37.商会長はツンデレですか?
ウェルズの商館に戻るとタマキはすぐに俺たちの部屋に駆けて行った。
急げとは言ったがそんなに慌てなくてもいいと伝えたくてもタマキの背中は小さくなっていた。
まぁ焦っているのだろうし仕方ない。
「俺はウェルズのところへ行かないとな」
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「というわけでこいつらの捜索を引き受けた」
ウェルズはいつもの書斎で仕事をしていた。仕事をしているウェルズの机の上に先ほどリフェルから提示された探し人の依頼書を広げた。
依頼書を一瞥したウェルズは一瞬いつものニヤけ面から苦い顔へと変化した。次の瞬間にはいつもの顔に戻っていたので本当に一瞬だったが。
ウェルズにもこの手の依頼には思うところがあるのだろうか。
「キョウスケサマ、念のためお聞きしマスがこの依頼書がどういったものかはご存知なんデスよね?」
「もちろんご存知だとも。わかった上で引き受けている」
「いくら目撃情報があって追いつけそうだと言っても徒労に終わる可能性が高くても?」
「ああ」
即答するとウェルズはため息をついた。
「本来、奴隷は所有者の好きな通りに使役することができるのデス。この国では奴隷制度が認められていマスからね。なのでダンジョンの囮として連れて行くことになんの問題もないわけデス」
「わかってる」
「加えて貴族が使役している奴隷なのでショウ?その奴隷を助けに向かうことがどうゆうことになるのかもわかっていマスか?」
「わかってる」
「いえ、キョウスケサマはおそらくわかっておりまセン。要は貴族を敵に回すということデスヨ?相手の貴族のランクにもよりマスがタチの悪い上級貴族だった場合アナタだけでなく雇用主であるワタシにも実害が及ぶことまで考えていましたか?」
そう言われると弱い。
正直俺はマオとタマキの気持ちと俺自身の感情に動かされるまま今回の依頼を受けている。ウェルズ達のことはまったく考慮していなかった。
「…そこまでは考えていなかった。けどもしあんたらにとって都合が悪くなったら俺たちのことなんて切り捨てればいいだけだろう?お前なら知らぬ存ぜぬで流せるだろ」
俺自身安易な考えだとは思ったが素直に尻尾切りをしてくれればいいと伝えたがウェルズには大変不評だったようだ。
「そんなものが通用するのなら世の中苦労しまセン。関わっていた事実があるのだからそこをついてくるのは当たり前デス」
「じゃあお前はこの子らを見捨てろというのか?」
「そうは言ってまセン。ワタシも見殺しにするのは寝覚が悪いデスからね」
「ならいいだろ。俺はこの依頼でこの後すぐ出発するからな」
「だから慌てないでください。はやる気持ちもわかりマスがね」
ゆっくりとお茶を飲みながら話すウェルズに俺は苛立ちを覚え始めていた。
「アナタは隷属化スキルで他人の奴隷を自分の奴隷として奪うことができマスよね?なのでそのスキルを使って捨て石にされた奴隷はかたっぱしから隷属化させてきてくだサイ」
「…はい?」
「キョウスケサマが持ってきた依頼書の人間が探索に連れて行かれているのであれば戦力としてカウントしてないことははっきりわかります。なので死んでも構わないということなのでしょう。なので前任者が奴隷契約が切れたからと言って不審に思うことなどなくただ死んだと思うだけデス」
「なるほど…」
「それに私兵に気づかれずに接触できる奴隷は即隷属化させれば回復させる手間も省けマス。そうやって可能な限り助けてくればいいのではないデスか?そうしなければどうせ死ぬだけでしょうし」
ウェルズは冷たく聞こえる言葉を選んでいる気がする。
しかし話す内容からは奴隷を助けるためにできることを提示してくれている。突き放すわけでもなく止めるわけでもなく救う手段を考えてくれている。
「わかった。俺にできることをしてこいつらを助けてくる」
「アナタやアナタの奴隷に死なれては困るので無茶はしないでくだサイよ?まだスキルのことだって道の部分が多いんデスから」
「わかってるよ。無茶はせず必ず生きて帰ってくる」
「ならいいのデス」
俺の返事を聞くともう言うことはないと言わんばかりにウェルズは仕事に戻った。
俺もこれ以上ウェルズと話す必要もないので部屋を出るとタマキが部屋の前で待機していた。
「お話は終わったの?」
「ああ、終わったよ。行ってもいいってさ」
「よかった!じゃあ早くギルドに戻ろう?マオは絶対もう戻ってると思うよ!」
ギルドを飛び出して行くマオの姿を思い出してそうだろうなぁと俺も思った。
「そうだな。遅くなりすぎるとマオがすねちまうだろうしさっさと行くか!」
「うん!」
更新遅くなりました。
仕事が忙しくなってきましたよぉ……




