい、解体済みの肉を出していくと、アルヴィンは少し興奮しながら肉を確認していった。


「鮮度も抜群だな。これを料理していいのか!腕がなるぜ!」

「やった!じゃあお願い!鍋はこれね」


 オーレリアは空間収納から、この町で売っていた一番大きな寸胴鍋をいくつか取り出した。


「ああ、任せとけ!それと、金は要らないから余った肉をもらっていいか?」

「お肉がほしいなら別で用意するよ?」

「いや、これは高級肉だ。余りの肉で構わない」

「お肉はいっぱいあるから大丈夫。また頼みたいから受け取ってよ」

「わかった!ありがとよ!」


 交渉成立。これで美味しいスープがお家でも飲めるぞ!

 スープは少し煮込みたいということで、もう一泊することになった。


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