1.荷物の整理と武道の勇者
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コンコン
勇者たちから別れた後、拠点にしていた宿で荷物をまとめていたら扉がノックされた。
先ほどのショックから立ち直れてるわけもなく適当に返事をして入室を促すと武道の勇者と呼ばれている藤堂菜々華が入ってきた。
「ごめん、お邪魔するね」
「…あぁ」
さっきの今でなんで来るんだ。
こっちは気持ちの整理もついていないと言うのに。
「さっきは酷い言い方をしてごめん。けどみんな吾妻くんのことを心配してのことだから…」
「そういった気休めは必要ないよ藤堂。俺なんかがいたら邪魔になるのは俺も痛いほど理解してる」
そう言うと菜々華は困ったように目線を下に向けた。
「荷物の整理、もう少しかかりそうなんだ。終わったらすぐ出ていくから」
「違うの。急かしにきたわけじゃないの。吾妻くんがこれからどうするのかと思って…」
「どうするも…藤堂に言われた通り俺に出来ることを探してどうにかするよ。と言っても俺に出来ることなんてそんなにないと思うけど」
「そんなことない!吾妻くんはたしかに戦うのは向いてなかったかもしれないけどその他のことなら誰よりも…」
「ありがとう。けどこの世界だと戦闘ができないと生きていけないような世界なんだよ。特に俺たちはそれを求められてここに呼ばれたんだから」
「それは…そうだけど…」
菜々華は言葉を探すように視線を彷徨わせた。
そう、俺吾妻恭介を含む勇者4人は数ヶ月前にこの世界に召喚された。
俺が向こうの世界で現実逃避のために見ていたアニメのような異世界に。
展開もお約束のように魔王を倒して欲しいというもの。
つまりは戦闘が出来なければただの役立たずなのだ。
「飢え死しない程度に稼いで細々とやっていくよ。俺はもう藤堂たちと一緒にいられないけど応援してるから」
「っ…ごめんね…」
顔全体で申し訳なさを表現して俯く。
そんなやりとりをしてる間に俺の荷物の整理は終わっていた。
元々荷物も多くない。持っていくものを選別していただけだった。
「準備もできたしもう行くよ。これまで使わせて貰ってた装備とかアイテムは置いていくから換金するなりしてこれからの旅に役立てて。それじゃ…」
そう言って菜々華のわきを抜けて部屋を出ようとすると腕を掴まれた。
「まって!ほんとに装備もアイテム全部置いておくの?!」
「あぁ、夜須にもそう言われたから」
去り際に聖剣の勇者である夜須一尋に投げ捨てるようにそう言われていた。
実際俺には過ぎた代物であるのも間違いじゃない。
なにせ戦えないのだから。
「けど当面の資金とかは…」
「俺の手持ちで安宿は取れるだろうしギルドに登録して採取依頼とかしてなんとかするよ」
「…じゃあこれ持っていって」
そう言って菜々華は小さな袋を俺に差し出した。
「少ししかないけどないよりはマシだと思うから。あと王様にもどうにか助けてもらうように話をしてみる」
「いや、それは受け取れないよ。藤堂たちはこれからもっと大変になるのに。それに王国も使えないやつを支援できるほど余裕があるわけじゃないだろ」
「そうかもしれないけど…でもこれだけは受け取って。これがあれば前線のここから遠いところにいけると思うし…」
たしかに俺は他に街に移動することも難しいけど…
切り詰めれば馬車に乗って移動できるくらいの金はなくはない。
「吾妻くんに僕からできることなんてこんなことしかないから。お願い」
「…わかった。すまない」
「ううん。こっちこそこんなことしかできなくてごめん。けど吾妻くんが困ったことがあったらなんでも言って。僕にできることならなんだってやるから!」
「はは。さすがに俺個人の悩みで勇者に頼ることはできないよ。けどありがとうな。それじゃ俺はもう行くよ」
「うん…気をつけてね」
「藤堂も」
菜々華から袋を受け取り今度こそ俺は部屋を出た。




