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俺と首輪の協騒曲  作者: ふぁふぁに~る
熱風と離別の交響曲
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side:ライン 寂しいな

 フウがワームを倒してから数時間。オレはフウとの通信をいったん切り、再び森の出口へ向かって歩き続けていた。


 定期的に、それこそ一時間おきくらいにフウとは連絡を取っている。


 慣れのおかげか成長のおかげか、俺は歩きながらフウと感覚を共有する術を完ぺきではないにせよ身に着ける事が出来た。


 フウの身体から水魔術を放つのも徐々に慣れてきて、自らの魔素操作の指数となる魔力も向上しているような気もしている。


 森は足場が悪くて遠出するのは少し疲れるけど、今まで森暮らしをしていたわけだしフウに比べりゃ何でもないから休んでいられない。


 フウが着ていた俺の服。それを再び着て、ボロボロの寝間着姿で森を彷徨う浮浪者のような状態。


 幸いにも俺はまだ髭に困らされるような年ではないし、そもそもこの身体は毛が薄いようで見た目上はあまり汚らしさは感じないはずだ。


 腰には動物の皮を剥いで作った粗末な袋、ズボンには劣化で空いてしまった腰元の穴を少し広げて、そこに手作り打製石器のナイフを差し込んでいる。


 黒曜石って言うんだっけこの石、欠けると鋭くなって、動物の皮くらいは裂けるんだ。


「……フウの匂いするなぁ……って、何言ってんだ俺。フウみたいなこと言ってらぁ」


 やっぱり俺も寂しいんだ。時折チラッと横目で小さなフウの横顔を探してしまう。


 あの小さな身体を抱きしめたい。俺を見上げてにへらと笑うあの顔を見たい。


 早く、合流したいなぁ……。


「けど大陸の反対側って……どれくらい掛かるのかも分からないし……そもそも言葉は通じるのか?」


 心配事は全然尽きない、今こうやって森を進んでいるけど、そもそもこの道で合っているのかも分からない。


 気持ち的には学校を休んだ次の日の登校、言葉で表せないような微妙な緊張が俺の心理を占めている。


 まずは人に会わないとどうしようもない、ただこの格好で会うのは不審者扱いされそうだ。


「……仕方ないよなぁ」


 そう、仕方ないんだ。俺はそう割り切ることにした。


 ……もう何回割り切ったか分からないけど。その度にまたうだうだ考えてどうせ最後には心を割り切る。


「はぁ……ん゛、フウが呼んでる……」


 フウと俺との繋がり、フウは紐のようなそれを揺らすことが出来るようだ。


 俺は前へ前へと進む足をそのままに、意識を深く沈みこませフウの中へと魔素を入り込ませていく。


 繋がりを確固とすると、フウの声が聞こえた。さっきより一段高い、嬉しそうな声だ。


『にいちゃん!』


「ん、どうしたの? なんか興奮してるね」


『街みえた!』


「おぉ! ほんと!? やったじゃん!」


 ようやくか。かれこれもう探し始めて四半日は経ってるよ。


 そんな距離を寝起きのフウに歩かせるなんて、あの声は何を考えてるんだ、信じられない。


 俺がフウに遠隔で水魔術を使えてなかったらどうするつもりだったんだろうか、もし辿り着いたとしても、フウは満身創痍だったに違いない。


 ……いや、街に付いたからと言って安心できる要素もない。そこの住民がフウにどういう扱いをするのか分からないんだから。


『ん、どーしたらいい?』


「そうだねぇ……とりあえず言葉が通じるかどうか確認して……あ、ワームの死体は持ってる?」


『もってるぞ! ひきずってきた!』


 そうか、だったら……。


「じゃあそれを見せて。それで言葉が通じた場合は売れる場所を聞くんだ」


『売れる場所?』


「そう。街って事はお金があるはず、まずはお金が無いとどうしようもないし、中に入るにもお金がいる可能性がある。


 だから外からやって来た蛮族じゃなくて、取引ができる存在だって相手に思わせるのが大事だよ」


 全て漫画やラノベ、テレビとかの受け売り。それを咄嗟に思い出し、自分なりの考えも添えてフウへアドバイスをする。


『ふーん、なんかむずかしくて、よくわかんねぇけど……にいちゃんがそー言うなら、やってみる!』


「気を付けてよ……? それで言葉が通じなかった場合は……」


『……にいちゃん?』


「……ごめん、思いつかない。そうなったらなった時考えよ」


 だって言葉が通じなかったらどうしようもないじゃないか。


 きっと大丈夫なはずだけど。だって俺が終わった世界に連れていかれた時は、文字が読めるように知識を植え付けられていたし、今もあの世界の文字を書くことが出来る。


 だからきっと大丈夫だ。あの声は嫌なやつだけど、アイツを信じろ。


『でもさ、にいちゃん』


「ん? どした?」


 フウの言葉で我に返る。


 何か、他に心配するようなことあったっけ…。


『オレさ、街みえたっていったじゃん』


「あぁ」


『みえただけなんだよね、すっげえ遠いの』


「あぁ……」


 まあ、そりゃそうか。話を聞く限り広大な砂漠で、しかも見えただけと来た。


 あと何時間かかるんだろうな……けど太陽が真上に来る前に街、いや帝都とやらを見つけられて良かったよ。


 目印が太陽の向きしかないんだ。一度都の直線状から外れてしまうと、そのまま砂漠で遭難なんて事になりかねない。


 もう太陽は殆ど真上、昼ちょっと前くらい。俺も数時間歩き続けたし、休憩を取ろうかな。


 あ、そういえばフウがワームを持ってることで思い出した。俺もあの黒獣の素材を持ってたら何かの役に立つかもしれない。


 丁度右を向けば、洞窟への道中に見つけた目印の岩山がある。結構近いな、取りに行くか。


「じゃあ、気を付けてねフウ。あとさ、気づいてるかもしれないけどこれって念じるだけで俺に声は届くから、街中とかで声に出さないようにね。変な目で見られるよ」


『おう!』


「じゃ、切るからね」


『……うん、わかった』


 全く……いつもこうやって念話を切るのは俺からだ。そしてその度、酷く寂しそうな声で俺を送り出す。


 心が痛むんだよなぁ、あのフウの声。けれど気持ちを切り替えて、俺は洞窟へと向かった。

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