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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第2章

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第29話 果樹園

 今日は森に果物を探しにやってきた。

 ブルーベリーを見つけたので、籠に山盛りに収穫する。


 ジャムにしようかな、パンケーキに入れてもいいなと、オーレリアは楽しく採取しているが、えっちゃんは周囲の警戒を怠らなかった。なぜなら、グリムタランチュラに襲われたのは、果物採取のあとだったからだ。

 楽しく採取して油断してると、またうっかり火柱を上げてしまうかもしれない。オーレリアに虫を見せてはいけないのだ。


「えっちゃん、わたしだってもうあんなことは(たぶん)しないよ。ちゃんと魔力探知もしてるから大丈夫」

『でも、虫は見たくないだろ?それに俺は採取は手伝えないからいいんだ!』

「そっか。じゃあ、そろそろ場所を変えようかな。他の果物を探しに行こう!」


 えっちゃんの背に乗せてもらい、魔の森を縦横無尽に駆け回る。


「気持ちいい!」

『えっちゃん、はしるのはやいねー!』

『かっこいいねー!』


 ノルもネロも、走るのが速くて大きなえっちゃんに憧れているらしい。


『ぼくも、これぐらいはやく、はしれるようになるかなー?』

『おれも、えっちゃんみたいに、おおきくなるかなー?』

『なれるぞー!二人ともいっぱい食べてるからすぐに大きくなるぞ!』


 心の中で、えー?なれるかな?と思ったが口には出さない。


 ノルとネロに褒められて気分が良くなったえっちゃんは、あまり来たことがない森の端の方まで一気に走った。


「ずいぶん遠くまできたね。あれ、あの木になってるの、桃じゃない?」

『もも?』

『もも〜?』


 えっちゃんが木の近くまで歩いていく。


「あ、やっぱり桃だ!やったー!よく見たら桃の木いっぱいあるね!」


 みんなで手分けして収穫していく。桃はそのまま食べても美味しいし、お菓子にしても美味しいし、大好きなフルーツだった。


「こんなにたくさん桃の木があるから、何本か持って帰ろうか?」

『え?木を?』

「そう。ここ、ちょっと遠いし」

『もっていこう!』

『ぼく、もも、だいすき!』

『でも、家の庭には置けないだろ?畑があるし。鶏小屋建てるって言ってたじゃん』

「そうだね。でも、いい場所があるんだ!」

『いい場所?』


 フフンと笑ったオーレリアは、小さめの木を何本か、魔法で土ごとボコっと抜いて、空間収納にしまっていく。


「よし。えっちゃん、あの焼け跡まで行ってくれる?」

『焼け跡?あのリアが燃やした場所?』

「そう。あそこに果樹園を作りたいんだ!」

『かじゅえん?』

『りあ、かじゅえんってなーに?』

「果物の木をあそこに植えて育てるの。だからいろんな果物の木を集めたいんだ」


 あの焼け跡は、オーレリアが木を燃やしたせいで、陽当たりがよくなったし、近くに川も流れている。

 あのままにするよりいいと思ったのだ。それに、あそこならオーレリア一人でも行ける距離だった。


 えっちゃんにのり、焼け跡まで戻る。まだ手つかずのそこは、黒く焦げて倒れた大木や、炭になった地面がそのまま残っていて、知らない人が見たら一体どんな恐ろしい魔物が暴れたのだろうと思うかもしれない。


「少し綺麗にすれば大丈夫だよね」


 そういって、焼け焦げた倒木や、低木などを片づけていく。折れてしまったけど焦げてない木はベンチなどに再利用する予定だ。


 面積が広いので少しずつ進めることにして、とりあえず半分ほどの広さの地面を整えた。

 そして、成長することを見越して広めの間隔をとり、木を植える穴を開け、そこに持ってきた3本の桃の木を植えていく。


「りんごとか、梨とか、他の木も探してここに植えたいなぁ」


 さきほど回収した木でベンチを作る。オーレリアは工作はそれほど得意ではないので、工作用の魔導書を見ながら作業をしていた。


「ここを、こうか!……よし!木陰のベンチができた!みんな休憩しよう!」

『わーい!』

『ねぇ、さっきのもも、たべてみようよ!』

『いいね!桃、甘いかな?』


 みんなでベンチに座り(えっちゃんは地面)、桃をよく洗って食べてみる。


「うん!ちょっと早いけど、甘いね」

『かたいけど、おいしい!』

『うん、もうすこししたら、もっとあまくなるよ!』

 

