33.考え事は場所を選んでしましょう
「さぁ構えろキョウスケ!」
「おい…ほんとにやるのか…俺死ぬぞ」
冗談じゃなく俺より強いのはナタリアなのだ。俺なんかが相手になるわけもない。
しかも今のナタリアはテンションが振り切ってバーサク状態なのだ。木剣でも死ぬ気がする。
「大丈夫大丈夫!たぶん!」
「手加減するとかそういう発想はないのか!」
「無理だな!」
ニッコニコである。この戦闘狂め。こうなったら死なないようにひたすらに逃げ回ってやろうか。
「キョウスケ様ーかっこいいとこ期待しているよ!」
幼女のプレッシャーがやばい。けどそれでやる気が出る俺も現金だった。
「しかたねぇ!やってやらぁ!!」
やけくそで短剣を構えるとナタリアに向かって駆け出した。
「やる気だなキョウスケ!さぁこい!!」
ナタリアもすばやく槍を構えると迎撃体制を整えた。
槍は攻撃範囲が広いから短剣で槍を捌いてから肉薄する必要がある。
が、ナタリアの槍の腕は間違いなく俺の技術より上なのでそう簡単に懐に潜り込むなんてことはできないだろう。
「やってやるとは言ったが正面からやるとは言ってないしな」
俺は短剣を構えて突っ込んだが最初から短剣のみで突撃する気はなかった。
もう少しで槍の範囲というところで練り上げていた魔法を放つ。
「ファイヤボール」
「むっ」
ナタリアは危なげなくファイヤボールを払う。
もちろん俺の狙いはナタリアに槍を振らせること。いくら槍捌きが早くても槍先が自分より外側にいればやりようもあるとしての判断だ。
「連打連打ぁ!」
「ちょこざい!」
ほんと通じないなぁ!卑怯な手な気はしているがナタリアには関係ないとばかりに槍をぶん回してる。
ただ、槍を振り回させるという目的は達成している。そしてこのタイミングで一番槍が降りにくいであろう体付近に槍を引っ込めさせたいところだ。
「おら!」
すばやく弓に持ち替えて2、3射る。
「キョウスケェ!もうちょっと正々堂々とやれんのか!」
「やれる実力があればやっとるわ!」
正直今までの牽制の攻撃を軽くいなしている。これまでの依頼でのナタリアの動きよりもかなりキレが増している。
俺のスキルでここまで目に見えて変わるもんなんだなぁと感心していると少し手が緩んでしまった。
「緩んだな!今度はこちらからいくぞ」
「やっべ!」
ナタリアが一直線に向かってくる。
そこで少し違和感を覚える。
今までの俺なら自分より実力が上の相手は動きを追えないことがほとんどだった。同じ勇者の夜須や藤堂の動きも同レベルの時ですらついていくのがやっとだったのだ。
しかし、接近してきたナタリアの槍をうまいこと捌けている。俺自身が信じられないがなぜか鮮明に動きを見ることができる。
それどころか相手の動きを予測できるようになっている気がする。
「死ぬとか無理とか言う割になかなかやるじゃないか!」
「うるさい!集中切れたら死ぬことにはかわんねぇよ!」
売り言葉に買い言葉って感じで反応を返してはいるが脳の処理は打ち合うことと今の自分の状態の考察でいっぱいいっぱいだった。
俺はレベルも上がってないしスキルも増えてない。だからナタリアよりステータスで勝っているなんてありえない。
しかし、やりあえている。これは俺の隷属化支援のフィードバックによるものなんだろうか。
実はフィードバックされるのはスキルだけじゃなくて経験的なものも含まれるのか?
「敵を前にして上の空とはやはり余裕じゃないか」
「!?やっべ」
気づいたときにはすでに遅かった。
ナタリアに潜り込まれて短剣を弾き飛ばされその勢いで姿勢を崩される。
そのまま槍を突きつけられ立ち合い終了となった。
「勝負有りだな。途中まではよかったのになぁ。殺し合いで考え事なんてしてると本当に死ぬぞ」
そう言いながら手を差し出してきた。その手を取ると体を引き起こされる。
「まったくもってその通りだからなんも反論できないけどもともと無理やり引っ張ってきたのはナタリアだからな」
「それはそれ、これはこれだ!しかしキョウスケ、自分の実力を低く見積もりすぎなんじゃないか?私は割と全力に近い力でやっていたのにほとんど捌いていたじゃないか」
「それに関してはナタリアと一緒。俺のスキルのせいだと思う。奴隷契約してから格上とやることなんてなかったから今まで気づかなかったんだと思う」
「キョウスケ様途中までカッコよかったのに急にダメな感じになったねぇ」
タマキがこちらに近寄ってきたと思えば辛辣なことを言ってきた。幼女のストレートな感想は心にくる。
「おい、キョウスケしょげてないでスキルの効果なら教えてくれないか。私にも関係してる話だろう」
「キョウスケ様?別にカッコ悪いわけじゃなかったよ!かっこよかったよ!最後以外!」
タマキの最後の一言で完全に心を折られてしまった。
次こそはかっこいいとこ見せてやるからな……
ちなみにナタリアの抗議は全く聞こえてなかった。
しばらく投稿できなくて申し訳ありませんでしたあああ!
時間を見つけてなるべく投稿ペースを上げていきたい…




