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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青


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第1話 はじまり

 ここは鬱蒼とした木々に囲まれ、昼でも薄暗い『魔の森』。強力な魔物が多く住み着き、人が立ち入ることは難しい危険な場所だ。



「ノル~!ネロ~!行くよー」

『いく!いくー!』

『まってー!』


「今日は何か見つかるかな。果物とかあるといいな~」

『おれは、お肉をたくさん狩るぞー!』

『ぼくも、いっぱいやっつけるぞー!』


 そんな危険なはずの森の奥に住む、一人の少女と二匹の黒猫。


 少女の名前はオーレリア。ハイエルフという希少な種族で、年齢は112歳。といってもこの世界では一番の長命種なので、見た目は人でいうと10歳〜12歳ぐらいといったところ。

 銀色の長い髪に透き通るような青い瞳で、ハイエルフという種族だけあって、非常に整った顔立ちをしている。


 二匹の黒猫はケット・シーという妖精で、真っ黒でふわふわな毛並の、双子の小さな男の子。


 子猫の名前はノルとネロ。


 ノルは暗闇で光る金色の瞳と鍵尻尾が特徴で、食べることが大好き。とにかくいつも食べ物を探している。よく食べるから力も強い。ツンデレタイプ。


 もう一方のネロは、光によって色が変わるヘーゼルの瞳に、胸にぽちっとある白いマークが特徴の甘えん坊。普段はおっとりとしていて、オーレリアにモフられるのが大好き。


 そんな可愛い一人と二匹が、なぜこんな危険な森の奥で生活しているかというと……話は数か月前にさかのぼる。



***



「おーい!リア!ちょっとこっちにおいで」

「ん?師匠、どうしたの?」


 ここは魔の森があるミッドラント大陸から遠く離れた別の大陸にある『蒼の森』とよばれる場所。


 蒼の森とはその名の通り、植物の葉や茎が緑ではなく青色で、一歩森に入ればまるで水の中のように視界が青色に染まる。幻想的で美しい森。


 濃密な魔素に満ちていて、色とりどりの精霊たちがそこらじゅうにフワフワと漂い、神秘的な光景が広がっている。


 その蒼の森に住むのが、ハイエルフというこの世界では最も長命な種族である。

 争いを好まず、森の奥で自然とともにのんびりと暮らしている。魔法に優れ、長くとがった耳と、美しい容姿。それから、成長しても、年齢に限らず20代ぐらいの見た目なのが特徴である。

 

 エルフとの違いは、その寿命の長さと、魔力量の多さ、あとは、この世界の創造神である女神ディオーネの『代行者』であること。



 そんなハイエルフ達は、大きな樹と一体化したような家に住んでいて、部屋の明りから、キッチンの火、お風呂やトイレに至るまで、生活のほぼすべてに魔法を使用していて、清潔かつ快適な生活を送っている。魔法が使えて当たり前の種族である。


 そんな里の中でも、中央にある特に大きな樹の家は里長の家だ。


 その里長の家のドアが開き、オーレリアの魔法の師匠が顔をのぞかせた。

 オーレリアは森での採取を終え、ノルとネロと共に家へ帰るところだった。

 

 師匠に呼ばれたので、ちょこちょこと歩いて行き見上げると、頭をワシワシと撫でられた。


「ゼフィと話していたら、リアがちょうどいいんじゃないかという話になってね、呼びに行こうとしていたんだよ。一緒においで」

「ちょうどいい?」


 師匠に促され里長の家に入ると、応接間に通された。

 里長の仕事のお手伝いをしているペネロペが紅茶を入れてくれる。ノルとネロにはミルクをくれたので、二匹は嬉しそうに飲み始めた。


「なんだ、ずいぶん早かったな」

「風の精霊がすぐ近くにいると言っていたから、家を出てみたらちょうど前を通りかかってね、ラッキーだったよ」

「そうか。やぁ、オーレリア。実は女神様からお仕事の依頼があってね。一つはイゾルデに頼むんだが、もう一つの依頼はオーレリアにどうかと思ったんだ」


 落ち着いたところで、里長のゼフィリオンが話し始める。


 ちなみにイゾルデとはオーレリアの師匠の名前で、歳は2,000歳半ば。燃えるような赤い色のゆるくウェーブのかかった長い髪に、金色の瞳をもつ女性だ。


 里長の名前はゼフィリオン。ゼフィと呼ばれることが多い。3,000歳半ばぐらいで、金髪の長い髪を無造作にまとめている。緑色の瞳の男性だ。


「女神様の依頼って?」

「この世界にあるもう一つの大陸、ミッドラント大陸では、精霊が絶滅しかけているらしい。人族が争いばかりしているらしいからな」


 オーレリアの質問に、ゼフィが説明する。


「ふーん、そうなんだ……」


 遠くの大陸についてはよく知らないので、紅茶をいただきながら適当に返事をする。


「それでな、ミッドラント大陸の北にある『魔の森』と呼ばれる場所に、女神様の聖域があってな。そこにハイエルフがいれば、その場所から精霊が生まれるから、しばらく誰かそこにいてくれないか、とのことだ」

「そこで何をするの?……ポリポリ……モグモグ」


 ペネロペがクッキーを出してくれたので遠慮なくいただく。モグモグ……。


「別に何もしなくていいんだよ。ただその森に住むだけの簡単なお仕事だ。リアはどうせ暇だろう?ちょうどいいから、行っておいで」


 なんか師匠が勝手なこと言ってる。まぁ確かに暇だけど……でも、


「ちょうどいいって何が?」


 ノルとネロにもクッキーをあげながら聞いてみる。二匹はオーレリアの指も食べる勢いで夢中で食べ始める。モグモグしている姿にはいつも癒される。


『バクバク……モグモグ……』

『あ!それぼくのクッキーなのにー!』

「ノル!ネロの分まで食べちゃダメだよ。ネロ!まだあるからゆっくり食べてね」


 ノルが食いしん坊なので、こんな小競り合いは日常茶飯事だ。話の途中で子猫たちが騒ぎ出したが、いつものことなので誰も気にせず話は続いた。


「私も女神様の別の仕事で、しばらくここを離れることになったんだ。それに、リアは女神様の仕事は初めてだろう?初仕事にはちょうどいいと思うよ」

「まぁそうだな。その森に引っ越して、そこにしばらく住むだけだ。場所は変わるが、やることは今とたいして変わらないぞ。どうだ?」

「ふーむ……。それってこの子達も一緒に行っていいんだよね?――イテテ、ノル!それは私の指だからっ!もうクッキーはないからっ!!」

「ハハハ。もちろん一緒に行っていいし、嫌なら断ってもいい」


 ゼフィは優しい顔で言う。


「断ってもいいの?女神様のお仕事なんでしょ?」

「女神様のお仕事だが、嫌ならやらなくてもいいよ。他に行ってもいいってやつに頼めばいいだけだからな。例え女神様の依頼だとしても、だれも強制したりはしないよ」

「みんな行きたくないって言ったらどうするの?」

「そしたら、困っちゃうなー!アハハッ!」


 アハハって。まぁでも断る理由は特にないし。


「わかった、行くよ!わたし、まだ一人だけで遠出したことなかったし、これでようやく一人前だね!」


 にこにこと師匠とゼフィに笑いかけたオーレリアは、さっそく持っていくものを考え始めていた。


 ノルとネロが一緒ならどこにいても楽しく暮らせるよね!


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