 ネロは桃が好きだから、ちょっと詳しい。

『俺は、パリパリの桃も好きだぞ!』

「ブルーベリーも食べる?ベリー系もここにまとめて植えようっと。これは種からでも育つのかな?精霊がたくさんいればなー」

『せいれいさん、おうちのまわりにはふえてきたよ?』

『みずうみにも、ふわふわとんでるよ?』

「そうなんだけど、聖域を出たらほとんどいないからね。もっともっと増やさないと!」

『どうやったら増えるんだ?』

「……さぁ?わからない。いるだけでいいって言われたし」

『じゃあ、森の中でいろいろやっていればそのうち増えるんだろう!もっと狩りに行こうよ!』

「狩るのは必要な分だけでいいから。でも、森の中はもっと見て回りたいね。まだ行ったことのない場所がたくさんあるし」

『リアがまだ見たことのない魔物もたくさんいるぞ!冬だけしかいない奴とかもいるし。』

『そうなの?おれもたべてみたい!』

「ノルは食いしん坊だねぇ。あ、そういえば、そろそろローラのところに行かなきゃ!」

『みるくもらうの?はやくいこう!』

『ろーら、げんきかなぁ?』

『よし!じゃあ行こう!乗って!』


 ミルクが大好きな三匹はすぐさま行動を開始する。えっちゃんにのって今度はローラがいる山を目指す。魔の森を北に進んだ山に、ローラたちはいた。


「ローラ!久しぶり!元気だった?」

『おや、お嬢ちゃんじゃないか!久しぶりだねぇ!』

『わーい!ろーら、ひさしぶりー!』

『ろーら!げんきだった?』


 ノルとネロはぴょんぴょんと跳ねながらローラに近づき挨拶をする。そして他のグラスブルたちにも挨拶に行った。えっちゃんは怖がられてしまうので、少し離れたところでお座りしている。


『ミルクかい?待っていたんだよ、前にもらった塩が美味しかったからねぇ!』

「ふふ、ちゃんと持ってきたよ。今日もミルクくれる子はいるかな?」

『それじゃあ、みんなを並ばせるから、ちょいと待ってておくれよ!』

「ありがとう!えっちゃん、わたしの隣においで!いい子にしていてね」

『わかった』


 オーレリアは空間収納から大きな岩塩の塊を取り出した。グラスブルたちはそれを見て、そわそわしながら並び始めた。一番最初は当然ローラだ。


 ローラはオーレリアが乳しぼりをしている最中もずっとしゃべっていた。あの子の子供は口が達者だの、あの子は器量よしだの、オーレリアにはよくわからない内容だったけど、ローラのおしゃべりは面白いので、あきることなく乳しぼりができた。


 オーレリアの握力が尽きかけたころ、ようやく希望者全員の乳しぼりが終わった。


「あ〜疲れた。もう力が入らない」

『なんだいお嬢ちゃん、情けないねぇ。もっと強くならないと雄牛にモテないよ?』

「モテなくていいよ」

『あたしなんて、ここらじゃ一番の力持ちだし、器量よしだし、若い頃はそりゃあモテたものさ!今だって若いけどね!ガハハハハハハハッ!』

「アハハ!ローラは面白いからモテそうだね!」

『バッ!あんた、面白いってのは誉め言葉じゃないよ!まったく、お嬢ちゃんはまだまだおこちゃまだからわかんないかねぇ。あたしのこの毛並みなんて――!尻尾の先っちょなんて――!背中のこの模様見えるかい?これなんて――!――わかるかい?』

「あ、そろそろ帰らなきゃ!夜ごはんの時間だ!またね、ローラ!」

『そうかい?仕方ないね。じゃあまたおいで!お土産待ってるよ!』


 楽しかったけど疲れた。ローラはオーレリアが知るなかで、一番のおしゃべりだ。牛の美醜はぜんぜん分からないけど、ローラはきっといい女なんだろう。……たぶん。


 力の入らなくなった腕をだらんとさせて、オーレリアは三匹と共に家路につくのだった。


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