27.受付嬢は無表情
スライムとキラーラビットの討伐依頼はマオが軽く怪我する程度で終了した。
初心者向けの依頼なので成功報酬も少ない。装備を整えたりアイテム買ったりで金もないし今後も装備のメンテやアイテムの補充をしなければならないのに手持ちが心元なさすぎるのでこの日から連日依頼を受けていった。
1日1件の依頼をこなしてマオとタマキの訓練も行って早くも1週間がすぎた。
受ける依頼が割の良いものでもないので手持ちの金額は大きく増えていないが素材を売ったりもしていたのでそれなりに安心できる額にはなってきていた。
ちなみに俺が金稼ぎと2人の育成を行っている間に夜須たちは俺のせいで引き返すことになったダンジョンを2日で攻略したらしい。
そのほかにも魔王軍の進軍を阻止しただとか俺が抜けてから1週間しか経っていないというのにすごく活躍していた。
そのおかげもあってか俺が足を引っ張っていたという認識がだんだん民衆の間でもささやかれるようになってきていた。
また、俺が奴隷使いの元勇者だということを神城がご丁寧に王族へ報告し夜須が広告塔になって話を広げていてくれたおかげで最近は街を歩くだけでも視線がいたたまれない。
最近はリフェルが気遣ってくれて俺の対応はすべて別室で行ってくれているが出入りはどうしても他の冒険者の目に触れる。
そのたびに冷たい視線だったりヤジだったりが飛んでくる。こんな環境でマオとタマキを連れて歩くわけにもいかないので2人は基本的に依頼に出る時以外は俺と別行動させている。
その間はナタリアに訓練をお願いしているので時間は無駄にしていないと思いたい。
今も依頼の達成報告と次の依頼を確認しにギルドに来ているところだった。
「はい、確かに依頼の完了を確認しました。お疲れ様です。」
「ありがとう、リフェル。わざわざ別室用意してもらって本当にごめんな」
「いえ、私は私のできることをしているだけですよ。世間で言われているような方ではないと知っていますしね」
そう言って依頼完了の処理を行なっている。
正直リフェルがなんでここまでしてくれるのか俺には理解できない。この人と関わったこととか多分ないと思うんだけどなぁ。
「なぁ、なんでこんなよくしてくれるんだ?」
「まぁわからなくて当たり前だと思いますよ。支援の勇者様と話したのは冒険者登録した時が初めてですから」
淡々と答えるリフェル。初対面の時こそ驚いた顔を見せたがそれ以降は基本無表情に近い顔しているため感情が読めない。
「ならなおさらだよ。なんでだ?」
「どうしても気になりますか?」
「いや、気にならないわけないだろう。けど言いたくないことだったら聞かない」
「お優しいですね」
処理が終わったのか書類から視線を上げて俺を見た。
「以前私の故郷を救っていただきましたので」
たしかに夜須たちと行動しているときに魔王軍から村とかを守ったことがあるけどそんなリフェルにここまでしてもらえる理由になるとも思えない。
結局わからずに頭を捻っているとリフェルは少しだけ微笑んだ。
「覚えていないと思っていましたよ。支援の勇者様は武道の勇者様とたくさんの人を助けていましたからね」
「藤堂と?」
「はい、魔物や魔族との戦闘で傷ついた人たちの治療に駆け回っていたと」
そう聞きましたとリフェルは言う。
確かに負傷者の救助は回復魔法が使えない俺と藤堂で行っていた。治療は聖女様の担当だったけどな。
夜須は村人なんて知ったことかと手伝ってすらくれなかったなぁ。
「あー、なるほどな。そんなん当たり前だろ。助かるのに見殺しにするほど鬼畜になった覚えはないからな」
「支援の勇者様にとって当たり前のことでも私たちからするとそうでないことはたくさんあるんですよ」
そんなわけで私はあなたに協力したいのですとリフェルは言った。
