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36.この世界は弱者に優しくない

「さて、依頼の詳細な説明をさせていただきますね」


対面に座ったリフェルをまっすぐに見据える。

マオとタマキも真剣な表情でリフェルを見つめていた。


「とは言っても先ほどお話しした以上の情報はほとんどありません。西のダンジョンに向かう集団の中にいるのを目撃されました。目撃された集団の装備から予想するとおそらくは貴族の私兵と思われます」


「根拠はあるのか?」


「はい。冒険者ならば装備に統一感はありませんよね?その集団はどの人も鎧を着ていたそうです。しかし、この国がわざわざ兵を割いてダンジョン攻略するほど愚かな国ではありませんので私兵という予想です」


「なるほどな」


「ねぇ、シヘイってなに?」


タマキは私兵の意味がわからずちょっと話についてこれていないようだった。


「簡単にいうと私兵ってのは国の兵士じゃなくて特定の個人に雇われてその人のために動く兵士のことだ。国の兵士に騎士団とかがいるけどその人らは国のため、民のため、王のために戦う人たちなんだが私兵ってのは雇用主のためだけに戦う人たちだな」


「そうなんだ。けどその人たちはこの紙に書いている子たちを助けるためにいるわけじゃないんだよね?」


タマキの質問に正直に答えるべきか少し迷った。しかしこれから助けに向かうし、現地では俺が想像できる範囲ではあるが最悪の場合もあり得る。

変にぼかすよりは起こりうる可能性について話をしておいた方がいいだろう。


「そうだな。その人たちは多分その雇用主に言われてダンジョンの宝を取りに行くだけだろうな。ダンジョンに行くのに奴隷を連れて行くっていうのは攻略を楽にするためってのがほとんどだ」


この国は犯罪を犯すと犯罪奴隷になる場合もある。そういった奴隷はダンジョンの罠を確認するために攻略パーティの先頭を歩かされる場合が多い。

犯罪を犯しているのだからそういった境遇になるのも仕方ないと思うが現代日本人だった俺からすれば非人道的でとても許容できることではない。が、ここは日本ではないし国が制度として認めいている以上なにも問題はない。


しかし、今回連れて行かれたのはおそらく人攫いにあって奴隷になった子たちだろう。そんな子供を見捨てることまで許容できるほど俺は割り切ることはできていない。


「なんで奴隷を連れて行くと楽になるの?」


「それは…」


話しておいた方がいいと思いつつもやはりまだ幼いタマキに肉壁にするためとは言いにくい。

リフェルも同じように言いづらそうにしている。


「それはな、パーティの先頭とか一番後ろを歩かせて罠とか魔物の不意打ちを喰らわないようにだよ」


俺が迷ってる間にマオが口を開いていた。


「罠があっても奴隷に踏ませればパーティに被害はないし後ろから魔物の奇襲を受けても一番最初に狙われるのは奴隷だから対処しやすくなるんだ」


「その奴隷は…」


「もちろん最悪は死ぬ。ナタリアに聞かされたけどダンジョンには危険も多くてそうやって対処することも多いんだってさ」


マオの言葉を聞いたタマキは悲しそうに俯いた。

硬く握った拳はふるふると震えている。


「俺たちは運良くウェルズに買われて今はキョウスケの奴隷として奴隷とは思えないほどいい待遇で冒険者活動ができてるだろ。けどウェルズに買われなかったら、キョウスケに拾われなかったら俺たちがこの子らと同じ目にあう可能性もあったんだよ」


正直驚いた。マオがここまで知っていたのもそうだがタマキに対して諭すように話をするマオが珍しかった。

いつも反抗期の中学生男子みたいなことしかしてないのに。


「お前よく知ってるな」


「ナタリアとの稽古中にいろいろ聞かされるんだよ。冒険者としてやっていくなら覚えておいた方がいいってな」


なるほどな。もはやマオは俺の奴隷というよりかナタリアの弟子だな。


「まぁそうゆうことなんだよタマキ。理解はできていなかったけどなんとなくわかってたんだろうな。だからお前も助けたいと思ったんじゃないのか?」


「たぶん、そう。やっぱりわたしはこの子たちを助けたい」


「そうだな。だから今はリフェルの話をしっかり聞こう。そして準備をしっかりして助けに行くんだ」


「うん」


静かにうなずいたタマキだがその目はさっきよりも力強かった。


「脱線して悪かった。リフェル、続けてくれ」


「はい。おそらく向かったダンジョンは前線のより少し魔族領側にあるロジス森林にあるダンジョンでしょうね。前線が膠着状態とはいえやはり戦闘は激しいので山の中にあるダンジョンに向かうでしょう」


「今からだとダンジョンに入る前に追いつくのは無理だよな」


「おそらくは。ただ中規模以上での行軍だったみたいなのでそこまで早く移動できないと思われます」


「そうか。ならダンジョンに入った直後くらいに追いつければ御の字だな」


「そうですね。出発するなら早い方がいいと思います」


リフェルも俺と同じ見解だったようだ。

ならば今からウェルズのところで装備とアイテムを整えて可能であればナタリアに協力を依頼してすぐに向かうべきだろう。


「わかった。マオ、お前はナタリアを探してきてくれ。他の仕事があるって言ってたが協力してもらえるならぜひ頼みたい。ナタリアに会ったらギルドに戻ってこいよ」


「わかったぜ!絶対連れてくる!」


マオは返事をするなり勢いよくギルドを飛び出して行った。


「じゃあ俺たちはウェルズのところに行くぞ。タマキは戻ったらすぐ旅支度を整えてくれ。いつもの依頼に行くより念入りにな」


「わかった!」


「じゃあ俺たちは一旦準備しに行ってくる。リフェル、俺が戻る前にマオがここにきたら任せてもいいか?」


「わかりました。お任せください」


リフェルは快く受け入れてくれた。いつも世話になりっぱなしだからそのうちお礼をしないとなぁ…


「頼んだ。じゃあまた後で」


「すぐ戻ってくるね!」


俺とタマキも早足でギルドを後にした。

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