聞いてもやっぱり俺にはよくわらかなかったがありがたいしこれ以上は聞くことはやめた。
「ありがとうな。これからもよろしく頼むよ」
「はい」
「それと俺を支援の勇者と呼ぶのはやめてくれよ。もう勇者じゃなくてただの冒険者なんだから」
「ではキョウスケさんと呼ばせていただきますね」
「頼むよ。そんじゃ次に受けるちょうど良さそうな依頼ってあるか?」
「うーん…今キョウスケさんのパーティにちょうどよさそうなのはあんまりないですね。ちょっと大変かマオくんが飽きそうなものしかないですね」
そうか。マオが飽きるってことは採取系かな。あいつ討伐じゃないとやる気出さないんだよなぁ。
タマキはピクニック気分でいけるから楽しいと言っていた。かわいい。
「じゃあ明日は休みにするかなぁ」
「それもいいのではないですか。慣れないメンバーを連れている状態で毎日依頼をこなされているのですから疲れも溜まっていると思いますよ」
リフェルも賛同してくれたし明日は休みにしよう。マオが文句言ってきたらナタリアにしごいてもらえばいいか。
「んじゃそうしようかな。リフェル、ちょっと話が変わるんだがスキルの獲得条件とかって知ってる?」
リフェルはギルドの受付嬢だからその辺は詳しそうだと思ったので聞いてみた。
初めて討伐に出たときに起きた現象を俺はまだ誰にも話していなかった。奴隷2人も俺の配下にいるためウェルズが確認するには鑑定スキルを使う必要があるが今日まで特に追求がないので使っていないのだろう。
誰にも話さなかったのは俺の考えをまとめたかったのもあるが知られるとめんどうなことになりそうだと思ったのもある。
しかし、1週間経っても考えがまとまらなかったので俺の知識が間違っている可能性を疑い始めていたのだ。
なので今次の依頼の話もないからちょうどいいとばかりにリフェルに聞いてみたのである。
「知ってますよ」
「ちょっと教えてくれないか。俺の知識が間違っている気がしてちょっと気になってるんだ」
「わかりました。スキルはーーー」
説明を受けてわかったのは俺の知識に間違いはなかったということだった。
やはりスキルを獲得するには該当する武器や魔法を使用しないと獲得できない。だから初めての依頼の時にレベルアップで起きた現象はおかしいということだ。
考えられるのはやはりユニークスキル。どんな効果かいまだに理解していないので謎の現象はすべてユニークスキルのせいにしてしまってる気がする。
俺の頭が悪いからなのか……
「ちなみに鑑定スキルはレベルを上げるとスキルの効果なども確認できるようになるそうですよ。鑑定スキル持ちはあまりいないので真意のほどはわかりませんが」
「マジでか!?」
リフェルの言葉につい大きい声を出してしまった。リフェルが驚きに目を見開いている。
表情が変わるのは珍しいな。
「らしいですよ。私も実際に目にしたことがあるわけではありませんし、鑑定スキルで見れる情報は使用者本人しかわからないので先ほども言った通り本当かはわからないですが」
「ちなみにどこまで鑑定レベルあげればいいとかわかるか?」
「さぁ…私も話でしか聞いたことがありませんので」
「そうか…わかった」
今後の目標として鑑定レベルを上げることが追加された。
ウェルズに話してスキル効果を推測してもいいが正確な情報が得られる方法があるならそれを手に入れておくにこしたことはない。
情報は宝なのだ。
「ありがとう。助かったよリフェル」
「いえ、お力になれたなら嬉しいですよ」
「はは、いつも助けられてるよ。それじゃ俺はそろそろ戻るよ」
「はい、お疲れ様でした」
帰って鑑定スキルのレベルを上げる方法を考えよう。
俺は足早に冒険者ギルドを後にした。入るときに気になっていた視線は考え事をしていたおかげで出る時はまったく気にならなかった。




